サンマのここ数年の高騰
庶民の魚、大衆魚として親しまれてきたサンマ。
近年どんどんと値上がりをしていることはご存知かと思います。
その背景には、サンマ自体の量が減っているということよりも、中国・台湾の爆漁が主な原因です。
これまではあまり食べられてこなかったサンマを何故急に食べ始めたのでしょうか。
まずはサンマの現状から説明していきましょう。
本記事は『モーニングショー』でのデータを1次情報として画像などを編集、再構成しておりますのでご了承をお願いいたします。
その他の画像や情報については別途出典を明記しております。
2018年の初競り
釧路港の初水揚げの漁獲量は700kgで2017年同期のなんと1/3まで減ってしまいました。
数が少ないため初競りの値段は1kgで3万3000円。
これは過去最高の高値を付けています。
2016年の1kgで2万9000円が過去最高値でした。
2017年はサンマの量自体が多かったせいかいったん落ち着いていたそうですが、この調子だと、年々最高値が更新されていく傾向にあると言えそうです。
売値は1匹700円。
札幌の初売りご祝儀相場というものがあるので高値で売られているという側面がありますが、この価格だと関東で食べるサンマもバカ高いことになります。
大きさも小ぶりで、ちょっと手が出ない印象ですね。
東京都内の価格は?
スーパーアキダイ(練馬)では、2017年の4月から8月の漁に出る前は、2016年の冷凍サンマを販売していたため、1匹100円程度で販売していました。
2017年8月から漁に出るため生サンマが出回ります。
2017年も不漁だったため、最高で398円で販売していました。
それから徐々に漁獲量が増えていったため価格は下落傾向になり、2017年11月ごろから夏季の漁の残りが冷凍サンマとして出回ることになるため、1匹150円程度で販売していました。
それでも2016年より50円高かったわけですね。
2018年8月からまた不漁になるため、400円から500円ほどでの販売になってしまいそうだということです。
2017年のように、徐々に漁獲量が増えてくれば価格が安定してくると思いますが、それでも高いでしょう。
そうするとまた冷凍サンマも高くなるため、もしかしたら11月ごろから200円くらいで出回るようになるのかもしれませんね。
スーパーアキダイでは、安い時代は生サンマ1匹10円くらいで売っていたそうなので、まさに40倍から50倍という高騰ぶりです。
この調子だと2019年以降もどんどん高騰するかもしれません。
生サンマと冷凍サンマの違いは?
生サンマと聞いて「刺身のこと?」と勘違いするひともいますが、漁をして冷凍にしていない状態のサンマのことを生サンマといいます。
高速道路ができて漁をした早朝の時点で都内まで輸送できることから、生のままで販売ができるようになりました。
生サンマは当然ながら、焼いても、刺身にしても脂が乗っていて美味しいです。
焼いた時の内臓も好きな方にはたまらないでしょう。
ところが冷凍した昨年のサンマは、美味しく食べられる方法は焼きサンマくらいのものです。
刺身は解凍時すると水っぽくなって美味しくないし、焼いた時の内臓も旨味が無くなって食べる気がしません。
鮮度というのはいかに大切かということですよね。
漁獲量が大幅に減った原因
大きくは2点あります。
1.回遊するエリアが東へ寄っているため
サンマは夏から秋にかけて北太平洋の公海(日本・ロシアのEEZ)を回遊する魚です。
回遊して日本のEEZに入ってくるころには脂がたっぷり乗った状態まで成長しているので、美味しいサンマが食べられるというわけです。
EEZとは?
