NPO法人 STA の運営者3人が逮捕
出典:ANNニュース
2018年6月23日の報道で、NPO法人 STAの運営者ら3人が警視庁捜査2課により逮捕されたことが報じられました。
逮捕者は以下です。
松本吉則容疑者 51歳(無職)
長谷川和江容疑者 54歳(無職)
もうひとり(不明)
容疑は、詐欺、有印私文書偽造などの疑いです。
今回再逮捕らしいので、いったん別件逮捕をしておき、勾留させておき詐欺容疑の確証を掴んでから再逮捕となったものと思われます。
再逮捕とは、勾留期間中や勾留期間終了後に再び被疑者を逮捕することです。
起訴前の勾留期間は原則として最大20日間となっており、期限切れで釈放されてしまうと、再逮捕では同じ容疑で逮捕することができません。
そこで別の被疑容疑で再逮捕をして勾留期間を伸ばして捜査を進めるという方法をとる場合があります。
容疑の内容は?
今回の逮捕容疑の内容は、2016年2月から7月の間の詐欺行為です。
債務者3人を勧誘し金融機関に対する過払い金の返還請求訴訟を起こさせました。
債務者の代理人弁護士が受け取った返還金計約900万円について、偽造書類を示して詐取した疑いが持たれています。
過払い金返還の業務を行う弁護士事務所と、債務者の仲介役を行っていたということですね。
詐欺行為の指示役は松本容疑者とみられています。
具体的な手口の流れはこんな感じです。
- 弁護士に債務者の情報を伝える
- 弁護士が債務者のために過払い金を取り戻す
- 弁護士に「債務者本人の口座は家族に分かってしまう」「私の口座から本人に渡す」と偽り自身の口座に振り込ませる
- 取り返した過払い金をだまし取る
また現在も同様の手口で6000万円近くの搾取を行っていたものとして捜査を進めています。
こちらの容疑がかたまれば、また再逮捕となるでしょう。
同様の手口で、平成27年11月から29年8月、債務者約40~50人の返還金計約5800万円を詐取したとみられる。消費者金融の利用者とみられる名簿約4千人分を所持していた。
出典:産経ニュース
なお、長谷川容疑者らは都に対して「活動を停止中のため、成果はありません」と嘘の報告をしていたようです。
警視庁は嘘の申請を重ね、NPO法人を名乗り続けることで債務者を集めていたとみて余罪を調べています。
NPO法人STAとは?
こちらがSTAの公式ページです。
業務内容を「ヤミ金対策、整理屋、家賃滞納、とりまとめローン対策の相談」と記載していますね。
2018年6月末時点では開設されていますが、今後閉鎖される可能性があります。
NPO法人STA
会社概要です。
代表の名前を記載していない時点でかなり怪しいですね。
こちらがSTAのフェイスブックページです。
なぜかどこかから拾ってきたような綺麗な画像を大量にアップしていました。
こうして会社への印象を良くしようとしていたのでしょうか。
「お金ないよ?俺」という画像がなんだか虚しいです。
こちらが内閣府NPOホームページに掲載されているSTAの行政入力情報です。
法的にはNPO法人として認可されていたことが分かります。
出典:内閣府NPOホームパージ
STAについて、Yahoo!知恵袋に2011年の質問があがっていました。
2011/5/27
東池袋にあるNPO法人STAをご存知の方がいたら教えてください。
私の同僚がヤミ金から借金をしてしまい、会社にも取り立ての電話がたくさんかかってきています。
困り果ててNPO法人のSTAに相談したのですが取り立ての電話を止めるのに一軒につき4万円と言われたそうです。
詳しい経緯は分からないのですが、このNPOを紹介してくれたのは不思議なことにヤミ金業者だそうです。
私にはヤミ金業者とNPOが繋がっているように思えたので、同僚には相談しない方が良いと言ったのですが・・・みなさんはどう思いますか?
このNPO法人を知っている又は相談をしたことがあるという方がいたら小さいことでも良いので教えてください。
よろしくお願いします。
業務内容として「ヤミ金対策」とうたいながら、ヤミ金業者と癒着して金を騙し取っていたことを伺わせます。
暴力団との繋がりも捜査範囲に入っている可能性がありますね。
弁護士事務所は?
STAから依頼を受け過払い金を取り戻し、STAの口座に振り込んでいた弁護士事務所に関する情報は開示されていないようです。
この債務者以外の口座へ振り込む行為は「非弁提携」という行為にあたる可能性があり、STAと結託していた弁護士の存在を示唆しています。
「非弁提携」は以下のように弁護士法でかたく禁止されています。
非弁提携
非弁活動は、弁護士や弁護士法人でない者が法律事務を行うことを禁じたものですが、弁護士がこのような非弁活動を行う者と結託することを禁止し、非弁活動が助長されることがないようにしたものが非弁提携の禁止です。
弁護士や弁護士法人が、非弁活動を行う者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させることは禁止されています。(弁護士法27条)
出典:日本弁護士連合会
NPO法人とは?
