日本相撲協会への引退届
image:モーニングショーより
2018年9月25日、貴乃花親方が日本相撲協会に、「引退届」を提出したことがわかりました。
これをもって親方を廃業するというものです。
親方と協会への土下座を天秤に掛けられたような「一門への所属」に対する条件が、廃業を決断させました。
この引退届について、同日に記者会見を行いました。
貴乃花親方の記者会見
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引退届の提出について大きく2点の理由を述べています。
1.告発問題について
2.一門への所属問題について
告発問題
貴乃花親方は、元横綱・日馬富士による弟子・貴ノ岩への傷害事件をめぐる告発状を、協会の対応に問題があるとして2018年3月に内閣府へ提出していました。
※提出した告発状
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この中での主な主張は以下の2点でした。
- 相撲協会の調査が中立ではない
貴ノ岩の主張が反映されていない - 貴乃花親方の弁明の機会が与えられず理事解任された
告発状は3月28日付で取り下げていますが、あくまで弟子の暴行問題の引責から取り下げたものだったと言います。
8月7日、日本相撲協会から弁護士の見解を踏まえたとする書面が届き、告発状は事実無根だったと結論づけられていたそうです。
このように事実を曲げられた状態では相撲協会にいられないと考えたようです。
一門への所属問題
協会が「一門への所属」しない場合に親方を返上すると決定したことも、貴乃花親方を追い詰める要因になったようです。
大相撲の一門とは、かつて出羽海、二所ノ関、高砂、時津風、伊勢ケ浜、貴乃花の6つありました。
2018年6月に貴乃花親方が貴乃花一門を離脱したことで、貴乃花一門が消滅、出羽海、二所ノ関、高砂、時津風、伊勢ケ浜の5つになっていました。
協会は7月、全ての親方はこの5つの一門に所属しなければならないと決定しましたが、貴乃花親方は一人だけ、所属先が決まらない状態でした。
いずれかの一門に入るための条件として、告発状が事実無根だったと認めるよう圧力があったと主張しています。
認めないと親方を廃業せざるを得ない
そのように強要されたと、親方は感じているようです。
追い詰められた貴乃花親方
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一門に入らなければ親方を廃業しなければなりません。
しかし一門に入るためには告発が事実無根と公的に認めなければなりません。
親方はまさに、両天秤にかけられ選択を迫られました。
この「一門への所属」という決定をしたこと自体が、日本相撲協会の貴乃花親方を辞めさせるための圧力そのものだと言う見方もできるでしょう。
事実無根と公的に認めるということは到底できないのです。
協会への完全敗北を宣言し、土下座して謝罪をするに等しい行為です。
弟子を守るどころか、貴乃花親方が虚偽申告をしたということを認めることになり、いったんは相撲界に残れたとしてもいずれは相撲界から去ることに繋がるでしょう。
つまり、どちらを選択しても、貴乃花親方は親方として相撲界に残る道は無かったのです。
それならばこれ以上名誉を傷つけない状態でいったん身を引き、別の形で相撲に関わっていく道を模索することを考えたのだろうと推測できます。
実際に、貴乃花親方は今後、子供たちに相撲を教える指導者への道を示唆しています。
一門に所属しないままで廃業になってしまうのか?自分たちはどうなるのか?という混乱の中では、弟子たちは稽古に専念できません。
貴乃花親方は、自身の進退、弟子たちの進退全てを総合的に判断して、「引退」という選択を選んだのでしょう。
弟子、世話人、床山たちは継承者である千賀の浦部屋に所属先を変更する意向を示しています。
突っ張り抜く選択はあったのか?
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貴乃花親方は、協会が折れるのを待ち、最後の最後まで、突っ張り抜く選択もあったのでしょうか。
正しいことは正しいことときちんと主張することは必要ですが、一本気な性格ゆえ、協会と壁を作ってしまった部分は否めません。
貴乃花親方は相撲人としては理想が高く尊敬できるひとですが、協会にうまく懐柔できる人間性では無かったのかもしれません。
業界や常識に対してぶつかってぶっ壊すというやり方もありますが、そこにはいつも、
「反目する人たちから目を逸らさない」
「人を納得させるに足る正論を堂々と主張する」
という態度が求められます。
そこに言葉の力を感じて、周囲の人間が「この人になら付いて行って大丈夫かな」と信用でき、徐々に味方が増えていくのです。
貴乃花親方の理事会で見せた態度は、それとは真逆のものでした。
目を逸らし、無言を貫くというものでした。
その行動が逐一マスメディアに報道され、世論の気持ちも離れてしまいました。
権力と戦うことは誰しも怖いものですが、だからこそ心の底から信頼できる戦友を味方に付ける努力を、まずはして欲しかった。
このやり方では協会を変えることが出来なかったことは、結果が自ずと教えてくれています。
まとめ
日本相撲協会は告発状が事実無根だったと認めるよう圧力をかけた事実を否定しています。
これまでの経緯を考えても、認めるはずはないでしょうし、二度と事実は分からないままなのかもしれません。
また「引退届」についても、「退職届」ではないため受理していないといいます。
協会には引き際に少しでも花を持たせてやるくらいの度量を見せて欲しかったとも感じる部分もありますが、これまでの協会と親方の関係性を考えると、やむを得ないのかもしれません。
相撲界に有り余るほど貢献してきたレジェンドの引き際としてはあまりに寂しい感じがいたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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