日本の発電電力量の推移について
出典:ウィキペディア
まずお断りしておきます。
この記事では、原発推進や反原発の意図は全くありません。
冷静に原発を停止した場合の電気料金の推移から、今後をうらなっていく内容です。
日本では様々な発電によって、各家庭に電気を送っています。
以下のグラフは発電電力量の推移を表しています。
これをみて分かることは、年々原子力発電所による発電量が増加し、2010年には全体の30%程度をまかなうまでになっていたということです。
対して石油、石炭、LNG(天然ガス)が減少傾向にあったこともわかります。
ところが、2011年3月11日の東日本大震災以降、原子力発電所(以降、原発)の停止が相次ぎました。
原子力発電は一気に減り、石油、石炭、LNG(天然ガス)が大幅に増加していることもわかります。
それでは、この電力発電の推移によって、電気料金はどう変わっていったのでしょうか?
大震災前後の電力と電気料金の推移について
出典:Swissinfo
2011年3月11日の東日本大震災以降、原子力発電所(以降、原発)の停止が相次ぎました。
それまで日本の原発の稼働率は70%弱でしたが、以降2年ほどで5%まで落ちました。
以下のグラフは世界主要原子力発電国における設備利用率の推移です。
日本があからさまに激減していることがわかりますね。
その間の電気料金の推移はどうだったのでしょうか?
2011年から一気に値上がりをしていることがわかります。
オイルショック(第一次1973年、第二次1979年)の高騰に次ぐ値上がり率を示しています。
その原因は、原発の稼働停止により、火力発電所に頼ることになったため、燃料価格の高騰により電気代も上昇したためです。
2011年から2014年まで上がり続けていましたが、2015年、2016年には値下がりに転じています。
2016年には原発事故以前の金額まで戻ってきています。
2015年から値下がりをした理由はなんでしょうか?
電気料金が安定した理由
電気料金が2016年には原発事故以前の金額まで戻ってきている理由は、よくマスメディアでも取り上げられている「再生可能エネルギー」によるものと誤解してしまいそうですが違います。
もう一度、このグラフを載せますが、「再生可能エネルギー」(新エネ)はまだ10%に満たないことがわかります。
(グラフの赤い部分です)
これでは原発の電力を補うにはほど遠いです。
電気代値下がりの主な理由は、燃料価格の低下による火力発電費の減少です。
火力発電で使われる燃料とは、主に石油、石炭、天然ガス(LNG)です。
燃料価格の低下の理由は、産油国(OPEC)が原油の価格を低い水準に維持する戦略をとっていることと、天然ガス(LNG)の調達先が広がったことで輸入価格が下がったためです。
2015年以降に産油国が原油価格を下げている主な理由は以下です。
- シェール革命(石油、LNG供給量の増加)
- イランの石油禁輸解除(石油供給量の増加)
- 世界景気の減速(需要の減少)
- 中国景気の悪化(需要の減少)
シェール革命については下記を参照してください。
シェールガス革命(シェールガスかくめい)あるいはシェール革命とは、今まで困難であったシェール層からの石油や天然ガス(シェールガス)の抽出が可能になったことにより、世界のエネルギー事情が大きく変わることを指す。
出典:Wikipedia
また、2016年から電気の小売業への参入が全面的に自由化されました。
2017年12月時点で449事業者まで増加し、新電力による販売電力量は93億kWhと、販売電力量全体の12.6%まで増加しています。
家庭のスイッチング(契約変更)は、全家庭の約1割に達しています。
以下のグラフは電力契約のスイッチング申込件数の推移です。
年々順調に伸びてきていることがよくわかります。
このことから初めて電気供給事業者間で競争が起こっており、それも価格を抑える効果を出しています。
新電力とは?
出典:電ニュー!
