ゴルフ、してますか?
僕の父親はまさに団塊の世代ど真ん中、毎週末にゴルフ接待をして、趣味はゴルフ、麻雀、競馬というひとです。
子供のころにはよく「打ちっぱなし」(練習場)に連れていかれて、ひと籠分くらいのボールを打たせてくれました。
今思えば、父親が子供の面倒をみるという建前で、自分のゴルフ練習に連れて行ってただけだと思いますけどね(笑)
下手っぴで、ダフリばっかりで大抵は面白いと思えませんでしたが、たまにスコーンと飛ばすと気持ち良かった記憶があります。
「上手くなったら、いつかコースに出してやる」
そう言ってくれていたのが懐かしいです。
もう父親は身体を壊してプレーできなくなりましたし、僕もその後ゴルフはやらずじまい。
一緒にフィールドに出てプレーをしたいと思っていた父親の気持ちを考えると、ちょっとショッパイ気持ちになります。
父親が元気なうちにゴルフを覚えて、一度くらい一緒にプレーしてあげたかったな。
大人になり、会社員になって、ゴルフをしている同僚もいたのに、どうして僕はゴルフをしようと思わなかったんだっけ?
ゴルフが嫌いなわけじゃない。
「みんなのGOLF」はあんなにプレーしたのに。
単純な理由だと、他にもカメラなどの趣味があったしなぁ。
あとは、同僚に誘われた時に断っていたのを思い出しました。
一番の理由は、道具を揃えるのになかなかのお金がかかることで躊躇ったこと。
ビギナー用のセットでも5万~6万くらいはします。
他にもウェアやらシューズやらを揃えれば10万は越えそうです。
上司との接待で頻繁にプレーするならまだしも、友人からの誘いが今後もあると限らない。
あとは、同僚は営業系で取引先とのゴルフ接待もあり、腕前の差は歴然…。
そう考えると、結局踏み出すきっかけも失くしていったという感じでした。
それにしても、なんでゴルフ場ってあんなに郊外にあるんでしょうね。
遠くて行きづらいなぁっていうのもありますよね。
理由は考えてみるとわかります。
平らで、周囲に余計なものが無くて、自然豊かな場所がゴルフのフィールドにピッタリだからです。
あとは都心や駅の近くにあれだけの広大な土地をゴルフ場にしても、費用対収益が釣り合わないからでしょう。
そんな郊外のゴルフ場が、いまどんどん倒産しているそうです。
ゴルフ場の倒産が急増中
2018年5月30日に、こんなニュースが報じられました。
全国でゴルフ場の倒産が急増している。今年4月時点で既に13件に上り、リーマン・ショックがあった2008年を上回るペースだ。
出典:SankeiBiz
あれだけの広大な土地を維持管理するだけでも、かなりの費用が掛かっているはずです。
でも、原因はそれだけでしょうか?
