2019年4月から「Fish Sale」という新しいネットオークションの開始が計画され、ザワついています。
魚釣りはたまにやりますが、港の漁師さんにさばいてもらって持ち帰ったり、その場で食べたりと様々です。
家庭で食べきれないほど釣ってしまった分は友人筋に配ったり、魚屋さんに買い取ってもらったりという感じだと思いますが、「Fish Sale」で狙っているのはこの余剰分を売買する場をつくることです。
あくまで個人が趣味で釣ったものの余りをオークションという形で売買することを目的としています。
「必要な魚を、必要な場所へ」という流れが作れればフードロス対策になる画期的な仕組みだと「Fish Sale」は提唱します。
そのビジネスモデルをみれば確かに面白いんですが、果たしてそのデメリットと懸念点は何があるのでしょうか?
この記事では以下のような内容で書いています。
- 出品者、落札者、Fish Saleそれぞれのメリット
- メリットに隠されたデメリットとは?
- 最大の懸念点
- 絶滅危惧種売買の危険性
- ネットの反応と乱獲の危険性
- 誰に使ってもらうビジネスなのか?
出品者、落札者、Fish Saleそれぞれのメリット
image:Fish Sale
出品者、落札者、そして売買の場を提供する「Fish Sale」、それぞれにとってのメリットを箇条書きにしてみました。
出品者のメリット
・出品料無料
・余った魚を捨てずに換金できる
落札者のメリット
・珍しい魚を購入できる
・市場が休みでも買える
Fish Saleのメリット
・落札金額の10%を徴収
また以下がFish Saleが提供している説明動画ですのでご覧ください。
こうして眺めると「三方良し」のビジネスモデルのように思えますが…
その裏にはデメリットと、大きな懸念点が横たわっています。
メリットに隠されたデメリットとは?
image:Fish Sale
落札者(業者)にとっては “魚を仕入れられなかった補填ができる” ということが “うり” だとうたっていますが、本当に適切に補填できるのでしょうか?
ネットオークションという仕組み上、市場の競りで買うのとはわけが違います。
この仕組みを補填に使いたいと考えている方には「起こりうるタイムロス」についてよく考えていただく必要があると思います。
釣ってから出品(出品者)
→ 入札(落札者)
→ 出品期間後に落札(落札者)
→ 入金と送付先連絡(落札者)
→ 梱包と発送(出品者)
→ 届くのは翌日以降(落札者)
これがおおまかな商品を手にするまでの “ネットオークションの流れ” です。
メルカリのように “即落” できるのなら待つ必要は無いのですが、「オークション」をうたっている以上は出品期間がありますので、落札まで出品期間の終了を待たないといけません。
出品期間が短すぎれば入札数が少なく落札額を吊り上げられないので、欲を出したひとがレアな魚ほど出品期間を延ばす傾向になることは十分に予想されます。
システムで1日までという上限値を設けているのかもしれませんが、この辺りは実際のシステムをどう仕上げてくるのかに注目したいところです。
また、落札できても競りと異なり自分で持ち帰れるわけではありません。
出品者が梱包し、配送業者に委託して、それから届くまで待つため早くても翌日以降にはなるはずです。
こうした様々なタイムラグを考えると、果たしてどの程度仕入れの補填をきかせられるのかどうかという感じです。
欲しい魚があっても、すべて諦めなければいけないことが増えそうではないでしょうか?
“その日仕入がうまくできなかったから補填” というのなら、ほぼ意味が無いはずです。
最大の懸念点
最大の懸念点は鮮度です。
この仕組みの欠点は、CtoC(個人と個人の商取引)、CとB(個人と企業の商取引)が中心になるため鮮度対策がしっかりとされないという危険性が永遠に消えないことです。
個人がメインターゲットなので、当然鮮度管理ができる出入りの配送業者があるわけではありません。
保冷、梱包がきちんとされていなければ新鮮な魚が届けられません。
クール宅急便を使わずに氷だけで配送する場合は特に気になりますね。
落札者が漁場から遠ければ、配送日数が掛かるので鮮度が落ちてしまいます。
個人が配送距離に応じて、鮮度対策を徹底できるのでしょうか?
