過疎化の鶴岡市に日本で二番目の研究学園都市が形成。Spiber代表の関山和秀はクモの糸とバイオテクノロジーで産まれた「QMONOS」で世界の繊維産業に革命を。

過疎化の鶴岡市に日本で二番目の研究学園都市が形成。Spiber代表の関山和秀はクモの糸とバイオテクノロジーで産まれた「QMONOS」で世界の繊維産業に革命を。

クモの糸は丈夫

 

 

クモの糸が丈夫だってご存知でしたでしょうか?

先日、富士の樹海を歩いてきたんですが、自然歩道として整備されていると思いきや、枝は飛び出している、歩道的なものはほとんどみえない、虫は多いで大変でした。

以下の写真は歩きながら撮った1枚です。

 

 

最もきつかったのはクモの糸です。

クモの巣というより、枝から枝に渡しているクモの糸です。

10メートルごとに1本は身体のどこかに引っ掛かるほどに多く感じられました。

その不快感といったら説明が難しいんですが、お分かりになりますでしょうか?

 

 

顔に「ピン」と引っ掛かると、ずーっと貼りついてついてくるわけです。

つまり、顔で「ブチッ」と切れるのではなく、引っ張られて両サイドが耐えきれなくなり千切れて、顔に貼りついているわけです。

マラソンのゴールにある紙テープを想像してみてください。

引っ張ったら、力を加えた部分そのものが切れていますよね。

クモの糸というのは、力を加えた部分そのものが切れずに、引っ張った際のテンションに負けるように両サイドが千切れているわけです。

つまり、糸そのものの強靭さが半端無いということです。

太陽に透かすとはじめてキラキラとみえるほどの細い細い糸。

そんな細い糸が、とてつもなく丈夫だということです。

 

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鋼鉄の約5倍

 

 

クモの糸の強度はこのように伝えられています。

 

計算すると、強さは鋼鉄の約5倍で、直径1センチの太さの糸でクモの巣を作れば、ジャンボジェット機をまるでトンボやチョウチョのように捕まえられるほどです。また、ナイロンなみに伸び縮みし、重さは同じ強さを持つ鋼鉄と比べて6分の1、300度の熱にも耐えられるなど、まさに夢の糸です。

出典:キッズ・ウェブ・ジャパン – Web Japan

 

その太さに対する強度を計算すると、鋼鉄の5倍ということです。

クモと同じサイズの虫がよくクモの巣に引っ掛かっているのを見かけますが、一度捕まるともう逃げることができません。

絡めとられ千切れることができません。

 

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クモはそんな虫を捕食する際に、糸を吐き出してさらにからめとって身動きを取れなくしてしまいます。

以下は先日近所で偶然にもみかけた、クモが虫を絡めとる瞬間です。

なかなか衝撃的な瞬間で、すぐさま撮影してしまいました。

 

 

足で器用にくるくると回転させながら、糸で簀巻き状態にしていっています。

人間のサイズにしたら「鋼鉄の5倍の強度をもったワイヤーで全身をぐるぐる巻きにされた」という状態です。

これではもう逃げようがありません。

しかもナイロン並みに伸縮性もあるときたら、ワイヤーというよりも暴れても暴れても破れないゴムの袋に詰め込まれたような感覚かもしれませんね。

前項でクモの糸が顔に引っ掛かって、その部分で切れずに両サイドがテンションに負けて千切れるというのも、この伸縮性も影響していることは間違いないでしょう。

こうした体験を経て、だんだんクモの糸の強さの秘密が分かってきました。

 

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世界初、クモの糸を人工的に製造し量産化

 

出典:DODAインタビュー

 

こんな強度と伸縮性をもったクモの糸を人工的に作り出すことができたら。

実はそんな研究は世界中で行われていました。

「人工合成クモ糸素材」というそうですが、かねてからNASAや米軍でも製品化をこころみて断念しています。

そんな「人工合成クモ糸素材」の開発に成功したベンチャー企業が日本のSpiber株式会社です。

「人工合成クモ糸素材」は繊維素材にすることで鋼鉄の340倍という強靭さをもち、かつナイロンのような伸縮性をもった「夢の素材」と期待されています。

上の写真が「QMONOS」という製品になります。

 

