ヤマトホームコンビニエンスで水増し請求
image:グッド!モーニングより
クロネコヤマトの宅急便で名の通った「ヤマトホールディングス」の子会社で、引越し業「ヤマトホームコンビニエンス」が長期に渡り水増し請求をしていたとして、問題になっています。
2018年7月24日、「ヤマトホールディングス」の山内雅喜社長と、「ヤマトホームコンビニエンス」の和田誠社長が記者会見を開き、謝罪しました。
ヤマトホールディングス(HD)子会社の引越し業「ヤマトホームコンビニエンス」(YHC)の水増し請求問題で、HDの山内雅喜社長とYHCの和田誠社長が7月24日、国土交通省記者会で会見を開き、「心より深くお詫び申し上げます」と謝罪した。
一部の顧客企業に対し、荷物量を水増しして、料金を過大に請求していたことを認めた。
出典:弁護士ドットコム
水増し請求とは具体的に何があったのか?
image:グッド!モーニングより
「ヤマトホームコンビニエンス」の水増し請求は法人引っ越しが対象で、総額17億円にのぼります。
2018年7月31日追記
その後の調査結果から、17億円から31億円に膨らんだことが判明しました。
以下の記事では宅配便の値上げなどで営業利益は増えているとなっていますが、YHCの法人の新規受注は停止しており、今後の信頼という面ではマイナス要因になりかねません。
ヤマトホールディングス(HD)は31日、子会社ヤマトホームコンビニエンス(東京都中央区)による法人向け引っ越し代金の過大請求額について、これまでに判明していた約17億円に加え、調査結果を踏まえて新たに約14億円を見積もり、過去5年間で計約31億円としたと発表した。
出典:産経新聞
期間は2016年5月~2018年6月の2年間。
(実際は2010年ごろから行われていた可能性あり?)
件数は分かっているだけで4万8000件、対象社数は2640社と膨大です。
以下は「ヤマトホームコンビニエンス」から顧客へ渡す請求書です。
image:WBSより
この中で、トン数が「5t」となっていることが分かります。
つまり「5t」運べる車両で運搬したことを表しています。
image:WBSより
そしてこちらは、内部の作業連絡票です。
image:WBSより
運搬した荷物に関して、「BOX1本分」とだけ記載があります。
image:WBSより
BOXとはこの「専用ボックス」のことを指しており、最大600kgまでを積み込めます。
image:WBSより
顧客への請求は「5t」分の金額。
実際に運んだのは「600kg」以内。
単純計算では1/8の量しか運んでいないのに、8倍以上運んだとして金額を請求しています。
見積のときより荷物が減っても差額を清算せず最大で19万円を多く請求していたようです。
これが「水増し請求」の “手口” です。
もはや水増しというよりは詐欺に近い差額ではないでしょうか?
何故2年間も気づかれなかったのか実に不可解です。
顧客の経理が請求書を受け取った段階で気づいて、指摘をされた場合のみ返金対応していたとしたら?
発覚は内部告発
image:WBSより
この水増し請求は、内部告発によって発覚しています。
2018年7月2日に、「ヤマトホームコンビニエンス」四国法人の元営業支店長・槙本元さん(65歳)が記者会見を開き、この水増し請求について告発をしていました。
今回の謝罪会見はその内部告発を受けてのものとなります。
しかし7月2日に内部告発の記者会見をしているにも関わらず、7月24日にホールディングスが謝罪会見とは、ずいぶんとノンビリ気分ですね。
また、2011年の段階で社内通報もあったようですが、個別案件として相手企業に対応したものの、
(この時点で)全国的な問題という認識はなかった
と山内社長は釈明しています。
この言い方だと、少なくとも山内社長の耳には入っていたというように聴こえます。
今回の対象期間は2016年5月~2018年6月の2年間となっており、2011年の通報ということは、もっと以前からその兆候があったはずです。
内部告発をした槙本さんは、少なくとも2010年から水増し請求があったと話しています。
社内通報があった時点で、全国の営業所で内部調査を行い、顧客への影響範囲と被害の大きさを鑑みて、顧客への謝罪・返金、業務改善を行うのが大企業の本来の責任・姿勢だと思いますが、どうも山内社長にはそうした対応を行う「認識」が無かったようですね。
耳には入っても、心には届いていなかったのかもしれませんね。
「ヤマトホームコンビニエンス」の謝罪
image:WBSより
公式ページで以下のように謝罪文を掲載していましたので、全文を転載いたします。
法人のお客さま向け引越サービスにおける不適切な請求について
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
