クールジャパン政策がやっぱり酷い
改めて言います。
酷い。
以前、当ブログでもマレーシアのクールジャパン活動の悲惨さについて記事にさせていただきました。
文筆家の古谷経衡氏が現地取材された内容を参考とさせていただいたものですが、普通の果物をあり得ない金額で売っていたり、なぜかディズニーの紹介をしていたりと、いったい日本の何を紹介したいのか意味不明な陳列の館と化していました。
「クールジャパン」というものは、そもそも海外からみた日本のアニメ文化や歴史に基づく文化がかっこいい!と映ることから生まれる感情や購買活動を根源とすべきものです。
この活動状況をみると、残念なことに大したリサーチもせずに莫大な税金を投入したとしか思えません。
クールジャパン機構とは?
image:トゥギャッチ
日本の文化やポップカルチャーなどの外国人がクールだととらえる日本の魅力を発信して、日本の経済成長につなげるブランド戦略です。
アベノミクスの成長戦略のひとつとして掲げており、積極的な海外展開をしています。
政府が推進役として設立した「官民ファンド」のプロジェクトで損失が膨らみ、明らかに投資の失敗といえる事例が相次いでいます。
まさに前項で述べたマレーシアの「ISETAN The Japan Store」もその失敗事例のひとつでしょう。
こうしたクールジャパン活動を取り仕切るのが、「クールジャパン機構」です。
六本木ヒルズ森タワーの17階に入居しています。
これだけでもとんでもない入居費用が掛かっているんでしょうね。
正式な名称は「株式会社海外需要開拓支援機構」と言うそうです。
日本の魅力を海外発信する際に民間だけでは難しいことを政府が出資して推進するため、2013年に設立された官民ファンドです。
これまでの出資実績
件数:29件
投資総額:620億円
政府の出資額:589億円(85%)
マレーシアの「ISETAN The Japan Store」は、国が約9億7000万円、三越伊勢丹ホールディングスの現地子会社が10億1000万円を出資しています。
商品はまったく売れず、客の入りも最悪で赤字続き。
2018年6月末で三越伊勢丹側に全株式を売却し、単独で再建を図ることになりました。
「クールジャパン機構」は責任を擦り付けて、随分といい加減なものですね。
なぜ三越だったのか?と思っていたら、どうもこういう仕組みだったようです。
「機構が発足した当初は、まず投資の実績をつくることが優先されました。the Japan Storeの案件はCJ機構の社長(当時)と三越伊勢丹の社長(当時)が懇意だったため、三越伊勢丹にお付き合いいただいたのです」
出展:FNN PRIME
つまりきちんとクールジャパンを売れる民間を探すことなく、タヌキとキツネが握り合っていただけ。
こんなものが成功するなんて期待できませんね。
株式会社All Nippon Entertainment Works(ANEW)
image:Moviehole
日本のコンテンツをハリウッドで映画化し、日本文化を発信しようということで設立された官製映画会社です。
クールジャパン機構の設立以前の2011年10月に経産省配下の産業革新機構から22億2000万円の出資を受けて設立された会社です。
7本の映画の企画を発表しましたが、なんと6年間で1本も製作されることはありませんでした。
産業革新機構は2017年6月に全株式を京都市の「フューチャーベンチャーキャピタル」に売却してしまいました。
なんと出資額の1.5%にあたる3400万円という「叩き売り」です。
ステータスはどれも「映画化に向けて」「脚本着手」「本格始動」「現在進行中」となっているようです。
ガイキング(写真)
2012年12月 - 設立後初の共同開発案件として、テレビアニメ 『大空魔竜ガイキング』を制作した東映アニメーションと、実際の映画制作に着手するヴァルハラ・エンタテインメント(Valhalla Entertainment)と共にハリウッド実写映画化に向け共同開発を発表。
ソウルリヴァイヴァー
2014年7月 – 漫画『ソウルリヴァイヴァー』を連載する雑誌『月刊ヒーローズ』の共同出資社であるフィールズ株式会社、ベッドフォード・フォールズ・カンパニー(The Bedford Falls Company)と共に、ハリウッド実写映画化に向けた脚本開発に着手。
オトシモノ
2014年10月 – 映画『オトシモノ』(2006年日本公開)の配給元松竹株式会社、およびクリス・ワイツ&ポール・ワイツ兄弟率いるハリウッドの映画製作会社デプス・オブ・フィールド(Depth of Field)と共同で、同作のハリウッド版リメイク作品『ゴースト・トレイン』(仮題)の実写映画化の本格始動を発表。
