タイの洞窟に避難した13人が救出
image:モーニングショー(以下同)
2018年6月23日の午後から、12人の少年と1人の大人が、タイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟に入ったまま水が流入し洞窟の奥に取り残され出られなくなっていました。
彼らは地元の少年サッカーチームとそのコーチでした。
世界中から捜索の手が差し伸べられ、7月2日の夜にイギリスのダイバーチームが13人を発見しました。
ダイバーが発見するまでの9日間、誰かが探してくれているかどうかも分からない、真っ暗な洞窟でひたすら見つけてくれることを信じて待っていたということになります。
少年たちは低体温症のような状態ではあったそうですが、それ以外はいたって健康。
これだけでもかなり凄いことだと思いますが、精神的に追い詰められなかったこと、パニックにならなかったことが信じられない事実です。
7月8日の記者会見で救出作業を開始を発表していました。
洞窟は秘境と言われる非常に険しい鍾乳洞で、水が溜まり、真っ暗の中を潜水して進まなければならず、救助は困難を極めました。
ダイバーは少年たちにダイビングの訓練をし、ある程度少年たち自身で潜水ができる状況まで持って行ったようです。
そのため救助までに時間を要していました。
以下が洞窟内の絵になります。
白い点が救助隊の中継所です。
右から第1、第2、第3中継所になります。
第3中継所から少年たちのいるところまでなんと3kmもあり、途中中継所を作るスペース無いため、水中にいる時間が最も長い区間です。
洞窟内は暗く、狭く、入り組んでいます。
7月12日、ついに全員の救助を完了しました。
第1、第2中継所のあたりは溝が深いため、担架に乗せてロープで搬送するなど様々な救助の手法を組み合わせたようです。
救助後に隊長は「まさにミッションインポッシブル」と言いました。
世界中の救助隊の技術と英知を合わせて救助を成し遂げたことをそのように表現したのでしょう。
完了後の作戦本部の様子です。
詳細な工程表のホワイトボードなどが残されており緊張感が感じられます。
大量の酸素ボンベが残されています。
いかに酸素を持続させながら少年たちに食料の供給などを繰り返していたかがわかりますね。
救助された少年たちは病院で精密検査を受けましたが、いたって健康のようです。
本当に奇跡的としかいいようがありません。
救助隊のサマーンさんが死亡
image:テレ朝News
そんな過酷を極める救助の過程で、救助隊のサマーン・クナンさん(38歳)が死亡するという事態が発生しています。
当初は酸素ボンベの空気切れで窒息死したとされていましたが、後日元上司は、疲労と潜水時の冷たい水による体温低下が極限に達したことが原因で意識を失ったため、と説明を変えています。
実際のところは、現時点ではどちらが原因かははっきり公表されていないようです。
ダイバーが窒息死するということは屈辱的でもあると考え、本人の尊厳のためにこのように伝えている可能性はありますね。
なんにせよ、少年たちを救うために亡くなったサマーンさんを忘れてはいけません。
現地でも「発見は出来ているしいずれ助けられるさ」と少しのんびりとした空気があったようですが、サマーンさんの死で一気にピリピリとした空気に変わったそうです。
そうでなければサマーンさんの死の意味が無かったことになります。
彼の死によって他の隊員が危機感を持ったことで少年たちの救出を早めたことに繋がったと信じたいですね。
こうした救助隊は英雄として迎えられていますが、少年たちはサマーンさんのことをずっと忘れないで生きていって欲しいと思います。
少年たちとコーチが洞窟に入り閉じ込められた理由
image:エッカボンさんのFacebookから
少年たちが洞窟に入り閉じ込められた理由は以下のように報道されていました。
少年たちが、サッカーの練習後、洞窟に入ったのは6月23日午後。
だが、雨期の豪雨に見舞われて、洞窟に大量の水が流入。少年たちは、小高い場所に避難を余儀なくされていた。現地で少年たちの親を取材したジャーナリストはこういう。
「洞窟は鍾乳洞になっており、幻想的な光景に海外からやってくるマニアの間では人気スポット。少年たちは、よく肝試しで洞窟の奥まで入っていた。この日は、サッカーチームのメンバーの誕生日ということもあり、中でハッピーバースデーを歌おうと入ったようでした」
だが、予期せぬ水の流入で戻れなくなりずっと救助を待っていたという。
