コネクテッドカーの登場
出典:WBS
トヨタ自動車の豊田社長が新車発表会で自らプレゼンを行いました。
なお、豊田社長自らでプレゼンを行うことは稀です。
走る、曲がる、止まるという性能に加え “つながる” という新たな性能がこれからの車には求められます。
そう胸をはり発表したのは、新しい「カローラスポーツ」「クラウン」です。
この2車種、最大の特徴は通信機能を備えていることです。
いわゆる「コネクテッドカー」と言われるカテゴリーです。
「コネクテッドカー」とは、常時インターネットで外部と繋がり、車の状態や走行情報を送信したり、スマートフォンを使って疑似的に自動車と対話をできる機能などを搭載した自動車です。
トヨタ自動車としては初めてのコネクテッドカーになります。
この2車種には車載通信機「DCM」を標準搭載。
以下のような機能が実装される予定です。
- eケア走行アドバイス
運転席の警告灯が点灯した際に車両から発信される情報をもとにコールセンターに繋がり会話できる機能 - eケアヘルスチェックレポート
エンジンオイル量、電子キーのバッテリ、警告灯の点灯状態についてスマートフォンから確認できる機能 - ヘルプネット
事故でエアバッグが作動すると自動通報、救急隊に現場に向かってもらうサービス - ドライブ診断
運転傾向をもとに安全運転、エコドライブについてクルマが採点する機能 - マイカーSecurity
ドアやトランクなどの開閉状況やハザードランプの点灯・消灯、遠隔でのドアロックなどをスマートフォンから操作できる機能 - T-Connectに加入するとLINEでマイカーとやり取りができる
またクラウンは「ITS Connect」も装備します。
「ITS Connect」はいくつかの機能を持っていますが、特に車車間通信が面白いですね。
車車間通信は、対向車などが対応する自動車の場合に自動車間で行う通信で、互いの位置関係を把握し衝突を回避したり、影に隠れた歩行者との事故を未然に防ぐことが可能です。
760MHzIというTS専用周波数を使うため混線なども起こりません。
この辺りの機能はさすがに未来の自動車といった印象を持ちます。
ゆくゆくは自動運転車に活用されていく、中間技術なんだろうと思います。
豊田社長は社長になる以前は、こうした先端カーの開発に携わる部門にいたそうで、まさに「社長肝いり」のプロジェクトということになります。
自らプレゼンをしたことにも、その意気込みが感じられますね。
価格とその想いはまだ空回りするか?
出典:cnet
「カローラスポーツ」は2138400円から。
「クラウン」は4606200円から。
こうした通信機能を3年間無料で提供し、4年目以降は使用料12960円~を徴収していく仕組みにしたいとのことです。
今後発売する全ての新型車をコネクテッドカーにしていく予定だそうですが…
え、全部の車に通信機能が入るの?
LINEと繋がるって、、、要らないかも。。
購入費も維持費もがっつり上がるんでしょ?
それ追加するなら、購入費を安くしてくれたほうが嬉しいんだけど…
そう思うひとも多いのではないでしょうか?
トヨタ自動車では、初めてのコネクテッドカーに「カローラスポーツ」「クラウン」を選んだ理由として、2車種の利用者の年齢層が高齢化していることを挙げます。
2車種の販売台数は年々低迷しており、高齢者ばかりが乗っており若者に不人気となっている現状があるためです。
それぞれの販売台数は以下のようになっています。
まあ、これでも全メーカの自動車販売台数で比べると売れてる方なんですが。
出典:WBS
そこで、この2車種に通信機能を搭載して、スマートフォンなどで繋がることに長けた若者に乗ってもらいたいという想いがあるようです。
つまり、高齢者ばかりだと先細りなので、若い世代のオーナーを開拓したいというわけです。
僕はその説明を聴いて、ちょっと首を傾げてしまいました。
若者はスマートフォンで繋がることが好きだから、車も通信機能を備えたらウケるだろう
極端に言えば、そんなふうに聴こえました。
もしマーケティングの肝がそれだったら、ちょっと甘いんじゃないかなと思います。
若者の自動車離れの方が問題としてもパイとしても遥かに大きいわけで、まずその問題を解決すべきだと思います。
若者が自動車から離れていく原因を並べてみました。
- 自動車を購入・維持するお金が無い
- 自動車は欲しいが中古車で十分
- カッコよさ、スピードより利便性(広さ、ラゲージの大きさ)
- マイカーが無くても電車で十分
- 自動車で遠くへ行くよりも、普段は自宅や近郊で過ごせればいい
- 使う時はレンタカーやカーシェアリングもある
こうした経済的事情と、マインドの変化が若者の自動車離れの根底にあります。
20年前ならまだしも、マインドが変わっている若者(20代)に乗って欲しいという割に、車のチョイスが「クラウン」というのはどうなんだろうと思います。
まず価格が高すぎるし、若者に使ってもらうための肝心の通信機能も4年目以降は13000円が徴収されるという仕組み。
3年間使って慣れたころにお金を取ろうというビジネスが透けて見えると、むしろ客足は逃げていかないかな、なんて思ったりもしますね。
それとも、「若者がターゲット」と言っているのはある程度お金を持っている「30代以降」に限定?