臍帯(さいたい)
2014年12月 – 橋本直樹が製作・脚本・監督を務めた映画『臍帯』(2012年日本公開)を、橋本が代表を務める株式会社ウィルコとデプス・オブ・フィールドがハリウッド・リメイクに向けて共同企画開発の本格始動を発表。
6000―ロクセン―
2015年7月 – 小池ノクト原作、幻冬舎コミックスのホラー/スリラー漫画『6000ーロクセンー』を原作としたハリウッド実写映画化に向け、ハリウッドのプロデューサー、マイク・メダヴォイとの提携を発表。
藁の楯(わらのたて)
2015年8月 – 日本テレビ放送網株式会社、デプス・オブ・フィールドと共同で、木内一裕の小説家デビュー作を三池崇史監督が映画化した『藁の楯』のハリウッド・リメイクの開発を発表。
2016年10月 – 『藁の楯』のハリウッド・リメイクを、日本テレビ放送網株式会社、デプス・オブ・フィールドに加え、ヨーロッパ・コープと4社共同で開発、出資、製作を行うことを発表。
TIGER & BUNNY
2015年10月 – テレビアニメ『TIGER & BUNNY』を制作したサンライズから2015年4月に作品管理を継承されたバンダイナムコピクチャーズ(BN Pictures)と共に、イマジン・エンターテインメント(Imagine Entertainment)の共同制作によるハリウッド実写映画化の開発を発表。
2016年8月 – 脚本家エレン・シャンマンの脚本執筆が決定。
なお『TIGER & BUNNY』のハリウッド実写映画化企画そのものは、BN Pictures & Imagine Entertainmentが米国の企業である「Global Road Entertainment」および「Weed Road Pictures」とパートナーシップを組み直し、現在進行中
出展:Wikipedia
産業革新機構は「1件は本年度中に製作開始決定となる見込み」と公式ページで発表していますが、2017年6月に京都のフューチャーベンチャーキャピタルに売却されて以降、進行状況はわかりません。
また2017年10月31日、親会社がフューチャーベンチャーキャピタルからANEW Holdingsに変わっています。
誰が持とうが構いませんが、実績を出していただきたいものです。
クールジャパン機構の問題
ANEWの例で大きな問題は、産業革新機構が出資した案件の損益を公表していないことです。
損益をもとに具体的にどう事業を行ったかが明かされず、どう計画し、どう運営し、何が問題で何を改善すべきだったかをチェックし、次にどう活かしていくかという「PDCA」が回せません。
こんなことを続けていたら、これからも同じ失敗を延々と繰り返していくでしょうね。
普通の企業ならPDCAサイクルなんて当然のようにやっていることをやらない。
それは株主という存在が無く、税金で胡坐をかいて仕事しているからでしょう。
会計検査院が2018年4月に、官民ファンド投資損益の調査結果を発表した結果をみると一目瞭然の結果になっています。
2017年3月末に17件に対して310億円を融資し、44億5900万円の損失を出していました。
全くもって、酷いありさまですね。
クールジャパン機構は2034年で業務を終えると法律で決まっています。
しかし産業革新機構との統合もとりだたされており、何も実績測定がされないままクールジャパン機構は消滅するのではないでしょうか。
まさに「やり逃げ」状態です。
誰も責任をとらず莫大な税金だけを浪費して消えていくんです。
まとめ
image:ニューズウィーク
アベノミクスで頑張っている部分もあるでしょう。
僕は何でも安倍さんのせいにする「アベガー」ではありません。
認めるべきところは認めます。
しかしこれは余りに酷い。
この問題は野党の清水貴之参院議員(日本維新の会)が追及をしていますが、他の議員からの追求は無いのでしょうか?
モリカケ、モリカケとばかり言っていないで、もっとこういう政策の愚をきちんと追及し、血税の使い道を正せる野党でなければ、次の与党を任せようとは思えないのが残念でなりません。
それとも追及しているが国民に伝わってこないだけでしょうか?
もしそうであれば、マスメディアの偏向報道が酷いということになりますし、結局のところ野党にとっては実務がみえてこず、何もメリットの無いマスメディアのバックアップということになりますね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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