出典:AERA .dot
日本では連れて行ったコーチの責任論や、自己責任論でバッシングをされそうですが、タイではそうした雰囲気は全くないようです。
とにかく助かって良かったと、喜びにあふれているとか。
寛容な国柄と、子供は宝という伝統からのようです。
救出のダイバーが1人死亡しているというのに、あまりそのことは触れずにお祝いムードになれるところは、日本人としてはちょっと微妙な気もしますが。
少年たちがパニックにならず9日間を過ごせた理由
少年たちは2018年6月23日の午後から、7月2日の夜に発見されるまで、9日間もの期間を真っ暗な洞窟で過ごしていました。
その間は携帯の電波も届きませんから外部との交信ができず、見つけてくれるかどうかも分からない状況です。
「メンバーの誕生日で洞窟にいく」と家族に伝えていたので救助チームは来るだろうと思えたことが唯一の救いだったかもしれませんが、それでも1日、2日と待てども待てども救助が来ないのは、さぞや恐ろしく死の恐怖に襲われたでしょう。
綺麗な水も食料も無いので、飢えとも戦わなければいけません。
助けはくるだろう、しかし間に合わずに飢え死にをするかもしれない。
一人でもパニック状態に陥り、泳いで戻ろうとして死んでしまえば残る全員が一気に絶望感に支配されるでしょう。
こういう時、いかに恐れを克服し、冷静に待ち続けることができるかが鍵となります。
結果的には泣いたりわめいたりしていた少年が一人もいなかったそうです。
初めてダイバーが彼らを見つけた時、むしろ笑顔もみえたことにたいそう驚いたそうです。
少年たちを冷静に保たせたものは、コーチが教えた「瞑想」でした。
コーチの名はエッカボン・ジャンタウォンさん。
25歳。
エッカボンさんは10歳のころに両親と弟を伝染病で亡くし、孤児として寺に引き取られ、寺で育ちました。
20歳までお寺で修業しながら、座禅を組んで瞑想することを学びました。
20歳でお寺を出ると、市場で販売などの仕事をするかたわら少年サッカーチームのコーチをするようになりました。
いまでもひとりで洞窟にいき瞑想をしているほど、瞑想という行為の意味や価値をよく知っている人物でした。
瞑想の効果として活かされたことは、じっといることで空腹やのどの渇きを感じにくくし、かつストレスや恐怖を感じにくい状態になっていったことが考えられます。
ストレスが減ると、脳の消費カロリーが減るそうです。
消費カロリーが増えれば空腹を感じやすくなっていたことでしょう。
黙々と瞑想にふけったことで、少年たちは恐怖と飢えを感じずに9日間を待ち続けることが出来たと、世界中で「瞑想」が改めて話題になっています。
確かに、これまで瞑想の効果については研究はされているものの実績としてはわかりにくいものでしたが、これほどの実践による効果測定は初めてだったと言えるのではないでしょうか。
だからこそ、なおさら瞑想が見直されているんですね。
瞑想に対する反響
少年たちがコーチの指導で瞑想の状態に入りこめたのは、同じチームで励まし合えたということと、コーチが尊敬できる人物だったということも要素として大きいと思います。
瞑想というのは、リラックスできる状況が作れることも大事ということです。
この瞑想により乗り越えたことには、各誌でこのように評しています。
瞑想は嵐が通り過ぎるのをじっと待つように怖い思いやネガティブな考えをやり過ごす
(ニューヨークタイムズ誌)
いくつかの研究によって瞑想とストレス・不安・身体的痛みの瞬間的解消には関係があるとされている
(インディペンデント誌)
瞑想から発展したマインドフルネス
いまマインドフルネスが世界で注目されています。
以前記事で特集をしたことがありますが、改めて簡単にご紹介したいと思います。
マインドフルネスの原点は「瞑想」です。
お釈迦様が菩提樹の木の下で49日間瞑想にふけり悟りを開いたとされることから「瞑想」が仏教で取り入れられました。
「瞑想」に感銘を受けた方が1980年代に、「瞑想」をもとに開発したストレス低減法がマインドフルネスです。
瞑想とマインドフルネスは同じもののように考えるひとがいますが、実際は異なる手法です。
瞑想は「何もしない状態=無」を作っていきます。
対するマインドフルネスは「今この瞬間に意識を集中し過去の失敗や将来への不安がもたらすネガティブな感情に気づきやり過ごすことが出来るようになる」という目的をもって実践していきます。
共通する効果としては「自律神経が整う」ことです。