既存の電力会社(東京電力、関西電力など)ではない全ての電力会社を新電力会社(新電力)といいます。
参入業種として多いのは、エネルギー(石油、ガス)関係、通信(インターネット、通信)関係が多いです。
新電力の発電方法は会社により異なるようです。
以下が主な発電方法です。
- 自社発電
- 他企業から余った電力を買電
- 卸売電力市場で買電
元々エネルギー関連を扱ってきた企業は、自社で火力、原子力発電ができるということになりますが、大規模な投資が必要であり、「例外的」と言えるでしょう。
エネルギー事業に新規参入した企業では、再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、水力)による発電を取り入れていることが多いですが、それ単体では全てを供給するほどの量では無いため、大半を東京電力などから余剰電力の買電、卸売電力市場での買電で補っています。
つまり、新電力の発電も実は火力発電に頼っているのが現状なんです。
新電力も火力発電費の減少の恩恵にあずかっていることになります。
では火力発電の燃料が値上がりしたら今後はどうなるのでしょう?
電気料金が値上がりする可能性は?
新電力にスイッチングした家庭は1割に達しているため、値下がりしたと喜んでいる家庭は多いと思います。
しかし新電力もほとんどを火力に頼っている現状ですので、火力の燃料費がまた上がってきた時にどうなるでしょうか?
産油国が原油価格を下げている理由を思い出してください。
2015年以降に産油国が原油価格を下げている主な理由は以下です。
- シェール革命(石油、LNG供給量の増加)
- イランの石油禁輸解除(石油供給量の増加)
- 世界景気の減速(需要の減少)
- 中国景気の悪化(需要の減少)
シェール革命は特に米国がエネルギー輸出国に転じるほどに産出できているため、当分は続くでしょう。
また北朝鮮が「開国」した場合、膨大な資源が埋蔵されていると言われているので、その資源活用も期待できます。
この点では電気料金を抑制する効果が継続すると考えられます。
しかし、それ以外の要素については不安要素となっています。
まず中東情勢です。
イランの石油禁輸は解除されたものの、2017年末から続くイランの反政府デモや、中東最大の産油国サウジアラビアで政情不安があります。
この状態が続くと石油供給量が抑制されるため、価格高騰に繋がります。
内乱や戦争が勃発すればそれこそ最悪です。
また、世界景気、中国景気の状況がどうなるかも不安定要素があります。
とくに中国景気は「謎」が多く、研究者も読み切れないでいます。
その状況について簡単にですが説明していきますね。
中国景気は上向きとみる要素
出典:時事ドットコム
世界景気は、名目GDPが米国に次いで世界第二位の中国の景気に左右されるところが大きいと言われています。
世界第一位の米国、第三位の日本は、大きな潮流でみたら安定しています。
しかし、中国のような共産党一党独裁の国家がいかに舵取りをするかは正直読みづらいというところです。
その理由は、中国政府が作成するデータ自体を「盛っている」可能性が多分にあり、真偽が怪しいことが挙げられます。
まず中国のGDP自体はかなり怪しいとみられています。
そのことは中国の李克強首相自身が2007年(首相就任前)に認めています。
「中国のGDP統計は信頼できない。鉄道貨物輸送量、銀行融資残高、電力消費の変化を見た方が実態がわかる」と語ったとされる。
出典:ZDnet Japan
そこで李克強指数というものが提示されました。
鉄道貨物輸送量25%、融資残高35%、電力消費40%の構成で作られた指数。
中国経済の実態をよく表していると評価されている。出典:ZDnet Japan
出典:ZDnet Japan
これをみると、GDPは一定していますが、李克強指数では2015年以降は上向きに転じています。
他にも提示されている指数がありますが概ね李克強指数と並行しています。
この指数が上向きということは、景気が良くなっているということを表しているとしています。
GDPが高水準を維持しているにも関わらず、その時期に指数は低下をしていることから、信用性があるとされています。
これをみる限りでは、中国経済は好調に戻ってきているようにみえます。
中国景気は下向きとみる要素
出典:China.org.cn
今度は失業率の観点でみていきましょう。
中国政府の発表で失業者率は4%で日本と同じくらいとなっています。
失業率という観点でも、景気はそんなに悪くないのでは?と思えてきます。
しかし失業者数では800万人と発表されています。
そうすると、労働者人口がたったの2億人くらいしかいないということになります。
