Y&M藤掛第一病院の死亡を熱中症と通報した関係者とは?殺人と決めつけるのは間違い。未報告は医師法抵触なのか?姥捨て山と言われる療養型病院の現状も考えたい。

Y&M藤掛第一病院の死亡を熱中症と通報した関係者とは?殺人と決めつけるのは間違い。未報告は医師法抵触なのか?姥捨て山と言われる療養型病院の現状も考えたい。

岐阜市の病院で不審死

 

 

岐阜県岐阜市の民間の病院「Y&M藤掛第一病院 」で80代の男女5人があいついで死亡するトラブルが発生しました。

 

報道陣の取材に応じた病院の藤掛陽生(ようせい)院長らによると、3、4階のエアコンは20日に故障した。各病室の天井に吹き出し口があり、3、4階を集中制御する構造。業者に修理を依頼したが、直るまでに1カ月かかると言われ、20日に扇風機9台を各病室に1台ずつ置いた。重症患者はエアコンの利く2階に移動させた。

一方で藤掛院長は「エアコンが嫌いな人もいて、亡くなった4人は移動しなかった」と説明した。故障と死亡の関係に関して「いつ病状が急変してもおかしくない状況で、病院としては何か問題があったとは考えていない」と話した。4人は気管支ぜんそくや心不全などを患っていたという。

出典:毎日新聞

 

いずれもエアコンが故障していた3階と4階の病室に入院しており、扇風機だけで凌いでいる状況でした。

死亡した患者は外傷もなく、伝染病、中毒など外的要因が死因ではないことは分かっています。

同病院は業務上過失致死の疑いで家宅捜索を受けています。

 

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藤掛第一病院とは?

 

 

建物は4階建て、高齢者医療を専門としています。

入院相談にこのように記載されています。

 

介護施設を探しているが、定員待ちの方
ご自宅での介護が難しい方

(中略)

御自宅にて介護疲れの御家族様に対して、本院の空床時に御高齢の患者様を御入院して頂くことができます。

出典:公式ページ

 

また院長挨拶ではこのように述べています。

 

本院にご入院の患者様はご高齢の方が多く、本院が終(つい)のすみかとなられる事が多く、患者様の快適性を追求して日々改善して運営しております。

出典:公式ページ

 

これは同じ疾患で長期間入院することを表しています。

報道では終末期医療(看取り)まで行っているとされていました。

 

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「Y&M藤掛第一病院 」の容疑と通報した関係者とは?

 

 

業務上過失致死容疑です。

しかしこの容疑は、いったん最大限の容疑にすることで押収できる物品を増やす意図があるらしく、違法ではありません。

これを「殺人罪か?」のようにバイアスを掛けて報道をするのは尚早でしょう。

あくまで容疑であり、事件というよりトラブルの段階です。

 

また、通報した「関係者」ははっきりとは分かっていませんが、以下の報道がありました。

 

県警はこの患者の死亡を、患者の成年後見人を名乗る男性からの情報提供で28日夜に知った。

出典:YOMIURI ONLINE

 

当初は単に関係者という報道が多かったのですが、この「成年後見人」が正しいのなら、家族ないしは後見人となった他人ということになります。

例え素人でも、周囲で次々と患者が死亡している状況は分かります。

いずれもエアコンが壊れた部屋で死亡しており、死因を尋ねても既往症によりと回答され、熱中症の疑いは無いと言い張られたら、警察に訴えたくもなるでしょう。

 

素人が告発をすることも間違ってはいないし、殺人罪でいったん捜査をすることも違法ではありません。

 

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トラブルの経緯は?

 

 

8月20日ぐらいから3階と4階の病室でエアコンが故障していました。

8月26日にその病室にいた84歳の女性が死亡、27日に85歳の女性、83歳の男性、84歳の男性が死亡しました。

8月27日月曜日に、病院関係者とみられる人物から警察に通報が入り発覚しました。

通報では、死亡した患者が全員熱中症の疑いがあるというものでした。

8月28日午後6時ごろ、報道陣への説明の3時間後、エアコンが故障した3階の病室に入院していた84歳の男性が死亡しました。

これで5人が亡くなったことになります。

8月20日から27日までの岐阜の最高気温は連日30度を超え、猛暑日を3回記録していました。

ただしこのエアコンの故障、猛暑と、死因の因果関係は捜査段階です。

 

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院長の説明は違和感

 

 

以下は8月28日午後3時ごろ、藤掛陽生院長(69歳)に報道陣が取材をした際の説明です。

 

院長:
いま警察に協力してやっております

よろしいですか?