結果的に整うのか、意思を持って整えるのか、の違いと言っても差し支えないでしょうか。
自律神経とは、内蔵や血管の働きなど自分の意思でコントロールできない神経のことです。
自律神経には、心拍数をあげる交感神経と、心拍数を下げる副交感神経があります。
交感神経はアクセルで、興奮状態にします。
副交感神経はブレーキで、リラックス状態にします。
パニック障害の患者は交感神経の働きが過剰になっています。(極度の興奮状態)
うつ病傾向の患者は副交感神経の働きが過剰になっています。(ブレーキが効きすぎて気分が落ち込む)
大事なことはこの交感神経と副交感神経のバランスを保つことです。
極端に片方が跳ね上がっている状態が良くありません。
また交感神経は年代が変わっても変わりませんが、副交感神経は年代ごとに落ちてくるとも言われており、自律神経のバランスが悪くなると加齢と共に疲れやすくなったり、うつ病を発症することがあると考えられているようです。
マインドフルネスを実践すると、この副交感神経を高める効果があるとされています。
洞窟に閉じ込められた少年たちは、瞑想をすることで、マインドフルネスの副交感神経を高める効果を得ていたことが考えられます。
つまり、パニックに陥りそうな状態のなかで瞑想を行うことで副交感神経を高め、ブレーキをかけ心を安定させることができ、心のバランスを保てたということです。
世界で、日本で取り入れられているマインドフルネス(瞑想)
アップルコンピュータのスティーブ・ジョブスが19歳のときにインドで瞑想に出会い、瞑想を行っていたそうです。
勤務時間30分を瞑想をすることで直観が花開きはっきりと見えるようになったと伝えています。
ジョージ・ルーカスも影響を受けており、代表作『スターウォーズ』でフォースを身につけるために何度も瞑想をするシーンが出てきます。
プロバスケットボールのカリスマだったマイケル・ジョーダンも、若いころはテンションが高く暴力的でしたが、瞑想するようになってからはひとに対して気遣いのできる人間になったと回想しています。
現在の企業では、グーグル社は専用の瞑想ルームがあり、ストレス軽減や創造性の向上、プレゼンで緊張しないといった効果を生んでいるそうです。
日本でもヤフージャパン社内の芝生スペースで週2回実践講座を開いているそうです。
マインドフルネスの方法
以前の記事でオーソドックスな呼吸法(呼吸を意識し雑念を払っていく)での手順について記載させていただいていますので、後に関連記事として紹介させていただきます。
この記事では、呼吸法での手順でうまく入り込めないというひとのために、別の方法をご紹介します。
- 姿勢を整えます。
- 呼吸を整えます。
4秒で鼻から吸い、8秒で口から吐きます。
これだけで副交感神経が高まります。 - 落ち着いてきたら、好きな写真や絵をみてストーリーを考えます。
冒険、発見、ときめきを感じるとうな、前向きなストーリーが良いです。
そこでは脳を使い交感神経が高まっています。
写真や絵では無く、そういう環境に身を置くでも良いでしょう。 - そのストーリーを目を閉じてゆっくり30秒間かけて頭の中で再生していきます。
この時に副交感神経が高まっています。
こうして、副交感申請(ブレーキ)と交感神経(アクセル)を交互に入れ替える訓練をすることで、自律的にバランスを保つ方法を身につけていきます。
交感神経はスポーツ、運動で高まり、その後にゆったりとくつろぐことで副交感神経を高めます。
そのためスポーツを頻繁にするひとは、心のバランスを保ちやすいと言われています。
まとめ
タイの少年たちを瞑想で冷静なチームに維持させたこのコーチは、優れたコーチングができていたといえそうです。
同じ手法でリラックスして試合に挑めば、練習で身につけた力を最大限に発揮し成果を出せるかもしれません。
マインドフルネスは交感神経、副交感神経のバランスがおかしく、浮き沈みが激しいようなひとにも効果があるとされます。
うつ病の方にも効果があるとされるので、心当たりがある方は毎日少しずつでも実践されてみてはいかがでしょうか。
今回の少年たちが9日間恐怖を感じずに心を穏やかにいられた実績を信じて、取り組んでみれば、信じる者は救われる!かもしれませんね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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