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この素材がいかに革命的な素材になりうるかと言うと、もちろんその丈夫さ、伸縮性もそうですが、これまで強靭な繊維製品といえば「石油」をもとに作られたナイロンなどしか無かったため、石油化学製品にとって代わる可能性があるということです。

石油は供給量に限界がありますが、「QMONOS」は石油化学製品ではありません。

また耐熱性も300度まであるとくれば、いずれは衣服の素材としてナイロンにとって代わっていくことは間違いないのではないでしょうか。

 

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QMONOSの材料は?

 

出典:Spiber株式会社

 

クモの糸は複数種類のアミノ酸で構成されるタンパク質です。

Spiber株式会社はそのクモの巣の成分を分析し、「人口タンパク質を微生物に作らせる」という方法で製造に成功しました。

しかしどうしても壁となったのは製造コストです。

 

微生物による遺伝子組換えタンパク質の製造コストは1キログラムあたり100ドルを下回ることは困難であるという「常識」がありました。

出典:Spiber株式会社

 

ナイロン樹脂にも様々な種類と価格がありますが、高くてもキロあたり100円(1ドル以下)は切っていると思います。

ところが人口タンパク質の製造コストはキロあたり10000円以上。

それを繊維として生成すればさらにコストアップするでしょう。

 

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その点はSpiber社でも障壁として認識をしています。

 

さらに百億ドルを超えるような巨大市場の開拓を目指すのであれば、1キログラムあたり10ドル以下を目指す必要があります。

出典:Spiber株式会社

 

しかしながら技術革新を継続することで、その障壁も乗り越えつつあるようです。

 

圧倒的なコストダウンを実現するためには、製造プロセスの最上流から最下流まで含めた全体最適を考えることが不可欠です。多くの技術領域にまたがる課題に対して、絶え間ない努力を惜しむことなく、地道に、徹底的に考え抜き、合理化と高度化を進めています。そして発酵生産実験を本格化した2008年以来の技術革新の積み重ねにより、大規模普及を目指せるコストでの生産が実現可能になりつつあります。

出典:Spiber株式会社

 

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製品化実現に向けて

 

出典:事業構想

 

2015年には、ゴールドウインと事業提携契約の締結し、30億円の出資を受け入れています。

ゴールドウィンといえば、あの「THE NORTH FACE」ブランドを抱えている繊維業界の大企業です。

その「THE NORTH FACE」とコラボした試作品がこちらの “ムーンパーカ” です。

 

出典:DODAインタビュー

 

強く、柔らかく、耐熱性に優れた「QMONOS」で編みこまれたジャケットです。

寒さや怪我が命取りになる雪山、山岳での活動にとって、いずれは欠かせないアイテムになるポテンシャルを感じさせます。

まだコストが高いので、レスキュー隊や警察、自衛隊といったところから導入していったら良いのかもしれませんね。

いつかは近所のカジュアルショップにも並ぶ日を待ちたいと思います。

 

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Spiber株式会社とは?

 

出典:Spiber株式会社

 

慶応大学卒の関山和秀代表が立ち上げたベンチャー企業ですが、このベンチャーを立ち上げるきっかけが面白い。

大元を辿れば、日本の過疎化から始まっています。

1990年代から山形県鶴岡市は深刻な過疎化が進んでいました。

このままでは街も活気が失われ続け、やがて人がいなくなる。

そこで、2001年に「慶応大学先端生命科学研究所」(IAB)を鶴岡市に誘致しました。

研究所から世界的な技術開発が行われれば、そこに開発者を中心として人が集まり、大きな街に変わっていくことを期待したわけです。

そのため、自治体としても巨額の投資をIABに行っています。

 

