外国人労働者を拡大すれば人出不足倒産は解決する?建設、運輸など特定の業種で働き手が見つからない理由は?帝国データバンクの資料から読み解く。

外国人労働者を拡大すれば人出不足倒産は解決する?建設、運輸など特定の業種で働き手が見つからない理由は?帝国データバンクの資料から読み解く。

「人手不足倒産」の定義

 

 

帝国データバンクの「人手不足倒産」の定義はこうです。

 

従業員の離職や採用難等により収益が悪化したことなどを要因とする倒産(個人事業主含む、負債 1000 万円以上、法的整理)

出典:「人手不足倒産」の動向調査(2018年上半期)

 

収益悪化には様々な要因があると思います。

むしろ複数の要因が連鎖的に絡み合っているはずです。

なんとなく「人出不足倒産」という言葉から「働き手がいないせいで潰れた」という言い訳のようなものも感じたので、帝国データバンクの調査をよく読んでみました。

 

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人出不足倒産の件数

 

出典:「人手不足倒産」の動向調査(2018年上半期)

 

これは2013年から2018年上期までの人出不足倒産の件数推移を表すグラフです。

なんと2018年だけで2014年の1年に並んでしまいました。

このままの勢いだと、2017年を大幅に超えて過去最高の倒産件数になるでしょう。

 

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人出不足倒産する仕事とは?

 

 

人出不足倒産をしている職種をみてみましょう。

 

2018年上期

  1. サービス業 19件
  2. 建築業 18件 
  3. 運輸・通信業 12件
  4. 製造業 8件
  5. 小売業 8件
  6. 卸売業 5件

 

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5年半累計件数

  1. 建築業 139件
  2. サービス業 123件
  3. 運輸・通信業 44件
  4. 製造業 42件
  5. 卸売業 34件
  6. 小売業 32件

 

5年間累計も、2018年上期も順位が違うだけで同じ職種です。

職種ごとに人出不足の度合いは明らかだということを表しています。

それでは、さらに細かく、業種細分類別上位(5年半累計)のグラフをみてみます。

 

出典:「人手不足倒産」の動向調査(2018年上半期)

 

これらの上位4業種が苦しんでいる理由について、帝国データバンクは以下のように述べています。

  1. 道路貨物運送 29件
    景気回復や通販市場の拡大で配送需要が高まるなか、ドライバーの確保が追い付かず、新規受注難から資金繰りの悪化を招く
  2. 老人福祉事業 26件
    スタッフの確保が追い付かず十分な介護サービスを提供できなくなったなど
  3. 木造建築工事 23件
    施工現場での職人不足による受注減や外注費負担の増加など
  4. 受託開発ソフトウェア 19件
    開発エンジニアの相次ぐ離職による納期遅延など

 

5位以下にも建築、土木、内装といった建築関連業種が並びますが、現場職人や施工管理者の不足による工期延長などで、労務費の上昇に苦しんでいる実情も指摘しています。

 

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この分析結果をみると以下のポイントに気づきます。

 

人出不足倒産というものが「働き手がいないせいで潰れた」という言い訳とは言い切れない。

働き手さえ確保できれば仕事を回すことができたといえるのかもしれない。

 

それでは、なぜ働き手が見つからないのでしょうか?

 

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働き手が見つからない理由は?

 

image:守谷市商工会

 

前項の帝国データバンクの解析結果を参考に以下の3項目を挙げてみました。

 

道路貨物運送、老人福祉事業

  • 需要増でより賃金や待遇の良い会社に移ってしまう。
  • 労働者の奪い合いが起こっている。
    道路貨物は特にオリンピック需要と言われており悪いことではないが、オリンピック以降が怖い。

土木・建築業

職人という厳しい仕事を選ぶ若者の減少。
業界内の労働者自体の減少が起こっている。
きつく叱られたり、パワハラという言葉の普及で業界への印象(3K)が決まってしまう。

開発エンジニア

  • 実力のある人材が賃金や待遇の良い会社に移ってしまう。
  • うつ病などで退職し職場復帰が遅れたり、転職してしまう。
    労働者が業界を移ってしまい減少している。
    納期管理の厳しさ、職人気質、能力給与による社員間格差といった独特の問題をはらむ。

 

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また全体的に言えることですが、労働の質・量に対して賃金が少ないという点も大きな要素ではないでしょうか。

以下は厚生労働省の資料を元に作成した夏のボーナスの業種別ランキングです。

 

参考:厚生労働省

 

人出不足倒産をしている業種は、ほとんどが下位を占めていることがわかります。(黄色く塗りつぶした業種)

これをみると、人出不足と賃金の少なさはリンクしているのではと思われます。

 

ボーナスとは会社の業績で分配されるものですので、業界全体の安定性や元気度の指標のひとつと言えます。

平均値の高さは安定性、合計値の高さは元気度と言ってもいいのかもしれません。

建築業や運輸業、介護などは肉体を酷使する割に賃金が低く、安定性に欠けることがわかります。

これでは若い優秀な人材を獲得できるかというと、ちょっと難しいかもしれません。

 

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まとめ

 

image:ダイヤモンド・オンライン

 

日本の労働者人口は減っています。

少子化、高齢化に加え、管理職をしていた団塊の世代の退職が始まっています。

一般社員を管理職に上げると現場の社員が減ってしまうため、新たな人材が必要になります。

しかし少子化で売り手市場のため、どうしても賃金の高い仕事に流れがちになります。

さらに長引くデフレにさらされ続けた若い世代は、苦しむ親を見てきたために安定志向になっています。

 

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「こんな仕事をしていきたい」という夢を語るよりも先に、賃金が高いか、安定しているか、その両方かのどれかに流れやすい。

業界内で大規模に運営している会社に、小規模で細々やっている会社から優秀な人材がどんどん移動していくという現象が加速しています。

政府の方針の通りだと、建築、運輸、小売りといった人出不足の仕事は外国人の事実上の「移民」によってまかなっていくことになります。

 

政府は、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を創設する方向で検討に入った。最長5年間の技能実習制度の修了者で一定の要件をクリアした人に限り、さらに最長5年間国内での就労を認める考えで計10年間働けることになる。深刻化する人手不足に対応する狙い。

出典:SankeiBiz

 

この政策は端的に表現すれば、「きつい労働に外国人を割り当て、安い賃金で使い倒す」ということになるので、日本人と外国人の間に大きな賃金格差と対立構造を産むかもしれません。

まずは低賃金労働者の移民よりも、業務の棚卸しとオートメーション化が必要と考えます。

AIなどのソフトやハードでオートメーション化を導入し、どうしても人がやらないといけない部分に労働者を割り当てていきます。

そうすることで労働生産性を高め、労働の質と量の改善と、一人当たりの賃金水準をあげていく努力をすべきではないでしょうか。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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