インターポールの総裁が行方不明に
image:グッド!モーニングより
国際刑事警察機構、通称インターポールの総裁・孟宏偉氏(64歳)が突然、消息不明になりました。
フランスで仕事をしていた孟宏偉氏がいったん中国に帰国後、消息不明になったといいます。
中国外務省の報道官は2018年10月8日になって、孟氏が賄賂を受け取った疑惑で拘束、調査中であることを認めています。
孟氏の容疑は収賄とされていますが、具体的な内容は明らかにされていません。
ただし、以下の目的については明言しています。
周永康の残党を徹底的に粛清する
周永康氏とは元共産党幹部の大物政治家です。
以下が周永康氏です。
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2012年に習近平氏が国家主席に就任し腐敗撲滅運動を推進、汚職役人を厳しく取り締り、周永康氏も収賄罪などで無期懲役の判決を受けました。
当時、約2兆円という不正な蓄財を持ち、29人もの愛人がいたとされる周永康氏。
金額と愛人の多さは、まるで権力の強大さを表しているかのようです。
周永康氏は習近平氏の政敵であり、習近平氏は汚職の取締りを名目に政敵を追放したわけです。
そして孟宏偉氏は、その周永康氏の側近の一人でした。
公安倍門のトップだった周永康氏は、孟宏偉氏を公安次長に抜擢し側近として支えた経緯があります。
つまり孟宏偉氏は周永康氏の息がかかった大物の一人であり、その影響力を排除することが、習近平氏の真の目的だとみられています。
ただ孟宏偉氏が中国人初のインターポールの総裁に就任したのは2016年、周永康氏が逮捕された以降です。
腐敗撲滅運動で周永康氏の側近や配下の人間はことごとく逮捕されたようですが、孟宏偉氏は何故か逮捕を免れています。
何故今頃になって拘束されたのでしょうか?
孟宏偉氏の拘束の背景は?
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今のところ、2つの理由が考えられます。
まず、孟宏偉氏には罪をきせる確たる証拠が見つけられなかった可能性はあります。
孟宏偉氏はサイバーテロの専門家のため、証拠となりうるデータの抹消もお手の物だったのかもしれません。
ただしそれだけでは、他の拘束された政治家たちが口を割っていけばいくらでも理由付けはできてしまいそうです。
もう一つ考えられるのは、習近平氏にとって利用価値があると考えられていたことです。
腐敗撲滅運動の成果について習近平氏はこのように話しています。
トラを退治し、ハエをたたき、キツネを狩った
トラとは「党幹部の官僚」、ハエとは「地方の役人」、キツネとは「海外逃亡した官僚」のことを指します。
インターポールの仕事のひとつとして、犯罪情報の共有があります。
つまりインターポールのデータをうまく引き出しやすい環境を作って、国外逃亡した政治犯を「キツネ狩り」していた可能性が高いでしょう。
インターポールの総裁に抜擢されるほどの能力を持った人物ですから、政敵として敵対するよりもまずは利用する方を選んだと見た方が、孟宏偉氏がこれまで腐敗撲滅運動の網を抜けてきた理由として整合性がとりやすいです。
ではなぜ、2018年になっての拘束に繋がったのでしょうか。
それは、この能力に対して習近平氏が逆に「脅威」を感じ始めたからではないでしょうか。
インターポールには中国共産党の政治家の黒い情報も多く集まってきていると言われています。
つまり孟宏偉氏は習近平氏自身の重大な秘密を握っている可能性が高いということです。
キツネ狩りのデータも十分揃い利用価値も以前ほどではなくなってきたので、「国家監察法」も成立したところでそろそろ脅威を排除、というところではないでしょうか。
インターポールは既に、孟宏偉氏の辞表届けを受理したそうです。
いったい拘束された状態でどうやって辞表を書いたのかは知る由もありませんが、利用価値よりも脅威が上回ってしまった孟宏偉氏は、ファン・ビンビンのように追徴課税を払い釈放というようにはなら無さそうです。
ところで「国家監察法」とはどういった法律なのでしょうか?
国家監察法の恐怖
中国では2018年3月、「国家監察法」が成立しています。
この法律により、国家が検察や警察をしのぐ協力な権力を握り、大物官僚から市民まで、すべてを拘束できるようになりました。
この法律の恐ろしいところは、起訴などの法的な手段をとらず、最長で6カ月の拘束が可能になることです。
また家族や弁護士への通達も不要で、面会も叶いません。
ファン・ビンビンもこの「国家監察法」を後ろ盾に、強制的に拉致され、4カ月拘束されてから釈放されたものとみられます。
習近平政権になってから腐敗撲滅運動で150万人以上が拘束されてきましたが、「国家監察法」の成立以降は、より強権的により簡素な手続きで国家が国民の自由を奪い、金と権力を奪い、政敵と反目する者は牢に入れ、利用価値があるものは忠誠を誓わせ世に放つということを繰り返していることが、この一連の拘束問題で広く世間にも明らかになってきました。
刃物の絵文字の理由は?
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2018年9月25日、行方不明のあとですが、孟宏偉氏の妻には以下のようなメッセージが送信されてきたといいます。
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「等我電」は「電話を待っていてくれ」という意味です。
拘束されたか、危機を察知したために慌てて送信したのかもしれません。
ではこの刃物の絵文字は何を表しているのでしょうか。
自身の身の危険を表しているようにも見えますが、妻の身を案じているようにも思えます。
とにかく危険な状態に置かれているということを伝えたかっただけかもしれません。
文字ではなく絵文字で送信しているのは、一種の暗号という見方があります。
中国当局の取り調べは、パソコンや携帯電話の送信履歴まで全てを調べられてしまうため、言葉で身の危険を伝えることでそれが容疑の一つに加えられてしまう可能性もあるのではということです。
いわば「言いがかりのきっかけ」を与えてしまうことになりかねません。
サイバーテロの専門家でもある孟宏偉氏はそのことを十分理解していたため、こうした絵文字だけで何かを伝えようとしたのかもしれません。
家族に拘束を伝えることすら自由にできないのが国家監察法だという、まさに最たる事例ではないでしょうか。
まとめ
孟宏偉氏の拘束は、政敵・周永康氏の息がかかった大物政治家で習近平氏の秘密を握っているとされることが原因とみられています。
ファン・ビンビンの脱税の背景にも大物の軍関係者があり、その排除が拘束の目的だったといわれています。
「国家監察法」の成立も、一連の拘束も、全ては権力闘争の一環ということです。
このところ加速している習近平氏の覇権固めですが、ここまで強権的にものごとを進めれば結局は敵も多く作ることになります。
打倒したはずの政敵の背後に、姿を見せない憎悪を抱いた敵が次々と誕生し、それが習近平氏の心を蝕むでしょう。
永遠に人を抹殺し続ける独裁者の無限地獄に陥っていくことが、とても恐ろしいと感じます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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