病院関係者:
病院としては
何か問題があったとは考えておりません
それだけはよろしくお願いいたします

報道:
20日にエアコンが壊れて
どういう対応をしていたのでしょうか?

院長:
扇風機を出しました
9台

報道:
20日からずっと扇風機のみで対応していたということ?

院長:
そうですね
でもまあすぐに移動もしましたけど
(エアコンが)きく部屋にね
ちょっと重症の人はね

報道:
亡くなられた方々は重症じゃなかったのでしょうか?

院長:
いや…
どうだろうそれは
※関係者に相談

病院関係者:
重症

院長:
重症だったね
うん

報道:
この夏かなり暑い中で
エアコンが無いとかなり厳しいと思いますが
患者さんにはどういう説明をしたのでしょう?
例えば転院とかさせるという手段は無かったのでしょうか?

院長:
うーーーーん
ちょっとそこらへんはねえ…

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報道:
今回亡くなった4人は
(エアコンがきく部屋に)
移動していないわけですよね?

院長:
(関係者から耳打ち)
そうですね

報道:
移動していたらそうはならなかったのでしょうか?

院長:
そこらへんは
いま警察が調べてくれているので

報道:
病院の認識としても
エアコンの故障イコール
4人の死亡につながったとは考えていないのでしょうか?

院長:
そうですねえ
その人はね
煙草をね
ものすごくのんでいたの
若い時に
ですからね
やっぱりね
煙草はひどいね

報道:
急変してもおかしくない病状だった?

院長:
そうですね

 

 

「既往症の悪化」であり異常ではないと強調しています。

とても違和感を感じる説明です。

この違和感の原因について次項で考えていきます。

 

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違和感を感じること

 

 

病院として問題が無い

エアコンの故障は関係ないとうい主張です。
熱中症とは関連無く、病気が原因としています。
しかしいずれもエアコンが故障した部屋で立て続けに死亡しており、医療に従事するものなのに何故問題が無いと言い切れるのでしょうか。

エアコンの修理に時間がかかった理由

15年以上前のエアコンで部品の手配に時間がかかるという理由のようです。
健康な若者でも今年の異常な暑さで死者や急患が激増している状況で、重篤な高齢者はより危険であることはすぐに分かります。
命を最優先に他にやれることは無かったのでしょうか。

エアコンが利く部屋に移動しなかった理由

「エアコンが嫌いな人もいて、亡くなった4人は移動しなかった」と説明しています。
しかし、エアコンが壊れる前はしっかりエアコンが利いた部屋で生活をしていたため、壊れたからそこにいたいというのはどうも納得感がありません。
「嫌いな人も」と言っているため、亡くなった患者が口を揃えてエアコンが嫌いと言ったわけでもなさそうです。

ここはもう少し丁寧に、それぞれの移動しなかった理由を説明していただきたかったです。

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何故転院させなかったのか

現時点で言葉を濁しており原因は不明です。
熱中症を否定している段階で、熱中症では死なないと思っていたとは答えられないためでしょう。

5人目の死亡した患者

この患者が熱中症だったか既往症による病死なのかは検死が必要ですが、少なくとも5人が死亡した部屋の共通項が「エアコンの故障」なのは明らかなので、まずは同じ部屋の患者を全員エアコンが効いた部屋へ移動しておけば、疑いを掛けられずに済んだかもしれません。
なぜ発覚後も残してしまったのでしょう。

関係者の耳打ち

院長に逐一、病院関係者の男性が耳打ちして話す内容を伝えていました。
100人規模の病院で院長が全てを把握しておく必要は無いのかもしれませんが、少なくとも重症患者だったかどうかぐらいは把握しておくべきです。
遺族には余計に無責任な印象を与えてしまうでしょう。

「煙草はひどいね」

これは酷い言葉です。
既往症が死因だという主張の延長ですが、検死をすれば分かってくるはずです。
その時に遺族がこの言葉を聞いたら、どんな気持ちになるでしょうか。
保身だとしても、言わなくてもいい言葉もあります。

 

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高温の病室にいさせることは違法?

