「オプジーボ」でノーベル賞受賞!
image:グッド!モーニングより
京都大学の本庶佑特別教授(76歳)がノーベル生理学医学賞しました。
受賞決定の理由は、新しいがん治療法の発見です。
おめでとうございます!
日本人のノーベル賞受賞者は2年ぶり、26人目となります。
テキサス大学のジェームズ・アリソン教授(70歳)と同時受賞となりました。
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テキサス大でのアリソン氏の同僚で、本庶氏を知る上野直人教授は、このように語ります。
2人の受賞は当然の結果
両者とも(研究者の中では)アイドル的な人
(本庶教授は)鋭い直観を持っておられて
先が見える方なのかなという印象は強くあります
医学界では既にアイドル的とまで言われる方が、満を持して受賞されたということです。
それでは「オプジーボ」とはいったいどういったものでしょうか?
がん治療に革命をもたらした、全く新しいがん治療の原理が確立したと賞賛される画期的ながん治療法とは、いったいどういったものなのでしょうか?
免疫療法とオプジーボとは?
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人間は免疫能力で病気と戦う力を持っています。
免疫を高めることで病気になりにくい身体にする、というような話は聞いたことがあるかもしれませんね。
もちろんがん細胞へ免疫細胞が戦いを挑むことは出来るのですが、がん細胞は免疫細胞の攻撃から逃れる逃げ道をいくつも持っています。
この逃げ道はまだ全てが発見されてはいませんが、これを止めることができれば、免疫療法は成立すると考えられてきました。
本庶氏は、人の免疫細胞の表面にあるたんぱく質(PD-1)を発見しました。
(下の絵では免疫細胞から出ている手の部分にあたります)
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このPD-1ががん細胞の一部と結合して、免疫細胞の働きにブレーキをかけてしまうことを発見しました。
つまりこれが「逃げ道の一つ」です。
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そこで、PD-1ががん細胞と結合することを防ぎ、免疫細胞の働きを再び活性化させる方法を研究しました。
この研究から生まれた治療薬「オプジーボ」は、”盾” となりPD-1ががん細胞と結合することを防ぎ、ガン細胞を攻撃し続けられるようにできます。
(下の絵ではオレンジの物質が「オプジーボ」です)
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この治療法は、皮膚がんや肺がんなどで効果を実証されています。
これまでがん治療に使われてきた外科手術、放射線、化学療法というがん細胞を直接除去したり攻撃する三つに加えて、免疫療法という第四の治療法の扉を開きました。
従来の抗がん剤による治療は正常な細胞もやっつけてしまうため、吐き気や強い副作用が出てしまいました。
オプジーボはそうした強い毒性が現れないことが特徴です。
免疫療法はこれまでも理想的な治療法と言われてきましたが、効果が薄く、机上の空論ばかりだったそうです。
オプジーボで実際に医療の現場で使えるまでにしたことは非常に意義の高い研究だったということになります。
オプジーボと免疫療法は、既に多くの患者の命を救っています。
ステージ4の患者がオプジーボの治療によりみるみるがん細胞が小さくなっていったという結果もでているそうです。
肺がん患者が完治して社会復帰できている事例もあるそうです。
進行がんの患者にとって非常に希望が少なかったがん治療を、一気に可能性を広げてくれた、まさに画期的な治療法だったのです。
オプジーボの弱点
非小細胞肺がんの場合では、6割程度に患者には効果がありますが、4割の患者には全く効果が無いという結果も出ています。
免疫療法は、免疫細胞ががん細胞を認識していることが前提になりますので、認識していない場合や、対象のがんがPD-1とは別の逃げ道の場合にはオプジーボの効果が発揮されないということになりす。
オプジーボはまだ万能ではありませんが、ほぼ効果を見いだせていなかった免疫療法を大きく発展させました。
今後、この研究を礎にして、さらに効果の高い免疫療法が開発されてくることが期待されています。
いつの日か、人類ががんを完全に克服できる日が訪れるのかもしれませんね。
本庶佑氏とは?
image:グッド!モーニングより
1942年1月27日生まれの76歳。
出身は京都府京都市。
大学は京都大学医学部。
趣味はゴルフと美術鑑賞。
子どものころから好奇心の塊で、興味を持ったことは何でもやる性格だったようです。
小学生のころは天文学者になりたいと言っていたそうです。
勉強は何でもできたため、大学進学の際には進路に悩んだそうです。
得意の英語を活かせる外交官か弁護士か、医者か。
1960年、伝記で感銘を受けていた野口英世に憧れていたため、多くの人を助けたいと京都大学医学部に入学したということです。
学生時代は吹奏楽でフルートを吹き、麻雀を楽しんだそうなので、勉強ばかりだったわけでは無かったようです。
1971年にアメリカ留学し、そこで分子免疫学に出会います。
この時から免疫療法への道が始まりました。
1974年に帰国、東京大学で助手になりました。
1977年、帰宅中にアイデアが浮かび、論文として発表したところ世界的に評価を受けるということがあったそうです。
若かりし頃からすでに世界で評価を受けていたということですね。
1984年、京都大学の教授に就任します。
研究室では厳しい指導で知られています。
求められるレベルが非常に高く、逃げ出したいと思う学生も多かったそうです。
反面、研究室を離れると、教え子を食事や飲み会に誘うような面倒見の良さもあります。
飲み会でカラオケにいくと定番はなんと「六甲おろし」。
阪神タイガースの大ファンだそうで、熱唱をするそうです。
経歴や容姿からはちょっと想像できないかも…。
1992年に、ついに「PD-1」を発見しました。
これが後に「オプジーボ」開発に繋がっていきます。
京都大学での口癖は?
