石橋和歩被告の判決に裁判員の葛藤と決断が。法を捻じ曲げず危険運転致死傷罪を適用させるに至った苦労を労いたい。

石橋和歩被告の判決に裁判員の葛藤と決断が。法を捻じ曲げず危険運転致死傷罪を適用させるに至った苦労を労いたい。

石橋和歩被告に懲役18年の判決

 


image:メ~テレ

 

2017年6月に起こった東名高速での「あおり運転」からの事故について、2018年12月14日、懲役18年の判決が下りました。

初公判のころ、BuzFixでは最高刑ではなく無罪となる可能性もあることについて「法の下の平等」の観点から記事にしました。

以下がその記事となりますので、関心をお持ちでしたら併せてお読みください。

 

石橋和歩は再犯する。最高刑ではなく無罪となる理由とは?危険運転致死傷罪や監禁致死傷罪では問えないかもしれない。

 

被害者の人生を奪った事件であるとともに、石橋被告の権利も考慮されたこの裁判で、法を捻じ曲げることなく懲役18年の判決に至ったか、裁判員の葛藤について書いていきます。

 

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前例が無い罪をどう刑罰に当てはめるのか

 

image:グッド!モーニングより

 

石橋被告はあおり運転し萩山夫妻の自動車を停車させ、結果的に後方から来たトラックの追突事故を引き起こしました。

しかし石橋被告は事故死した萩山夫妻の死に直接起因していないことから、検察は過去に判例の無い事案として苦慮。

最高刑で懲役20年の「危険運転致死傷罪」は適用されない可能性があるとして、「監禁致死傷罪」も追加請求するという異例の対応を行いました。

 

この判断にもっとも苦しんだのは裁判員でした。

以下の記事にその心境が語られていました。

 

東名あおり運転事故で、石橋和歩被告に懲役18年の判決が下された今回の裁判員裁判で、裁判員を務めた6人のうちの女性1人が14日、記者会見し、「(公判期間中)責任を感じ、毎日葛藤していた」と心情を吐露した。

 会見で相模原市の女性会社員(45)はこれまでの公判について「被害者側の気持ちになることが多く、公平に判断するという点で悩んだ」と話した。

 公判では、危険運転致死傷罪の適用が最大の争点。女性は「前例のない事件。基にする資料がなかったが、みんなで話す中で冷静に判断できるようになった」と述べた。量刑は類似事件の過去の判例などを踏まえた上で「色んな意見が出たが、最終的にみんなで納得した」とし、裁判員として参加したことについては「(あおり運転は)いち市民として日常起こり得ること。関われてよかった」と述べた。

出典:産経新聞

 

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石橋被告に罪があることは間違いが無く何らかの罰を与えなければいけないのでは、ということは感覚的に誰にでも分かっていることでした。

しかし「危険運転致死傷罪」も「監禁致死傷罪」もどちらの適用も判例がありません。

つまり現行法で裁けず無罪なのではないのか?という意見も当初はあったのではないでしょうか。

 

しかし、残された子供たちの証言や遺族の言葉を法廷で聴くにつれ、ある変化があったのかもしれません。

これは感情論で揺り動かされるということとぎりぎりのラインを引く葛藤でもあります。

感情だけで法を捻じ曲げることはあってはならないからです。

もちろんこの事案のために新たに法を作って当てはめるということなど言語道断です。

(これを法の不遡及といいます)

大事な点は、石橋被告の罪をどのように現行の刑罰に当てはめるのかということでした。

恐らく裁判員はこの点において、心情ではなく、徐々に判断を変え、まとめていったということだろうと思います。

 

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結果として「危険運転致死傷罪」が認められることになり、懲役18年というほぼ最高刑と言っても良い刑罰を与えることになりました。

その判断の根拠は以下のように説明されています。

 

判決は、被告が高速上に自分の車を止めた行為が危険運転致死傷罪の「重大な交通の危険を生じさせる速度での運転」に当たるとした検察側の主張は退ける一方、4回にわたり進路を妨害したあおり運転と、夫婦の車の停車などは「密接に関連している」として追突事故との因果関係を認め、同罪は成立すると判断した。

出典:時事通信

 

つまり検察側がもっとも懸念していた「速度超過による危険運転」ではやはり退けられましたが、4回の進路妨害(あおり運転)と萩山夫妻の自動車を高速道路上で停車させた行為の因果関係の強さから、「危険運転致死傷罪」を適用したということです。

ここで大事な点は、検察が提示した「速度超過による危険運転」に強引に適用させ有罪としていないことです。

事故発生時、石橋被告の自動車は停車しており時速0キロ。

その速度が事故と因果関係があるというのはあまりに論理が飛躍していました。

しかし、裁判員はそのことを承知したうえ、捻じ曲げるようなことをせずに有罪とする論理立てを行ったということでしょう。

 

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今回の事案は単純に一段、二段論法で罰を適用できませんので、以下のような三段論法に当てはめると判決が少しだけ分かりやすくなります。

 

三段論法

  1. A=B
  2. B=C
  3. A=C

 

適用

  1. 【あおり運転】は【危険運転行為】
  2. 【危険運転行為】が高速道路上で停車させ【致死事故を誘発】
  3. 【あおり運転】が【致死事故を誘発】

 

判決で述べられた因果関係とはこの三段論法でいう2番に当たります。

三段論法の2番に入るものはそれなりの納得性が求められますが、それは石橋被告の行為の悪質性が明らかという点で得られたものでしょう。

 

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まとめ

 

この事件が感情で法を捻じ曲げるようなことにならなかったことは、日本はしっかりとした法治国家だと改めて再認識できました。

もうひとつ見落としがちなことは追突したトラック運転手が不起訴となっている点です。

高速道路上での停止は、ハザード、三角板、発煙筒といった「停車した自動車の義務」が多く課せられており、萩山夫妻がいずれも行っていなかったことからやむを得ず追突したという判断が下されています。

(萩山夫妻からそれを行う余裕を奪ったのも致死事故を誘発した原因とみられるわけです)

 

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これは既に判例があるため2018年1月の時点で不起訴が決まっていました。

世論は感情的になり「態度も人相も悪い石橋被告が悪い、トラック運転手は巻き込まれただけだ」というように少し危険な方向へ流されていた印象がありましたが、全てが法に収まるかたちで収束できたことは裁判員の多大な苦労のたまものですね。

本当にご苦労様でした。

そして今回の事案をもとに、あおり運転に関する明確な罰則を早急に取り決めていただきたいものです。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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