これは食べる消費者の健康に関わる重大問題です。
CtoCで売買すると間にプロの目利きが入らないため、ちょっと匂っているけど食べちゃえという事案が多発することが予想されます。
「せっかく高値で買ったし」という、品質の評価に対するバイアスもかかってしまうでしょう。
「生もの x ネットオークション」という組み合わせがこれまでなかなか手を付けられなかったのは、この健康被害が怖いからです。
有毒魚の問題もあります。
「Fish Sale」が食品衛生法など日本の法律に抵触する可能性について、2017年に厚生労働省の医薬生活衛生局食品監視安全課水産安全係に確認した際は「問題ない」と回答をもらったということです。
しかし本当に厚生労働省が、参考とする前例のない「生もの x ネットオークション」の問題点を理解したうえで判断で来ているのかは甚だ疑問です。
「Fish Sale」はあらためて大阪市保健所、水産庁、消費者庁、環境庁、警視庁、大阪府警に問い合わせしていますが、いったん厚生労働省で「問題ない」と判断してしまったものを覆しにくいという、最悪の判断基準だけは避けてもらいたいものです。
なお「Fish Sale」はこの責任を、利用者に丸投げしています。
有毒魚について
「毒のある魚の写真などを掲載します」
写真をみて判断したうえなので、あとは知りません…
と読めます。
サイト運営者とは必ずこういう保険を効かせるものだとは思いますが、それで十分に事故を防げるものなのでしょうか。
起こる問題が、古物でニセモノを掴まされるというレベルのことでは済まされない “生死の問題” だというのに?
絶滅危惧種売買の危険性
image:ギベオン – 宇宙・地球・動物の不思議と謎
「Fish Sale」は絶滅危惧種の乱獲・売買などの責任についてもコメントをしています。
慎重に出品していただけることかと思いますし、
出品の際には規約に同意するチェックボックスで、注意喚起も行います。
また、落札者側にも注意喚起を促す文言を入札時に表記させます。
この点について2月14日時点で各省庁からもらっている回答は以下のようです。
・種の保存法に該当する魚を出品した者、落札者に対して警察が捜査を行い、刑罰の可能性もある。
・運営側の管理責任としては、運営会社に該当ページの削除を行ったり、該当者の抹消など。
レッドリストなどを掲載してもらった方がいい。・削除要請に応じなかったり、捜査の結果ほう助の疑いなどがあると(運営側が)共犯となる可能性もある。
ケースバイケースでどうとも言えない。
これもまた利用者に丸投げしている内容になりそうですが、禁止物の売買という観点では象牙をヤフオクで売買するようなケースと近いことなので、「Fish Sale」に限らずネットオークション自体のモラルになってくると思います。
メルカリでも現金を出品するなど違法な出品をスレスレで行う行為が多発したので、必ず同じようなことが行われるでしょう。
出品を監視し、落札者に渡るまえに水際でストップさせることは、「Fish Sale」が必ずやらなければならない努力だと感じますが、果たしてどこまで努力するのかどうか。
結局は努力というものは数値化できないものなので、開始してみてそうした事例の統計を出してもらうしか知りようがないのかもしれません。
ネットの反応と乱獲の危険性
ネットの反応は2019年2月半ばの時点でほぼ批判的なものであふれています
遊漁で釣った魚をマーケットに出すというは絶対にやってはいけない。大量に釣れて困る前に釣りをやめるとかリリースすること。
釣った魚を気軽に出品!全国の鮮魚をオークションで売買「Fish Sale(フィッシュセール)」4月1日(月)サービススタート!-https://t.co/tqrO1trHXm
— 片桐孝憲 (@tarbrick) 2019年2月7日
えぇ…売買は漁業権が絡むんじゃないの?
そもそも個人が勝手に釣った魚を好きに売れる様にしたら密漁の温床になるし水産資源の管理が出来ないじゃん釣った魚を気軽に出品!全国の鮮魚をオークションで売買「Fish Sale(フィッシュセール)」4月1日(月)サービススタート!https://t.co/AcdXqVBVRM
— アタボー (@ataboh) 2019年2月7日
現在の状況
・FishSaleサイトのお問い合わせにて、安全面についての確認中
↓
・他サイトで鮮魚販売には許可がいることを知る。
↓
・農林水産省にFishSaleのURLを送付し、法律に抵触するのではないかと問合せ中 (Now)※続報は待ってね#fishsale
— AtheOS (@os_athe) 2019年2月7日
次はYahoo!ニュースのトップコメントです。
「慎重に出品していただけることかと思いますし、出品の際には規約に同意するチェックボックスで、注意喚起も行います。また、落札者側にも注意喚起を促す文言を入札時に表記させます」って、出品者と落札者に責任丸投げする気満々じゃないか。
規約読んで同意したよね?