真のスマホ世代は今の20代だと思うので、もしかしたら5年~10年先取りをして勝負、という意図があるのかもしれませんね。
今の20代に経済的ゆとりが出てきたころに技術的にも成熟してくる。
まさにトヨタの余裕感にしかできないことなのかもしれません。
個人情報は大丈夫?
このコネクテッドカーがやろうとしていることは、所有者目線では自動車と所有者が繋がれた気持ちになれるという「所有感」「一体感」を高める効果も狙っているのだろうと思いますが、トヨタ側の目線では、走行情報を継続的に取得するというところもポイントになっているはすです。
この走行情報も所有者を特定できる情報と結びつけば立派な個人情報なので、恐らく購入時にその辺りの同意書にサインをさせられるんだろうと推測します。
いったいこの情報を使ってどういうことをしようとしているのでしょう?
例えばトヨタが組んでいる任意保険の会社に、正確な走行距離、走行回数、ブレーキとアクセルの踏む速さ、強さといった情報を提供して、保険料の適正な価格設定に使用されるかもしれませんね。
安全運転をしているとして安くなる場合もあるかもしれませんので、一概に悪いことではないでしょう。
ただ、自動車会社は契約時に所有者の氏名、性別、年齢、住所などの「ユーザ情報」を握っているので、それと走行情報を組み合わせたビッグデータとして管理を委ねるのは、僕はまだちょっと気持ち悪い感覚があります。
コネクテッドカーの実現のためにはもちろんGPSで位置情報を掴む機能も搭載するでしょうから、こちら側からみえないトヨタの管理コンソールには逐一情報が更新されていて、「誰々さんは今日どこそこへ行った」ということが丸わかりになってしまうのかもしれないですよね。
自動車を運転することに「解放感、楽しさ」を見出しているひとにとって、いつも誰かに監視されているような気分になるのは、購買意欲がそがれてしまわないのかな、とちょっと懸念をいたします。
それって未来の自動車に対する懸念とイコールなのかもしれませんが。
まとめ
結局は、トヨタとはじめとする自動車会社がそのデータをどう適切に管理・運用するのかを、きちんと所有者に対して開示するのかどうかということに尽きると思います。
トヨタがデータ管理をする場合、トヨタだけで活用するはずはありません。
ビジネスとしてかならず何かのサービスと組み合わせてシナジーを生み出そうとするはずです。
データとデータを組み合わせて、新しい価値を生み出そうとするでしょう。
それって、最近トラブル頻発しているフェイスブック社がやっていることと同じことを、自動車会社もやってやろうということですよね。
フェイスブックといえば、サードパーティの会社がアプリで個人情報を取得してコンサルティング会社に不正に売却していた、という事件がありましたが、フェイスブックの個人情報に対する決め事がザルだったことにも原因の一端があります。
なおこの売却されたデータがトランプ大統領の選挙に活用された疑いがあるとされています。
情報ビジネスに乗り出すのなら、どのように活用するのかをきちんと開示して欲しいところです。
いざ買うと決めてしまうと、ディーラーの説明もおざなり、購入者も細かいことはわかりませんが、みたいに賃貸物件の重要事項説明みたいになってしまいそうな予感が(^^;;
もっと消費者が自分の個人情報を自分で守るという意識を持たないといけないような気がしますね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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