気になったので、ちょっと真剣に調べてみました。
ゴルフ場と、ゴルフ場利用者の数をグラフ化してみました。
ゴルフ人気が高まった1957年から2015年までの統計データをもとにしています。
青い棒グラフと右の数値が「ゴルフ場の数」、オレンジの線と左の数値が「ゴルフ場の利用者数」です。
このグラフをみていただくと分かる通り、ゴルフ場は2000年代までうなぎ登りに増え続けていっています。
ゴルフ場利用者(ゴルフプレーヤー数)はというと、1992年をピークに下降線を辿っています。
1998年には、ゴルフ場利用者とゴルフ場の需給関係は完全に逆転しています。
どうもこのゴルフ人口の大幅な減少が、ゴルフ場倒産の原因となっているのは間違いなさそうです。
では次項では、このグラフを読み解くために、どうしてゴルフ場利用者が増加し、激減していったのかや、ゴルフ場が何をきっかけに激増していったのかを、経済と絡めて考えてみましょう。
ゴルフ場と経済状況からみるゴルフの盛衰
以下のグラフは、上で紹介したグラフに、いくつかの情報を追加したものです。
追加している情報はこういったものです。
スマホだとちょっと小さいかもしれず申し訳ありませんが、横向きにすると少し見やすいかもしれないです(^^;
- 経済状況(下部の緑矢印)
- ゴルフ場の増減期間(下部の青矢印)
- 経済停滞要因(グレーのコメント欄)
- ゴルフ場の数と利用者数の需給バランス異常時期(ピンクのコメント欄)
- ゴルフブーム(黄色いコメント欄)
- 注目のポイント(赤丸)
- 時利用者数のピーク(上部の白抜きコメント)
まずは目で追いながら、ぼーっと眺めてみてください。
それでは、ここからは年代を追って、この図から分かることを読み取っていきましょう。
1957年~1969年ごろ
1957年に日本で開催された「カナダカップ」で中村プロが個人、団体で優勝したことで、ゴルフ人口が一気に拡大しました。
いわばこれを「第1次ゴルフブーム」とします。
(赤丸左から1番目)
時は高度経済成長期真っただ中です。
裕福になった家庭を中心に、大人のスポーツとして広まっていったことが伺えますね。
1970年ごろ~1979年ごろ
ゴルフ人口が一気に広がり、そのままの勢いでゴルフ場開発が進んでいきますが、1973年、1979年にオイルショックによる不況を迎えます。
そこでゴルフ人口の増加はいったん停滞をみせます。
(赤丸左から2番目)
しかしゴルフ場開発は継続されたため、ここで需要に対してゴルフ場の供給過剰が起こりました。
この時期を「第1次ゴルフ場開発ブーム」と名付けましょう。
かつ、需給バランスの釣り合わないことから「第1次バランス異常期」とでも名付けましょう。
ただしこの時の不況は短期間だったことと、続く貿易黒字でインフレ経済下にあり、再びゴルフ人口は増加を始めています。
また、この1970年代は、ベビーブームで産まれた団塊の世代が20代の働き盛りになり、「接待ゴルフ」が盛んにおこなわれるようになったことも大きな要因だろうと思います。
1980年ごろ~1989年ごろ
出典:パーゴルフ
「第2次ゴルフブーム」が到来します。
(赤丸左から3番目)
1977年に樋口久子プロが全米女子プロで優勝したことを皮切りに、1987年は岡本綾子プロが米国女子ツアーで賞金女王になりました。
また、1990年に全米オープンで青木功プロがあの伝説のジャック・ニクラウスと戦い2位という成績を残しました。
その後も、尾崎将司プロ(ジャンボ尾崎)、中嶋常幸プロといった人気と実力を兼ね備えた選手が続々と登場し、ゴルフ人口の拡大に貢献しました。
また、1987年ごろ~1991年ごろは「バブル好景気」もあり、高額なゴルフ会員権が飛ぶように売れ、盛んに「接待ゴルフ」が行われるような時代でした。
このころは「人気」と「金」が双方揃っていた、まさにゴルフの黄金期だったと言えますね。