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そんなIABは、バイオテクノロジーを研究する慶応大学の冨田勝教授が所長をされている研究所です。

そこの冨田研究室にいたのがSpiber株式会社の現代表の関山和秀さん。

関山さんがクモの糸の繊維の着想は、大学4年の飲み会の場です。

 

大学4年のとき、研究室の飲み会でたまたまクモの話になり「とても強靭で夢の繊維と言われるクモの糸を活用すれば、環境によく抜群の性能を持った素材を作れるのではないか、もし実用化できれば人類にとって画期的で、もの凄いインパクトだ」と、その場にいたメンバーで大いに盛り上がりました。スパイダー(Spider)とファイバー(Fiber)をかけて「スパイバー(Spiber)」という社名も、この場で誕生したものです。Spiberの命名者でもあり、一緒に盛り上がったふたつ後輩の菅原と冨田さんに相談へ行くと、快く受け入れてくれ、実用化へ向けた研究がスタートしました。

出典:Amateras

 

関山さんは鶴岡市のIABに所属してこの研究を続け、その研究成果をもとに誕生したベンチャー企業がSpiber株式会社でした。

でも、既に飲み会の場で会社名が決まっていたというところが面白いですね。

「飲み会で盛り上がった勢いがそのまま世界を変える」というのも、技術革新の第一歩としては面白いエピソードです。

 

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いまIABからSpiber株式会社といったベンチャーが産まれ、他の企業の誘致も始まっています。

IABの隣にはホテルや子育て施設も併設され、都市部からの移住者が増えてくれば、IABを中心とした「研究都市」が形成されていくのかもしれません。

自治体と民間の大学がタッグを組んで筑波研究学園都市と同じような街を作ろうという試みですね。

山形の学生がいったん東京などの大学で学び、またここで研究者として戻ってきて永住する。

そこに多くの家族が出来て、活気が生まれる。

まさに鶴岡市の理想とした姿がこれから実現しようとしています。

 

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QMONOSを産んだIABの研究とは?

 

出典:IAB

 

IABはこうした新素材の研究の他にも、様々なバイオテクノロジーの研究を進めています。

例えば、わずかな唾液の成分を分析するだけで4種類のがんのリスクが発見できたり、血液でうつ病の補助診断ができるような医療技術の研究開発を行っています。

 

これが確立できれば、大腸がん、乳がん、肺がん、そして発見が難しいとされているすい臓がんまでも、早期発見ができるという画期的な技術です。

 

このスクリーニング検査は現在2~3万円でできるようになっているそうなので、いずれ40歳以上のサラリーマンが健康診断で全員検査するみたいな時代がやってくるのかもしれませんね。

 

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また「地球最強の生物」と言われるクマムシのメカニズムを解析して、ワクチンなどの乾燥保存技術を生み出す研究も行っています。

なおクマムシはマイナス200度の世界や、カラカラに乾燥した状態30年生きられることから「地球最強」と言われています。

 

出典:カラパイア

 

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まとめ

 

出典:Spiber株式会社

 

Spiber株式会社には、いまや世界中からその画期的な技術開発に参加したいと研究者が集まっています。

将来の20兆円市場を見据えた、製品の試作、低コスト化を進めているところです。

そのためには、まずは高コストでもその製品性能を高く買ってくれるメーカーとのコラボを積極的に行っていくことが大事でしょう。

上の写真は、LexusのシートにQMONOSが採用された事例です。

 

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コンセプトシートのようですが、シート背面の裏側に装着させることで高い衝撃吸収性能を発揮するとしています。

丈夫なだけではなく、伸縮性にも優れたQMONOSだからこそシート背面というラグジュアリーに採用が可能になるわけですね。

Lexusの新車はグレードにもよりますが350万~1600万くらいなので、乗り心地なども向上してくればQMONOSの製造コストを吸収できそうですね。

全く新しいQMONOSという素材にこれからも期待したいと思います。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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