国連海洋法条約では、沿岸国は自国の基線 (海)から200海里(370.4km<1海里=1,852m>)の範囲内に排他的経済水域を設定することができるとしている。
設定水域の海上、海中、海底及び海底下に存在する水産・鉱物資源並びに海水、海流、海風から得られる自然エネルギーに対して、探査、開発、保全及び管理を行う排他的な権利(他国から侵害されない独占的に行使できる権利)を有することが明記されている。
出典:Wikipedia
この回遊するエリアが全体的に東へ寄ってきているため、日本のEEZに入ってくる量自体が減ってきています。
ただしこれは調査時点のデータなので、しっかり科学的根拠に基づいたものではありません。
つまり今後また日本のEEZに寄ってくる可能性もあるということです。
2.公海で爆漁されてしまっている
中国・台湾が公海で爆漁してしまうため、日本のEEZに入ってくる量が減ってしまっています。
もともと漁獲量というのは中国・台湾が獲る以前から変動するものでしたが、爆漁がはじまってからの日本の漁獲高の激減は明らかです。
これは「獲らない」のではなく、「獲りたくても獲れない」ことを表しています。
日本はピーク時は35万トン以上を獲っていましたが、2017年はとうとう8万5千トンまで減ってしまいました。
その代わり、2017年の台湾の漁獲量は日本を超えています。
時期をあわせるように中国も漁獲高を急速に伸ばしており、この2国の公海での爆漁が日本の漁獲高減に大きく影響を与えていることが最大の原因と言ってよいでしょう。
なお、日本と台湾の漁船、漁の仕方にも大きな違いがあります。
日本の漁船は20トンから200トン級と小ぶりなものが主流です。
日本は鮮度(味)を重視するため、小ぶりの船で繰り返し漁をしています。
こちらが日本のサンマ漁をする漁船(イメージ)です。
対する台湾の漁船は1000トン級が主流です。
この1000トン級の船内には800トンを保管できる冷凍庫が設備されており、冷凍した状態で持ち帰ることが前提になっています。
こちらが台湾のサンマ漁をする漁船(イメージ)です。
これが船内です。
大容量の冷凍庫を備えています。
なぜここまで違うかといえば、台湾から太平洋公海まで獲りにくることで効率的に獲りたいという思惑があります。
5カ月間滞在しながら一気にドカッと獲り、冷凍しておいて、回収する運搬船がきて台湾にピストン輸送をするというやり方です。
そのため、脂が乗る前のサンマを大量に獲ってしかも冷凍して持って帰ることになるため、日本で食べるサンマよりは圧倒的に美味しくはありません。
それでも「日本食ブーム」の波に乗って、サンマを大量に獲っています。
中国が急に獲り始めた理由
中国のサンマ漁は過去6年で20倍の漁獲量になっています。
まさに爆漁状態が続いています。
中国の人口とこの増加率でみると、あと10年でサンマが絶命危惧種になるのではと思えてきます。
この爆漁の背景は主に2点あります。
1.中国政府が出した漁業政策
2013年に以下のように発表しています。
近海より遠洋漁業をしなさいよ、という政府のお達しというわけですね。
出展:中国政府ホームページ
「中国近海での過度の漁獲と環境汚染が深刻化」
出展:中国政府ホームページ
「遠洋漁業に力を入れる計画」
2.日本食ブーム
中国国内に日本料理店(中国人経営)が急増しており、日本食のひとつであるサンマを好むようになってきた。
また「中国の福山雅治」と呼ばれる歌手の歌にサンマが入っていたことも後押ししたと言われています。
周杰倫さんという台湾出身の方で「七里香」という大ヒット曲に入っています。
こちらがワイルドな千鳥のノブさん…周杰倫さんです。
「秋刀魚の味は猫もあなたも知りたいだろう」
というフレーズで、
「秋刀魚って美味いらしいぜ?」
と反響があったとか。
中国の安いスーパーでは1匹33円くらいで売っているらしいので、中流、富裕層にとっては爆安価格でしょう。
日本は負けっぱなし?