1990年ごろ~1995年ごろ
ゴルフ人気は続きます。
(赤丸左から4番目)
この赤丸は少し大きめにとってありますが、「第2次バランス異常期」を表しているためです。
ゴルフ人口(需要)が圧倒的に、ゴルフ場(供給)を超過してしまっています。
この時期もかなりの勢いで開発が進んでおり「第2次ゴルフ場開発ブーム」と名付けましたが、追いつかなったんですね。
それでもバブル好景気に支えられ、高額な会員権、プレー代が当たり前になりました。
ところが、1991年についにバブルが崩壊します。
景気は一気に低迷し、それまで増加し続けたゴルフ人口は、1992年をピークに減少傾向に転じます。
ここからが大きなポイントとなっています。
ゴルフ人口のピークを迎えてもなお、ゴルフ場は増え続けているのです。
1992年以降も青い棒グラフが増加しているのが分かりますでしょうか。
ゴルフ場の開発は広大な土地の取得だけではなく、開発許可の取得など法的な手続きもあり、長期スパンになります。
バブル好景気を背景に、巨大投資でゴルフ場開発を続けていたため、既に着手していた流れを容易に止めることができなかったのだろうと思います。
ゴルフ人口が減少傾向とはいえ、この当時はまだ「先のことは分からない」という楽観視もあったのかもしれませんね。
1996年ごろ~2003年ごろ
世はデフレ不況に突入します。
お金の出し渋りが当たり前になり、高額でダイナミックな遊びより、身近で手軽に過ごす「安近短」がレジャーの常識に変わっていきました。
そうした世相を背景に、ゴルフ人口は減少を続けました。
このころにはゴルフ業界も、ゴルフ人口減少に危機感を覚え、ゴルフ場開発は停止しました。
しかし、時すでに遅しだったのです。
2004年ごろ~2010年ごろ
出典:日刊スポーツ
そんなゴルフ低迷期に綺羅星のごとく現われたのが、宮里藍や石川遼といった、新世代のゴルファーたちでした。
彼らの活躍で、再びゴルフ人気が戻ってきました。
これを「第3次ゴルフブーム」と呼びましょう。
(赤丸左から5番目)
ところが、その腰を折るように2008年に「リーマンショック」が起こります。
輸出大国だった日本は、世界同時株安と超円高による影響で大打撃を受けてしまいました。
メーカーは生産拠点を海外へ移し「産業の空洞化」が起こり、多くの中小企業が倒産に追い込まれました。
せっかく新世代が盛り上げてくれたゴルフ人気は、冷や水を浴びせられたように静まってしまい、再びゴルフ人口は減少に転じました。
2011年ごろ~現在
2011年には、忘れもしない「東日本大震災」が発生しました。
世間は節約ムードが漂い、ますますお金の貯蓄傾向が強まり、ゴルフ人口の減少が続いています。
でも、現在のゴルフ人口減少は、コストが高いためだけが理由でしょうか?
次項からは、現在ゴルフ人口が減っている原因について考えていきましょう。
ゴルフ人口が減っている理由
ゴルフ人口が減る続けている現状がわかりましたが、その原因は何でしょう?
以下に日経新聞の記事を抜粋させていただきました。
性別と年代別の構成比をみると、さらに衝撃的な数字がみえてくる。年代別の構成比は60代が23.1%、70代は29.7%だった。60代、70代を合わせた52.8%を上回るのはゲートボール(63.5%)だけ。ゴルフをする人の半数以上をこの年代が占めており、15年(48.4%)に比べて一段と高齢化が進んだ。また、女性の比率は13.7%で、前年に比べ0.8ポイント減った。性別や年齢を問わず楽しめるのがゴルフの魅力にもかかわらず、まだまだ女性の比率が低いのが現状だ。
出典:日本経済新聞
このように、ゴルファーの世代の過半数が60代以上と高齢化しており、若年層の減少が著しいことがわかります。
なぜ若年層に裾野が広がらなかったのでしょうか?