NPO法人とは「特定非営利活動法人」(Nonprofit Organization)のことを指します。
「非営利」という言葉からボランティアのようなイメージを抱きますが、収益を制限するものではありません。
「特定の公益的・非営利活動を行うこと」(内容は特定非営利活動促進法#法における定義を参照)を目的とする法人である。「非営利」とは、団体の構成員に収益を分配せず、主たる事業活動に充てることを意味し、商業活動を行うこと等の収益を得る行為を制限するものではない
出典:Wikipedia
NPO法人になるための条件は以下のようになっています。
NPO法人になれる団体は、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の要件を満たすことが必要です。
1.営利を目的としないこと(利益があがってもそれを構成員で分配せず、また解散時にはその財産を国等に寄付する)
2.社員(総会で議決権を持つ正会員のこと)の資格の得喪(入会したり退会すること)に関して、不当な条件を付さないこと
3.10人以上の社員がいること
4.役員として3人以上の理事と1人以上の監事がいること
5.役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること
6.宗教活動や政治活動を主たる目的にしないこと
7.特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと
8.暴力団でないこと、暴力団又は暴力団員の統制の下にある団体でないこと出典:日本NPOセンター
営利を目的としないということは、NPO法人はどのように活動費をやり繰りしているのでしょうか?
NPOが組織として活動するためにはさまざまな経費が必要となります。事業にかかる経費だけでなく、運営のための管理費、新しい事業を始めるための元手などについても、気を配らなくてはなりません。
NPO法人の資金源は、会費、寄附金、本来事業からの対価収入、非本来事業からの対価収入、助成金、補助金、借入金、金利等の大きく8つに分類できます。
出典:NPO WEB
寄付金た助成金といった収入源は想像しやすいですが、本来事業収入、非本来事業収入というのはどういったものでしょうか?
事業収入とは、物品を売って受け取った代金や、サービスの提供で得た料金、労力を提供して得た賃金などによる収入をいう。
それらは、本来の目的達成のための「本来事業」と、本来事業を行うために収益を得ることを目的として行われる「非本来事業」に分けることができる。
近年、国や自治体の事務や事業をNPOに委託する事例が増えてきている。委託事業とは、国や地方自治体、企業などがその権限に属している事務や事業を、企業やNPOなどの団体、または特定の人が行うもので、実施事業者は事業を遂行することによって対価を得ることになる。委託事業も、その内容によって本来事業、非本来事業に分けられます。出典:NPO WEB
ここまで読んで気になるのは、団体構成員の給料はどうなるのか?ということです。
こうした様々な方法で活動費を捻出しますが、NPOは活動の中で得られた利益を、活動費の出元に対して配当として渡すことができません。
これが「非営利」という言葉の由来になります。
配当ではないため、利益から給料を支給することは問題ありません。
まとめ
非営利性のもつ好感の得やすさを隠れ蓑に、一部、事実上営利目的であったり非公益的活動を行ったりする例が出てきた。とくに、企業や業界団体の広報宣伝活動の隠れ蓑にしたり、犯罪に関与したり、実態は右翼団体や左翼団体であるケース等、悪徳商法がニュースでは目立つようになり、NPO全般のイメージをネガティブに捉える人が増えた。ただ、実際はそういった団体は一部である。
内閣府は、市民による監視の一環として、活動が懸念される法人に対し「市民への説明要請」を実施することとした。この説明要請の内容、及び要請への回答については、すべて内閣府ホームページ上で閲覧できるという行政措置をした(当然ながら、説明要請に対して何らの応答も無かった際はその事実を公表される)。この点についても法制化に向けて着手している。
出典:Wikipedia
NPO法人は「非営利」という言葉の印象の良さがあります。
まるでボランティアのような印象を持ちますよね。
平たくいえば、寄付金や助成金で組織的にボランティア活動を行うのがNPOと言っても差し支えないと思います。
ボランティアのひとに悪いイメージを持つ人はいないでしょう。
この好感度を悪用し「隠れ蓑」として営利活動をするという事例が増えてきています。
そうした悪用のひとつが今回のSTAの事件ということになります。
公式サイトでは、
あきらめないでください!
つらい借金生活から解放され暮らしが安定するまでサポートします。
のように弱者の味方であることを強調し、フェイスブックでは美しい画像をアップして好感度を上げようと努力する。
その実態は、ヤミ金と結託、弁護士との非弁提携で弱者から搾取する仕組みを構築した詐欺集団だったということになります。
こうしたヤミ金、非弁活動をした弁護士(事務所)ともども、一挙に叩いていただくことを期待したいと思います。
皆さんもこうした「羊の皮を被ったオオカミ」にはくれぐれもご注意ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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