ボストン・ダイナミクス社のロボットは見ているものに “アナログハック” される感覚を教えてくれる

ボストン・ダイナミクス社のロボットは見ているものに “アナログハック” される感覚を教えてくれる

ボストン・ダイナミクス社のリアルロボットたち

 

ボストン・ダイナミクス社は、ロボットの研究開発を手がけるアメリカ合衆国の企業です。インターネットやGPSの開発、発展に寄与したDARPA(国防高等研究計画局) の支援で様々な実用的なロボットやソフトウェアを開発をしています。2013年12月にGoogle社に買収されました。2017年6月にソフトバンクグループが買収することを発表しました。買収額は非公表とのことですが、恐らく兆単位ではないかと噂されています。

ボストン・ダイナミクス社の造り出すロボットはもはや従来のロボットの域を出て、人間に近づいているような気さえ起こさせます。そのくらい人間っぽい動きをしています。ただ「それっぽい動き」をするだけなら他社のロボットでもありましたが、重い荷物を自分で認識して持ち上げたり、不安定な路面をバランスを取りながらさくさくと歩いていく姿をみると、ただの「それっぽいロボット」ではなく、「実用性」も兼ね備えてきていることを実感させられます。

 

ボストン・ダイナミクス社のロボットにアナログハックされる感覚を覚える

 

今回買収を発表したソフトバンクといえば「Pepper(ペッパー)」が有名ですが、ボストン・ダイナミクス社の製造しているロボットと比べると、見劣りしてしまいます。目的が違うんだから当たり前だろうと言われそうですね。確かに、ボストン・ダイナミクス社のロボットは実作業を目的としていますが、Pepperは案内や楽しませることを目的としたサービスロボットです。本来、表情を持っているサービスロボットであるPepperの方が人を惹き付けるはずですが、なぜか僕はボストン・ダイナミクス社のロボットの動きの方が魅了されてしまいます。アニメ「BEATLESS」のワードを借りれば、アナログハックされた感覚を覚えます。アナログハックというのは、「BEATLESS」の原作者 長谷敏司が考えた言葉ですが、これからの世界が感じていく感覚を捉えた秀逸なワードだと思います。

 

アナログハックとは、「人間のかたちをしたもの」に人間がさまざまな感情を持ってしまう性質を利用して、人間の意識に直接ハッキング(解析・改変)を仕掛けることです。 

(中略)

hIEは人間のかたちをしていますが、こころを持っているわけではありません。この人間型の機械にさまざまな言葉や振る舞いを演じさせることで、人間を自発的に動かさせることができるのです。
(出典:アナログハック httpss://www63.atwiki.jp/analoghack/pages/8.html

 

僕はボストン・ダイナミクス社のロボットを見ても、自発的に何か行動を起こすことはありません。ただ、心の中で「あ、倒れる、危ない、怪我する!」とか「なんで蹴るんだよ!可哀想!」とか思っています。心が揺さぶられているんです。「怪我」とか「可哀想」とか、本来動物にしか使わないはずのワードが自然と頭に浮かんでいます。ひとが行動を起こす動機として、心が動かされることや感動することがあると思います。この「揺さぶられる」という感情は行動の発端となる可能性を秘めています。

動物らしい動き、人間らしい動きを「してみせる」ことで、自然と感情移入していて、ロボットに同じ生き物と同じ感情を持ち始めているということの表れなんだろうと思います。Pepperが大型ショッピングモールで子供に叩かれたり、笑われたりしている姿を見ても、残念ながらそういう感情は起こりませんでした。ここに、ロボットと、ロボットを越えたものの境目が生まれてきていると感じるのです。

 

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アナログハックの感覚を感じて欲しいボストン・ダイナミクス社の公式動画をご紹介

 

まずは、Atlasというロボットです。2013年に公開した3世代目の人型ロボットです。

1つ目の動画で見せるバク宙はこれまでのロボットの概念をぶち壊すような動きです。跳躍力、バランス、ショック吸収、頑丈さ、高速な処理能力の全てを兼ね備えていなければ無しえない動きで、初めてみたとき感動して何度も繰り返し再生してしまいました。

動画の最後にみせる、NGシーンは笑ってしまいます!このミスしてずっこける様こそ、なんとも愛嬌を感じてしまいます。ロボットは愛嬌なんて考えていないはずですが。

 

(出典:httpss://www.bostondynamics.com/atlas

 

2つ目の動画では、雪山を歩くパートの次に、作業をさせるパートがあります。ここでかなりアナログハックされる感覚があります。

よいしょ、よいしょと荷物を持ちあげるのに、人間がスティックで荷物を弾いて遠ざけたり、落としたします。また背後から棒で押して倒したりもします。これはロボットとしてのバランス制御や反応速度の試験をしているということなんだろうと思いますが、あまりに「健気」に仕事をしようとする動作とそれを邪魔するおじさんという対比に見えて、怒りすら覚えてしまうのです。

というか、ロボットが持ち上げているだけなのに「よいしょ、よいしょ」という言葉をあててしまうこと自体から感情入ってますよね。

 

(出典:httpss://www.bostondynamics.com/atlas

 

3つ目はSpotという、四足歩行型炉ロットです。犬を愛するアメリカ合衆国ですから、犬型なんだろうと思います。なかなかの大型犬ですけどね。何事もないように会社内を歩きだしますが、いきなり社内で蹴り倒されそうになります。恐ろしい虐待のように見えますが、もちろんこれも動画用にその安定性を見せるためのテストです。それでも、ヨタヨタとよろめきながら体制を立て直して、黙々と歩きだす姿をみて、またしても「健気」という感情を持ってしまいます。この動画でもまたアナログハックされてしまいました。

 

(出典:httpss://www.bostondynamics.com/spot

 

最期に

 

ボストン・ダイナミクス社はソフトバンクに買収されましたので、今後Pepperが機敏に動き出して、アナログハックされるようなことになるのでしょうか。これまでボストン・ダイナミクス社はロボットとして作業を確実に行えることを重点的に研究していましたが、より人間らしい表情や容姿を備えることで、より感情移入しやすくなってきそうです。もちろん優れたAIが搭載され、自身で考える力をもてば、一気にロボットが人間社会に入り込んでくる可能性が広がります。ただし、「BEATLESS」の作中でも言っているように、こころをもっているわけではありません。どこまでいってもその行動はゼロとイチの電気信号によって分岐選択をしているのです。ただ、その処理速度が爆発的に早くなったとき、人間の脳と同じような処理ができるようになったとき、そこに「魂」「こころ」に近いものが芽生えたとしたら。これからもロボットと人間の関わりは注目していきたいですね。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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