全人口(14億人弱)からすると、本来の労働者人口は8億人はいないとおかしいのです。
そのカラクリはこうです。
中国政府が発表する失業率は、都市戸籍を持っている「中流以上」の階級のひとだけです。
都市戸籍を持っているひとだけが、失業の登録を行っているからです。
その人たちだけをカウントすると、だいたい失業率4%、失業者数800万人ということのようです。
農村戸籍(農村で働くひと、農村から出稼ぎに来ているひと)は中国政府も実態をつかめていないため含めていないのではとみられており、研究者の間では全体の失業率は5倍の20%くらいに跳ね上がるだろうと言われています。
労働人口8億人に対して、失業率が20%とすると、失業者数は1億6千万人になります。
日本の人口は1億3千万人弱なので、日本の総人口を越える失業者数がいることになります。
これだけ失業者が多ければ、普通ならモノが全くうれない「ハイパーデフレ」に陥っているはずです。
そうならないのは、中流、上流階級の就業者の収入が異常に高いためです。
その理由が生産性が著しく高いためとすれば、失業率が高くても「思いっきり高いモノを沢山買ってくれる層」に支えられて経済は向上する?という見方もできますので、失業者が多いから景気が上がらないとは言い切れないですが、貧富の格差が異常に高い国であることは間違いなく言えますね。
しかし、こんな想像もできます。
とんでもなく富を築いている層が、貧しいひとたちを低賃金で雇用し、経営状況にあわせて不当解雇する。
そうした搾取の構図があるとすれば、とても生産性が高い状態とは言えませんね。
生産性が異常に高い社会なら、富の再配分がきちんとなされていないとおかしいですから。
この失業者数と、労働環境が改善されていないこととすると、景気が一時的には上がるかもしれませんが長続きはしないと思うのですが、どうでしょうね。
まとめ
一つ言えることは、中国政府が「景気が上向き」と発表をしても、即座に信用できないということです。
GDPも失業者率も良い方面に盛りまくっていることが明らかだからです。
しかし残念ながら、今の世界は経済大国となった中国政府が発する言葉をある程度信用するより他はありません。
各国のメーカーの工場が「人質」に取られているという側面もあります。
そこで、GDPという世界統一の基準ではなく、李克強指数のような独自基準を信じて、「景気が上向き」と信じざるを得ないんですよね。
そもそも李克強指数のベースにしている値(鉄道貨物輸送量、融資残高、電力消費)だって信ぴょう性が疑われるはずなんですけどね(^^;
とにもかくにもメディアでは米国をはじめ、世界経済は上向きと発表されていますので、原油産出国が値上げを宣言する可能性があります。
中東の情勢不安もあわせ、原発の代わりに火力発電に頼る日本の電気料金は、どんどん上がっていくことになるでしょう。
その兆候は、ガソリン代の高騰に現れてきています。
ガソリン代の高騰の原因は、下記のような理由です。
原油価格の上昇が背景にあるが、その理由は大きく三つある。
まず、協調減産の延長が挙げられる。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどOPEC非加盟の主要産油国は18年3月に期限が切れる原油の協調減産を18年末まで再延長を決めた。需給が中長期で引き締まるとの観測がいまだに根強い。
二つ目が地政学リスクの高まりだ。イランでの反政府デモや中東最大の産油国サウジアラビアで政情不安が続いていることで、原油の供給が途絶える懸念がくすぶっている。
出典:ニュースイッチ
「原油の協調減産」は、原油が売れないから値下げをするとともに、産出量自体も抑えているということです。
世界経済が上向きで需要が高まっているのに、減産を止めなければ、需要過多になるので自然と価格高騰になります。
中東はこの価格高騰に乗じてこれまでのマイナス分を取り返そうとしているのかもしれません。
このしわ寄せは、そろそろ電気料金にあらわれてくるかもしれませんね。
消費税率を10%に上げることによる消費の冷え込みに加え、どの程度の値上げになるかわかりませんが電気料金の値上げになれば、ダブルで家計を圧迫することになります。
こうしたことを含めて原発再稼働をするか否か。
原発を全て廃炉にして、火力頼みにして電気料金の高騰、CO2排出激増の社会にするか。
再生可能エネルギーの開発に国家レベルでテコ入れして進めていくのか。
原発は地震大国日本ではリスクが高いので、どうしていくかをもっと国民全員で考えていく時期がきています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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