このたび、弊社が法人のお客さまに提供している引越サービスに総額約17億円の不適切な請求があった事実を確認いたしました。弊社の引越サービスをご利用いただいている法人のお客さまをはじめ、ヤマトグループのサービスをご利用いただいているお客さま、および関係者の皆さまの信頼を裏切り、多大なご迷惑ならびにご心配をおかけしましたことを心から深くお詫び申し上げます。
弊社は不適切な請求があった全ての法人のお客さまへのご一報と謝罪を完了し、 今後、不適切な請求分を速やかにご返金するなど、引き続き誠意をもって対応してまいります。
6月28日より当面の再発防止にあたっており、7月17日に社長直轄の「事業構造改革推進室」を設置し、抜本的な再発防止策の策定に着手しました。
またヤマトホールディングス内に外部の独立した専門家で構成する調査委員会を設置し、8月中に当委員会から本件に関する詳細な調査結果等の報告を受ける予定です。
なお、当調査委員会の報告を受け、再発防止策が機能を開始するまでの期間、弊社は法人のお客さまと契約する引越しサービスの新規契約、新規受注を中止させていただきます。
お客さまには多大なご迷惑をお掛けしますが、二度とこうした事態を招かぬよう、全社を挙げてさらなるサービス品質向上と信頼回復に努めてまいります。
詳細につきましては、下記ニュースリリースをご参照ください。
2018年7月24日
ヤマトホームコンビニエンス株式会社
代表取締役社長 和田 誠
この文中に原因が記載されていませんね。
外部の調査委員会で調査した結果を8月に報告するとのことです。
法人の盲点
今回の水増し請求は、明らかに「ヤマトホームコンビニエンス」の悪質な業務の常態化が問題ではと思われます。
(まだ調査中なので推測に過ぎませんが)
しかし顧客である「法人」の側には問題は無かったでしょうか?
法人の規模にもよりますが、20万円程度多く請求をされても気づきづらいという会計処理の盲点があります。
個人では金額が小さく、依頼主と請求書の受け取り先が同一なので気づかれやすい。
法人は依頼元の部署と、請求書の受け取り先の部署(経理)が別なので気づきにくい。
裏を返せば、「ヤマト」というブランドへの盲目的な信頼と、請求書の内訳を精査せずに出されるがままに支払う杜撰な会計処理。
「騙されたやつが悪い」とは言いません。
しかし、そんな杜撰な会計処理をしていて、どうして社員には売り上げをあげろだのなんだのと言えるのでしょう。
ひとつの企業としてはどうってことの無い金額かもしれませんが、社員への示しをどうつけるのでしょう。
「経理に任せてた」と逃げますか?
経理を叱責したら済みますか?
まとめ
image:WBSより
山内社長は、組織ぐるみは否定しました。
しかし、「ヤマトホームコンビニエンス」の和田誠社長は、一部の社員からは業績を上げるためにやったことがあるという証言があったと話しています。
事が大きくなってから慌ててヒアリングをしたのでしょう。
しかし、例えばどこかの営業所だけ局所的にやっていて、全体の1%から5%くらいに収まるのなら組織ぐるみではないと言えますが、今回はどうでしょう?
過去2年間(2016年5月~2018年6月)に引越しサービスを提供した3367法人の全約12万4000件を調査したところ、2640社の約4万8000件で総額約17億円の不適切な請求
出典:弁護士ドットコム
この件数を分母として計算すると、39%が不適切だったことになります。
2年間だけでも40%近くの案件で行われるほど常態化していたことが、なぜ安易に組織ぐるみではないと言い切れるのでしょう。
組織ぐるみとは、「会社組織すべてが関係しているさま(出典:Weblio)」を指します。
別に社長が直接指示をしていなくても、会社全体に蔓延している場合でも組織ぐるみといえるのではないでしょうか。
社長が「組織ぐるみではありません」という時、いつも「私は知りませんでした」と言っているように聴こえて仕方ないんですが。
こういう数字が出てしまっている以上は、「私の責任であり、不徳の致すところ」くらいにして、平身低頭謝罪する方が良いような気がします。
「私が指示を出したものではございませんが、いつしか組織全体に蔓延してしまっておりました」みたいに言えば、社員のせいにして逃げだしたとしか見られませんしね。
対象の顧客には既に謝罪済で、これから返金を進めていくそうです。
株主には「ヤマトホームコンビニエンス」として、負債額がどの程度のダメージになるのかはきちんと説明をすべきではないでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
関連記事を紹介させていただきます。
レオパレス21倒産の危機。界壁無しの建築基準法違反は2600棟が対象、20億円以上の補修費か。ISO9001は妥当だったのか?株価は下落する一方。
レオパレスの補修費拡大か?建築基準法違反で屋根裏部屋(天井裏)があるテラスハウスも界壁無しと対象範囲を追加。60%に減った株価、倒産危機は終わらない。
レオパレス界壁無し問題の調査進捗を確認したら工期が3年半なんだが大丈夫か?建築基準法違反で倒産を恐れる株主総会で資料未提出の大荒れ。
コメントを書く