その原因はこうしたことが考えられます。
- 道具を揃えるための費用が高額で敷居が高い
- プレーの費用が高い
- 郊外のゴルフ場までいく自動車を持っていない
- 企業の接待交際費が減り接待ゴルフをする機会が減った
- 他にやりたいレジャーが増えた
安近短がレジャーの常識になっていった背景は既にお話しましたので、ここからはゴルフにおける内訳という感じですね。
道具代は先にお話ししたように、10万円くらいは掛かってしまいそうです。
プレー費用は分かりづらいと思いますので、下記文献から抜粋させていただきます。
例えば大都市近郊の場合、平日のパブリックゴルフ場費用は昼食と18ホール(1ラウンド)キャディ付きプレーで総額10,000円くらいから、セルフプレーで8,000円くらいから。同じ平日の会員制ゴルフ場ではキャディ付きプレーで12,000円くらいからです。土日祝では平日の1.5倍くらいといったところです。
出典:気になるゴルフ基礎知識
これは平均値でしょうし、地方の方ではもう少し安くプレーできるようですが、都市圏では8000円~10000円は掛かるようです。
テレビゲームやショッピング、映画といった安近短で遊ぶ若者にとっては、なかなかの敷居の高さではないでしょうか。
また、若者の自動車離れも大きな要素ですね。
「自家用車は維持費がかかる」
「電車でどこでも行ける」
というマインドの変化から、マイカーを持たない若年層が増えているようです。
ゴルフのために、レンタカーやカーシェアリングをするのは、返却のこととか考えるとちょっと面倒ですよね。
その辺の手軽さは、自家用車にはかなわないのではないでしょうか。
企業の交際費も年々削減されています。
2018年は多くの企業が過去最高益を出すほどに儲かっていますが、交際費は削る傾向にあります。
つまり「接待ゴルフ」も金食い虫として敬遠されてしまいました。
次の不況に備えて内部留保をしている企業が多いのも理由の一つではないでしょうか。
ここまで原因について分析をしてきましたが、若年層ということを考えれば、なんやかんやと言っても、ゴルフ以外にやりたい趣味が増えたり、自分の時間は自分のために使いたいという考え方の変化が実は一番大きな理由だったりしないかなと思っています。
「単純に興味が無い」
「時間やお金を割くほどの魅力を感じない」
という感じです。
テレビゲームや他の多種多様なスポーツに関心が移ってしまったのではないかと推測しています。
お金が掛かろうが、自家用車が無かろうが、ゴルフにもっと魅力を感じれば、やりたいと思うひとは増えるはずです。
「第3次ゴルフブーム」(宮里藍や石川遼の活躍)のころのゴルフ人口の増加が、その確たる証拠でしょう。
世は既にデフレ不況真っただ中で緊縮緊縮でしたが、そうしたきっかけだけでもゴルフ人口が増えたわけですから。
まとめ
バブルの時代に大量に開発したゴルフ場の劣化、陳腐化がすすでおり、そろそろ大規模な設備投資が必要です。
設備投資で若いゴルファー向けにリニューアルし呼び水にもできるはずですが、残念ながら既に資金難のゴルフ場が多く、設備投資に回せないという現状です。
預託金の償還ができず廃業するというケースも出てきており、訴訟問題に発展しています。
預託金については以下を参照してください。
ゴルフ場の会員権の1つの方式を指します。希望するゴルフ場の会員に、加入を希望するゴルファーが預託金をそのゴルフ場に預け、ゴルフ場がその預託金を原資にゴルフ場の開発を行うというのが一般的です。この預託金は基本的に無利子で据え置かれた上で10年から20年程度の機関を経て、その据え置き期間後に会員に償還されるというのが一般的な流れです。また会員はその要求をする事が出来ます。
出典:じゃらんゴルフ
また、2016年のリオデジャネイロオリンピックでゴルフが採用されましたが、残念ながら盛り上がりに欠けており、日本のゴルフ産業の起爆剤とは成りえていません。
原因は日本人選手が一人もメダル取得出来なかったこともありますが、当時広がりをみせていたジカ熱の影響で、世界ランク1位のジェイソン・デイ選手やローリー・マキロイ選手、日本の最有力候補だった松山英樹選手といった多数の強豪選手が出場を辞退したことも大きな影響だったでしょう。
ここでゴルフ業界は巻き返したかったところが、運にも見放された感じかもしれませんね。
2020年の東京オリンピックに向けてどこまでイメージ戦略と、若年層の開拓ができるかに掛かっています。
消費税10%が待っており、デフレ脱却はまだ先になりそうです。
「ゴルフはもっと安価に手軽に楽しめるよ!」という業界を上げての新しい提案が欲しいところですね。
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