「ニュース女子」がBPOで放送倫理違反になったが、放送内容は本当に名誉棄損なのか?

「ニュース女子」がBPOで放送倫理違反になったが、放送内容は本当に名誉棄損なのか?

「ニュース女子」について

東京MXテレビで放送されている「ニュース女子」をご存知でしょうか。

なかなかこうした切り口で放送するニュース番組は民放で見かけないので、毎週観ていました。著名な研究者やコメンテータが5~6名座し、対局にはタレント・一般人から3~4名の女子が座し、様々なニュースについて研究者やコメンテータの「掘り下げた説明」を女子に聴かせるという形式のニュースバラエティ番組です。

司会は東京新聞の長谷川幸洋、アシスタントが西川史子、主な出演者は週替わりですが、岸博幸(元経済産業省官僚)、武田邦彦(中部大学教授)、須田慎一郎(経済ジャーナリスト)、上念司(経済評論家)、 井上和彦(軍事ジャーナリスト)、末延吉正(元テレビ朝日政治部部長)、藤井厳喜(国際問題アナリスト)といったそうそうたる知識人です。女性陣は脊山麻理子、吉木りさ、杉原杏璃、八田亜矢子、重盛さと美、町田彩夏といったタレントの面々が出演していました。

政治、経済、歴史問題など、民放ではなかなか取り扱わないようなニュースの「裏側」を掘り下げて説明するスタイルで、なかなか鋭い切り口で見ごたえがありました。テーマからして、男性コメンテータがしゃべるだけの番組にしてしまうと、朝まで生テレビのようなギスギスした雰囲気になりそうですが、女性陣が

「えー?よくわからないー!」

「おじさんたちだけで盛り上がってませんー?」

みたいに混ぜっ返してくれるので、おじさんたち(笑)もデレっとしながらもわかりやすく説明をするので、視聴者の頭にも自然と入りやすく、なかなか上手に作っている番組だなと思っていました。面白いのは、番組に出演して間もないころは「わからなーい」という雰囲気だった女性陣(特に重盛さと美)が、出演を重ねるごとに成長がみられて、自分の言葉で思ったことを発言できるようになっていったことです。タレントとしてもかなりの能力開発になったのではないでしょうか。

 

ニュース女子のBPO倫理違反問題について

制作は化粧品大手「DHCグループ」傘下の「DHCテレビジョン」が担っています。番組のスポンサーが広告会社を兼ねることで、自主独立性の高い番組を制作できていたようです。こうした制作スタイルを完パケ(完全パッケージ)と呼びます。「DHCテレビジョン」が制作した番組をMXテレビに納品し放送されていましたが、今回BPO(放送倫理・番組向上機構)からとある放送内容について放送倫理違反として指摘を受け、2018年4月からMXテレビでは打ち切りになってしまいました。

問題の放送内容ですが、「沖縄緊急調査!マスコミが報道しない真実 沖縄・高江のヘリパット問題はどうなった?過激な反対派の実情を井上和彦が現地取材!」と題して、沖縄の現地取材を通して米軍ヘリパッドへの反対運動に関する意見を述べるというものです。

米軍ヘリパッド建設に反対する人たちを「テロリスト」と表現したり、「日当をもらっている」「組織に雇用されている」などと伝えました。また、日当については人権団体「のりこえねっと」が払っていると指摘したことで、「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉氏からBPOに申立書が提出されていました。今回の倫理違反の判定はこの申立書が発端となっています。

 

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この放送も観ていましたが、私の理解では、「嘘はついてないのでは?」というものです。「日当をもらっている」「組織に雇用されている」というのは、東京などで雇われ、お金をもらって沖縄で活動をしているということを言っていたと思います。細かい内容はこの記事では長くなるので割愛しますが、放送を観ていてさほど違和感は感じませんでした。そうした噂は絶えませんし、実際に金銭で雇ったとみられる募集チラシの現物がネットで出回っています。そのあたりは調べることができるので、気になった方は調べてみてはどうでしょうか。

取材で見た内容と映像、チラシの存在などを元に編集していたので、完全にでっちあげた内容になってはいません。問題があるとすれば、裏どりをしていないことをあたかも本当のこととして伝えたことになるかもしれません。

この件に関して見ていてちょっと不安だったのは、裏どりをしていないのに主観的に決めつけてしまっている点と、「のりこえねっと」という団体を敵に回してしまったことだろうと思います。普段から他局では許されない突っ込んだ説明が許されてきたので、ノリで主観に走り過ぎ、その結果、非常に激しい主張・活動を展開する団体から敵視されてしまうことになりました。

 

最期に

もう少し東京MXテレビサイドでチェックができていたらと思いますが、これが「完パケ」の問題点でもあるのかもしれませんね。実際、その後の放送ではキワドイ内容には以前に増してボカシが入るようになりましたので、チェック体制を強化したのかもしれません。

今後、報道する側は、きちんと客観的な証拠を提示することが求められます。とはいえBPOに訴えた団体のように「弱者に見せかけた権力側」になって番組が潰されるようなことが今後も頻発すれば、ますますテレビは面白くなくなり、テレビ離れが進んでいくような気がします。報じられた側が名誉棄損だと感じるのも自由だとすれば、言論・表現・報道の自由も守られなければならない大切な権利だということを改めて考えさせられます。

報道もテレビもネットの情報も、みる側が真偽をきちんと見極めること=FACT CHECKが必要です。情報というのは権力側に加担してしまったり、弱者だけの味方をしてしまったり、強く発言する側が正義に見えてしまったりするものなので、大事なことは個々人がFACT CHECKをする意識をもって情報を眺めることです。

なおニュース女子は東京MXテレビでは放送打ち切りですが、制作は継続し今後はネットなどの媒体で放送していくということです。私はこの番組は今回のことも含めて考えさせられることの多い貴重な番組だと思っていますので、これからも観たいと思います。

(文責:K)

 

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