 

 

病室の室温について法的規制はありません。

エアコンの代わりに扇風機で凌いだとしてもそこは責められません。

しかし、適切温度で管理しなければいけない義務はあります。

遺族は病院に対し「患者に対する安全管理義務違反」で損害賠償請求をすれば認められる可能性は高いようです。

まずは民事として損害賠償請求をし、次に警察の捜査状況で刑事事件として業務上過失致死を問うていくことになります。

 

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医師法に抵触する可能性?

 

 

「Y&M藤掛第一病院 」では5人を「病死」と判断し警察に報告していませんでした。

しかし医師法では以下のように定められています。

 

医師法21条
遺体に異常があれば24時間以内に管轄の警察署に届け出なければいけない

 

重症の患者が長時間、エアコンが効かない高温の部屋にいたらどうなるかは、病院長なら気づいていたとみるべきです。

遺体に異常がなくともつぎつぎと患者が不審死をしたのは、表面上の異常と言わずとも、異常な死因の疑いがある遺体として、警察に通報する必要はあったと思われます。

 

「熱中症かどうかが分からない既往症だと判断できれば届け出は不要だ」のように主張するライターの方もいらっしゃるようですが、考えてみてください。

例えばこれが伝染病や細菌、あるいは毒殺での死亡だったらどうなるでしょうか。

表面上は異常ではないから届け出をしないでもいいのでしょうか。

病院としては評判を落としたくないから、既往症での死亡として片付けてしまっても良いことになります。

その為に伝染病が周辺に感染していったら大惨事です。

つまり既往症での死亡を証明できず、同時期に複数がバタバタと死亡するような状況があれば、法的に不要でも人道的・倫理的な観点から警察へ届け出をすることは病院としての管理義務の一環といえます。

 

「療養型なら同時期に複数人が死亡してもおかしいことでは無い」と主張される方もおられますが、エアコンが壊れた部屋にいた5人が同時期に死亡することも療養型でよくあることでしょうか。

そういう「状況」は普通の病院ではありえないのではないでしょうか。

今回のトラブルの焦点は、「複数人の死亡」ではなく、病院として管理義務が果たされていなかったのではないかという「状況」なので、療養型だからどうというのは論点がずれています。

 

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赤字体質だったのでは?

 

 

ここからは、トラブルが熱中症が原因か否かは判明していませんがエアコンが壊れた部屋で5人が死亡したという「状況」を異常として推察をしていきます。

 

まず、エアコンの修理が遅れるのなら、患者のことを思えばエアコンが利く病室に移せばと思います。

「エアコンが嫌いな患者もいるから」という説明が微妙な気がします。

そこで移動する部屋が無かった、という仮説を立ててみました。

一部屋に病床をパンパンに詰め込めば他の患者の緊急時に対処が遅れるため、設置できる病床数は限りがあります。

(もしくは金額の高い個室などしか空きが無かった、家族の同意が得られなかったなども考えられますが)

そう考えれば、

・エアコンを修理する
・エアコンを最新のものに入れ替える
・転院させる

といった選択肢から最短でできるものを選ぶことになります。

今回、修理を選択しその間に扇風機で凌ぎましたが、扇風機とうものは体感温度を下げるだけなので、根本的に体温を下げる効果はなく、脱水症状を防げません。

しかも一部屋に1台しか置いていなかったようなので、到底足りているとは思えません。

その為、修理という選択は適切だったとは言えません。

ではなぜエアコンを入れ替えたり、転院を選ばなかったのでしょうか?