ウチは取引の場を提供しているだけで、何の責任もございませんって心の声が滲み出てますよね。
鮮度を考えたら怖くて買えないが一番最初に思ったこと。
クール宅急便とかの費用考えると普通に店で買ったほうが安全だし鮮度も間違いない。
漁業権とかの問題もあるだろうしサイドビジネスしたい釣り人は期待してるだろうね!
でも自分は怖いから買わない
そもそも個人の釣った得体の知れない魚を買おうと思う人はそう多くはないと思います。
食品は直接口にし命の問題に直結するものですから、衣類や電化製品などの生活用品と同じように個人間での売買が成り立つとは思えません。
失敗は絶対に許されないし、取り返しのつかないことになりますからね。
たとえ個人間売買であったとしても、魚は魚のプロである漁師から、野菜は野菜のプロである農家から買うと思います。
高レベルの信用が担保されない限り、個人間取引に手を出そうとする人はいないと思いますけどね。
自分も、考えたなぁ。釣った魚 売れれば良いなぁって。。。
でも、難しい問題が一杯あります。
また、魚の〆方もありますし、リスクと送料考えるなら、最寄店で、買った方が断然に安いです。
やるなら、詰め合わせセットでお得感を出すしかないですよね。登録ユーザーは、承知で、乱獲に入ると思いますよ。詰め合わせセットで、何円とか。。。
稚魚も捕獲されて、売られていくのかな?
そんな輩と、人間 楽して金を取るという性格もあるので、密猟など、いろんな事件も増えそうだな。
伊勢海老や、鮑も来そうですね。
自分はガチガチの超釣り人だけど、これはやってはダメ。絶対に。自分で食べられない分はちゃんとリリースしましょう。じぶんの大切な趣味が無くなりますよ!
あと半分業者が出てくる。となると最悪釣り自体が禁止する地域も出てくると思う。絶対にダメ!
送料を考えると値段が高くつく、という観点も重要ですね。
それでも欲しい魚って、どんな魚?
ですよね。
また魚釣りを楽しんでいる人ほど反発している印象もあります。
食べられないほどの魚を釣らない
大切な心掛けだし、実はこれが真理なのかもしれません。
本当に魚でフードロスを実現するなら、売買ではなく乱獲しないことです。
そこにビジネスを入れるとかえって乱獲を誘発するのではないのでしょうか?
なんだか「Fisha Sale」が提唱していることが楽して金を稼ぐための綺麗ごとばかりのような気がしてきました。
誰に使ってもらうビジネスなのか?
様々な問題をはらんでもサービスは開始するのかもしれません。
ではその時、いったいどういう人たちに使ってもらうことになるのでしょうか?
誰に使ってもらうことを想定したビジネスなんだろうと改めて考えてみました。
好漁場に足を運べる “時間” と “お金” と “手段” を持ったひと
初めのうちは目新しさで飛びついても、すぐにやらなくなるような気がします。
なにしろ配送をその日にやらないと鮮度が落ちるので面倒臭い。
そこまでしてお金が欲しいひとたちではないはずです。
それよりは近所の方々と宴会をして良い時間を費やすのでは。
老後に一日中魚釣りをしているひと
年金暮らしで楽では無くサイドビジネスとして飛びつくことは考えられますが、そういう方々が果たしてスマートフォンのアプリを駆使するのでしょうか。
また好漁場に足を運ぶほどのゆとりはなく、近所の川で釣っている程度なら釣れる量も質もたかが知れています。
普段は仕事をしていて休日だけ釣りを楽しむひと
現実的にはこの釣り好きの仕事人がメインターゲットになってきそうですが、週5日仕事をして、やっと大好きな釣りに没頭したあとで、配送に時間をかけたいものでしょうか。
普段収入があって、それでも小銭を稼ぎたいかどうかはひとを選びそうです。
あくまで個人の趣味人がターゲットと言っていますが、個人の釣り好きがどのくらい乗っかってくるのかは、現段階ではかなり微妙です。
どういう魚が、どういう金額でやり取りされるようになるのかによっては、オイシイと思うひとが増える可能性は秘めています。
しかしオイシイ商売につきものなのはそういう業者です。
なにしろ魚というのは移動費などを入れなければ原価ゼロで手に入るものと思えば、飛びつかない人間がいないはずがありません。
実は付加価値が高いのも魚の魅力なのです。
悪知恵をもった業者が高値がつく魚を乱獲し、落札金額の吊り上げなどを行うようになると一気に存在意義が廃れていきます。
鮮度に対しては利用者任せ、こうした業者の監視を徹底できないようなら、もう場を提供する意味が無いでしょうね。
まずは4月に向けて、法的に認可されるのかを見定めていきたいところです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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