日銀レビューが発表
出典:ダイヤモンド・オンライン
「日銀レビュー」という不定期のレポートで、「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」と銘打ったものです。
日銀でも様々な分析レポートを公式サイトで公表していますが、その中のひとつです。
これが普段の生活に根付いたもので面白かったのでかいつまんでご紹介します。
日銀レビューの概要
出典:日銀レビュー
日銀レビューの概要を書きます。
要旨
近年、消費者の購買経路は多様化しており、インターネット通販も拡大している。こうしたインターネット通販の拡大は、競争環境の変化を促しながら、スーパーなど既存の小売企業の価格設定行動にも影響を与えてきたと考えられる。この点について確認するため、わが国の消費と物価のデータを分析すると、インターネット通販の拡大は、既存の小売企業との競合関係が強まっているとみられる財を中心に、わが国の物価下押しに作用してきたことが示唆された。
中身はもっと難しい計算式なども含まれますが、この要旨だけでもある程度わかります。
簡潔に言えば、ネット通販がデフレを押し上げている要因のひとつでは?という観点で掘り下げている調査結果ということですね。
レポートでは、日用品、衣料品は消費者物価を0.3%程度下落させていると指摘しています。
ネット通販はコストカットできるため販売価格を安くできるという強みがあります。
Amazon などのインターネット通販の急速な拡大が、スーパーなど既存の小売企業が直面する競争環境を厳しいものにし、値下げ圧力にもつながっているという声が多く聞かれるようになってきている。こうした状況は、海外では「Amazon Effect」とも呼ばれ、このところメディアで注目を集めているほか、各国中央銀行等でも物価に与える影響について議論が行われつつある。
「Amazon Effect」と言うんですね。
Amazonをはじめ、世界的に起こっている「販売・流通革命」だと思いますが、そもそもインターネットの普及でより早く、より安くというビジネスが起こることは誰にでも予想できたことです。
いまさらそれを冷静に分析しているのも、なんだかなあとも思いますね。
各国の銀行や政府を牛耳っていた人たちが「1900年代のおじさんたち」だったため、2000年代の急速なインターネットビジネスの発展について見積りが出来なかったのではないでしょうか。
ネットの価格が実店舗の価格も押し下げる
オンライン価格と実店舗価格での比較は以下のようになっていました。
圧倒的にオンライン価格の方が安く、比較できるひとはそちらを選ぶだろうということが推測できます。
この価格差は、よくネットショッピングをされる方ならわかると思います。
実店舗で売っていたものを、いったん買わずにネットショップで調べ、安ければそちらで購入する。
スマホの普及で、その場で調べられてしまうのも実店舗にとっては痛いのではないでしょうか。
割引率が平均で13%も開いてしまっては、ネットショップを意識して価格設定するのも難しいでしょう。
そうなると、店頭でも「高くても良いモノ」より「原価がやすくてチープなモノ」を置かざるを得ない。
自然と実店舗も、価格水準が下がっていく。
確かにこれでは、デフレを押し上げる要因の一つにはなっていると思えてきます。
次に以下の絵は、Amazon配送センターからの平均輸送距離を表しています。
2010年と2018年で比較すると、明らかな違いが分かります。
これをみて明らかにわかることは、
「配送センターが増えたため、都心部より遠方でも早く届けられるようになった」
ということです。
配送センターが増えたことで、Amazonプライムでの翌日配送や、Amazon Prime Nowのような即日配達さえも可能になりました。
実店舗の最大のメリットはこれです。
・実物を手に取って確認、試着できる。
・即日手に入れることができる。
配送センターを増やしたことで、実店舗のメリットをひとつ潰してしまいました。
残る実物を確認、試着できるというメリットも風前の灯です。
例えば「ロコンド(LOCONDO)」というネットショップがあります。
出典:LOCONDO
試着、返品無料というサービスを始めているネットショップです。
これが他のネットショップでも広まれば実店舗でものを買うということが無くなっていく時代がくるのかもしれません。
ただし返品無料にする分、商品代金に積んでいるとすると、価格の優位性が保てなくなるのでまだ広がりは見せていませんね。
Amazonのような巨大企業がAmazonプライムのサービスとして始めたら…。
ワールドビジネスサテライトでの追加情報
出典:じゃらんnet
このAmazonなどのネットショップによって価格が押し下げられ、デフレが終わらないという視点は、確かにそうだろうと思います。
WBS(ワールドビジネスサテライト)というテレビ東京系の番組では、その他に中古市場やドラッグストアーの存在も挙げていました。
中古市場とは、メルカリやYahoo!オークションといったネットでの中古取引市場のことです。
安く買って、使い終わったらまた誰かに売るという繰り返しが行われるようになり、実店舗で新品が売れなくなったと言われています。
また実店舗間でも同じことが起こっています。
ドラッグストアーは、食品売り場を拡大して、スーパーに対抗していると言います。
近所のウェルシアは確かにスーパーより安い商品があります。
そのカラクリは、化粧品や医薬品の粗利率が30%~40%に対し、食品は10%~20%なので、スーパーやコンビニよりも食品を安くできるということのようです。
コンビニやスーパーにとっての強みは、お弁当や生鮮食品が買えることでしたが、ドラッグストアーでもお弁当や生鮮食品を低価格で買えるようになってきており、差別化が難しくなっています。
専門家はこうした低価格で買える店舗の台頭が、インフレ率の0.1%くらいの押し下げ要因になっているとみているとみています。
まとめ
出典:ダイヤモンド・オンライン
この調査結果はあくまで供給サイドの話です。
需要サイドの観点ではデフレの理由が書かれていないんですね。
焦点を絞ったレポートなのでそういうものなのでしょう。
デフレの理由は様々なものがあります。
需要サイドの例では高齢者が挙げられます。
2018年に入って、食品やガソリンといった必需品の価格が上がってきています。
ガソリンはOPECの協調減産の延長によるところが大きいです。
2018年6月追記
OPECが7月から協調減産をやめ、日量100万バレル産出量を増やすと決めました。
これでガソリン代は安定してくるでしょう。
年金という決まった金額だけで暮らす高齢者は、物価上昇に敏感に反応します。
アベノミクスは「所得が上がれば物価が上がりデフレから脱却できる」というトリクルダウンを想定していますが、所得が上がらない高齢者はこの施策ではかえってモノを買わなくなり、裏目になってしまいます。
僕の父は安倍首相に対して、「老人を虐めやがって」と言い嫌っています。
消費増税をすればますます家計の引き締めないと、というマインドが広まるでしょう。
高齢者の方ほど安倍首相を嫌っている方が多いのは、そういうところにも起因していそうです。
この日銀のレポートを読んで、さて「ではどうしたら?」という疑問だけが残ります。
調査は得意でも、有効な施策を打てないのでは、高額な給料をもらっている意味はありませんね。
黒田総裁にはこうした不毛な調査ばかりやっていないで、「だからこの省庁と協力してどうする」という指針を示してもらいたいところです。
黒田バズーカってこのレポートのことではないですよね?
Amazonで自らの著書も販売されていますし、「Amazonが安いからデフレが止まらない!」で締めるレポートではなくて、その先の「成果」を出して欲しいですね。
※以下をクリックするとAmazonのページを確認できます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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