 

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この原因として一番考えられるのは金銭的な事情です。

出入りの業者からはエアコンを交換した方がいいと関係者に何度も伝えていたそうです。

しかし藤掛第一病院のエアコンは共通のエアダクトで供給する方式のため、エアコンを交換するには大規模な工事が必要です。

その場合結局患者を移動してもらう必要があるし、多額の費用が掛かります。

転院をさせるには家族の同意や時間も必要になり、結局一時的に他の部屋に移動が必要ですし、転院によって患者が出て行くと赤字体質の病院ほど収入が減ってしまうことを懸念しそうです。

病院がそれほど赤字なのか?高齢化社会で儲けているのでは?と誤解されがちですが、日本の病院は4割が赤字経営のようです。

 

日本の病院の現状を見ると、4割の病院が赤字経営(医業・介護収益ベース。助成金や利息等を除く)となっている。経営主体別では、公的医療機関(国立・公立・自治体運営等)で7割、医療法人でも3割が赤字であり、業界全体として厳しい状況にある。

出典:SPEEDA

 

とはいえ藤掛第一病院が赤字体質だった根拠はありません。

しかしそれを推測をする要素はありそうです。

 

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DPC/PDPC制度の未導入

 

 

「病院なび」などの複数の検索サイトで調べた限り、藤掛第一病院は終末期医療をしているにも関わらず、DPC/PDPC制度を導入していないようです。

DPC/PDPC制度は「診断群分類に基づく1日当たり定額報酬算定」のことで、とても簡単に言うと、同じ疾患で長期間入院する患者が多いほど導入したほうが採算性が高まる制度です。

病床数が多く赤字化しやすい日本ではDPC/PDPC制度を導入する病院が増えており、50%以上が導入しています。

藤掛第一病院は老人医療、終末期医療を行っており、同じ疾患で長期間入院する患者で構成されている病院と言えます。

 

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特にDPC/PDPC制度を導入すべき病院のはずですが、導入できていない(もしくはしない)ということは、条件をクリアできない病院だからかもしれません。

DPC/PDPC制度を導入するには以下のような条件をクリアし認可を受ける必要があります。

 

国の意向である医療の標準化・透明化・質向上・医療費の適正化に向けて、適切なデータを2年間国へ提出し、準備期間を経て基準を満たした病院が厚生労働大臣に届け出、認可を受けた病院が対象です。

出典:北光記念病院

 

これクリアするには低侵襲な治療(身体に害の少ない治療)を行える効率化された医療設備・体制が必須です。

こうした医療体制がなく、非効率のため赤字体質だった可能性は否めないように思います。

DPC/PDPC制度が導入されていない病院は従来の「出来高払い」で計算をすることになり、それがイコール赤字とは限りません。

むしろ預かってくれる特別養護老人ホームのような施設が見つからず困惑する親族の足元をみて潤っていた可能性もあります。

少なくとも言えることは、採算性・効率化にメリットのあることをやらない・やれない病院ということは言えるでしょう。

 

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まとめ

 

 

本当に赤字体質だったからか、単に「ドケチ」だったからかは分かりません。

もし「ドケチ」な人が100人以上の患者を預かるのなら、もっと早くに問題が露呈していたような気もします。

8月29日の岐阜市の会見では、エアコンが故障した病室にいた患者は全員エアコンが利いた部屋に移されたとのことでした。

「移動できたのか…」とも思いますが、やむを得ず少しきつめに捻じ込んだり、高額な個室に移動したのかもしれません。

環境が整うまで新たな患者を受け入れないよう指示しているそうですが、こうした死亡事故を起こした病院が今後、信頼を取り戻していくことは容易ではないでしょう。

刑事事件になれば、病院自体が閉鎖に追い込まれる可能性もあります。

転院していく患者も増えるでしょう。

しかし、金銭的・立地的な事情で転院できない患者も多くいるはずです。

もう少し公共性を意識した運営を心掛けていただきたかったですね。

 

今回のトラブルの本質的な原因の確認が必要です。

赤字体質に陥り、経営状態が劣化している病院がどの程度あり、そのうち患者に影響がでそうな病院はあるのか。

姥捨て山とも揶揄されるような、特別養護老人ホームの代わりに「放り込まれる」病院が存在せざるを得ない非人権、非道徳性はどうなるのか。

政治にはそうした本質的な問題の解決を急いで欲しいと思います。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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