出展:時事ドットコム
このままだとジリ貧なので、2019年から日本も公海での漁を始めたいという希望を持っています。
ところが日本では200トン以上のサンマ漁船を認めていません。
また頭かたいお役所仕事?と思いがちですが、そうではありません。
獲りすぎるとサンマ自体が減ってしまうため、漁獲量を制限する目的でそう決めています。
そのため公海に出る回数が増えれば効率が悪く、結局価格は上がってしまうことになります。
日本は長い歴史の中で漁獲量を自粛してまで食文化を維持してきたのに、中国や台湾はあっさりとその努力を台無しにしてしまうところには怒りを禁じ得ません。
彼らにしてみれば「うーん、公海で獲る権利は等しくあるんだから知らん!」ということでしょうけど。
そこであわせて他国の獲りすぎを制限しようという動きも行っています。
日本で獲れないから、という本音は隠しつつ、サンマ資源を守るぞ!というスローガンですね。
2018年7月3日に日本で開催された北太平洋漁業委員会で、日本からサンマの漁獲量を制限する提案を出しました。
主なサンマ漁を行う8か国(日本、USA、韓国、台湾、中国、カナダ、バヌアツ、ロシア)が参加。
日本、USA、ロシア、カナダ、韓国、台湾は賛成しましたが、中国、バヌアツは反対にまわり、提案は却下されてしまいました。
反対の理由は「科学的根拠がない」というものです。
「日本の漁獲量のほうが多いではないか?」と言われたら確かにぐうの音もでません。
しかし、中国の本音も「もっともっと獲りたいから」というものでしょうから、今後継続して調査をして、その「科学的根拠」を提示して、理解していただくよりほかはないと思います。
食べものを粗末にする飽食日本にも問題は?
高値になっている生サンマ。
100円の大衆魚と思っているのだから、500円ではさぞ売れ残るでしょう。
売れ残った分は、冷凍して缶詰にでもすればいいと思いますよね。
でも生サンマを関東まで冷蔵で輸送してくる段階で鮮度は落ち続けているわけで、さらに1日氷漬けで販売していたら、それはもう夕方には鮮度がガタ落ちです。
その売れ残りを冷凍して缶詰にするというのは、ちょっと気持ち悪いかもしれません。
良くて加熱販売ですがこれも消費期限は長くはありません。
結局、閉店後に廃棄するか、飼料にしてしまうわけですが、捨てるくらいなら閉店直前に1匹50円で売りさばけばいいのに、なんてことを考えてしまいます。
でもそうするとまた問題が発生します。
今度は閉店前までほとんど売れないという現象が起こります。
閉店間際に半額で販売する店は多くありますが、半額待ちのお客さんで閉店前が一番賑わうなんて現象が結構あるくらいです。
500円のサンマが50円で売られるなら、鮮度が落ちているとしても大半が待ってしまいますよね。
ここに食べものを粗末にしている虚しさを感じずにはいられません。
生命をいただいているという感覚を無くしている。
考えないように生きてしまっている。
技術大国ニッポンと言われながらいまだにこの廃棄食品の問題を解決できずにいます。
賞味期限切れではない余った缶詰などの食品を、必要としている場所へ配布する仕組みはNPO法人や民間企業が整えつつありますが、賞味・消費期限が早い食べものの廃棄量をどうしていくか。
今後の食糧難の世界で生き残るためにも考えていかなければ。
まとめ
こうして世界で乱獲をして、絶滅に追い込まれてきた歴史を、いまも人間は繰り返しています。
ニホンオオカミもドードーも肉や毛皮欲しさに乱獲して絶滅に追い込まれました。
中国の14億人という人口で爆漁し続ければどうなるかは、想像できるでしょう。
「今の先進国だけズルい!」というのは、発展途上国へ環境破壊の危険性を訴えると必ず聴かれるフレーズだし、この矛盾はどうしても解きほぐせません。
しかし、時代は変わり、20世紀になってやっと動植物にも資源にも限りがあるものだと人間は学んだんです。
その論理を推し進めれば人間にも限りがあることは自明の理のはずです。
他の動植物、資源を食い尽くせば、食物連鎖の上位にいるつもりの人間も絶滅していくでしょう。
「食べたいから」「国民を飢えさせないために」という人間の欲だけで乱獲をすることは、国家間で協調してどこかで止めないといけませんね。
お互いのエゴをぶつけ合うのではなく、国と国、人と人がもっと同じ意識、感覚を分かり合える時代がやってくればいいですね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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