「疑問にこだわれ!」
「スティック・トゥー・ザ・クエスチョン」
(難しい問題も興味を持って考え続けろ)
「ブレインストーム」
(頭がこんがらがったら嵐を起こしてスッキリさせろ)
他にもあると思われますが、こうした言葉が口癖だったようです。
視座と諦めずに取り組み続ける姿勢を説いているようですね。
座右の銘は?
image:モーニングショーより
有志竟成(ゆうしきょうせい)
志があれば竟に成る。
目標を定めてそれに向かって邁進すること。
とことんやる、頑固に徹底的にやるという気持ちがよく表れた座右の銘ですね。
ゴルフがかなり上手
今一番したいことはと問われると、エージシュートがしたいと答えられました。
エージシュートとは、ゴルフで18ホールを自分の年齢と同じスコアで回ることです。
つまり76(76歳)で回るということです。
これはかなり腕前が無いとできない目標ですが、本庶氏は目標達成のために筋トレやパット練習を欠かしていないそうです。
仕事も趣味も「乗り越え癖」が身体に染みついているからこそ、この研究成果に繋がったのかもしれませんね。
また理想の死に方は、ゴルフ場で第2打がグリーンに乗ったときに倒れることだそうです。
なかなかレアな状況ですが…
そこまでゴルフが好きな理由は、芝の状態でボールの転がりが異なるため、常に考えていないと大変なことになるところが研究に繋がるからということです。
趣味も研究と繋げて取り組んでいるところが、まさに本庶氏らしさなのかもしれませんね。
研究者になるために一番重要なこととは?
image:モーニングショーより
研究者になるために最も大切なこと本庶氏が語っていました。
何か知りたいと思う
不思議だなと言う心を大切にすること
教科書に書いてあることを信じない
常に疑いを持って
本当はどうなっているんだろうという心を大切にする
つまり自分の目で物を見る
そして納得する
そこまで諦めない
有名な科学誌「サイエンス」で発表される論文のほとんどがウソだと言ってのける本庶氏。
それは本庶氏自身が直に目で見た結果でなければ信用しないという科学に対する姿勢を表現したものなのかもしれませんね。
研究者の醍醐味とは?
誰も見向きもしない
湧き水をみつけて
その流れを小川から
大河に育てること
小さな疑問を大きな研究に育てるという醍醐味。
しかし、そもそもいくら研究をしても成果として認められないことをしていては意味がありません。
誰も見向きはしないけれども、成果を出せば大きく評価される研究を「嗅ぎ分ける嗅覚」もまた、研究者の能力なのだろうと思います。
賞金1億1500万円の使い道は?
平和賞を受賞したオバマ元大統領は、ハイチ地震復興などに取り組む団体などに寄付をしています。
はたまた物理学賞を受賞したアインシュタインはというと、不倫のすえの離婚で慰謝料として全て元妻に譲ったそうです。
なんと離婚の条件が、ノーベル賞をとって賞金を妻に譲るというものだったから驚きです。
(それで本当にとってしまうところが天才たるゆえんなのかも。。)
賞金は多くの受賞者が学術や社会貢献のために費やす傾向がありますが、そんなわけで自分の為に使っても良いものではあります。
では本庶氏はどのように使うのでしょうか?
本庶氏には、ノーベル賞の賞金として、900万スウェーデン・クローナ(約1億1500万円)が共同受賞者のジェームズ・アリソン米テキサス大教授(70)と等分して贈られる。本庶氏は、読売新聞の取材に「学長にはまだ言っていない」とした上で、京大に寄付する意向を明かした。これまでの研究で得た利益についても、若手研究者の支援に活用していくという。
出典:読売新聞
後発の研究に投資されるようですね。
これまでの多くの人に感謝を述べられていた本庶氏ですので、想像していた通りでした!
自分ひとりで成し得たものでは無いと考えたら、自分では使いづらいですよね。
まとめ
挫折しなかったからここまで来た
大きな壁にぶつかったことはあるが
このように人生を振り返っています。
天才はすごいなあ…と一見思ってしまいますが、壁が現れるたびに乗り越えてきたということですよね。
つまり、天才とは努力し続けることができる人なのです。
しかもそれを苦に思わない人ですね。
どんなに地頭が良くても努力できなければ、研究者には向かないでしょう。
また、自分の性格を「頑固者」と評しているようで、「自分では思わないが、妻が、他人の意見をきかないと指摘するんです」と苦笑いしたそうな。
本当の頑固者は、自分の言ったことに対して責任を持つ強さが必要です。
ここまでの内容で、研究者に向いている人がちょっとだけみえてきましたよ。
本庶氏はゴルフが好きですが、ノーベル賞を受賞した大村氏もゴルフはシングルの腕前だそうです。
本庶氏はゴルフのことを、常に考え続けないといけないから研究と共通すると評しています。
実はゴルフはスポーツ界の脳トレなのかもしれない!?
また子ども時代に天文学や昆虫などに興味を持っている人は頭が良い人が多いそうです。
本庶氏も子供のころ天文学に興味を持っていました。
我が子に無理やりこうした物事に興味を持たせることはできませんが、もし子供が興味を持ったら、めいいっぱい協力して、努力し達成する楽しさを味あわせてあげると、我が子も将来のノーベル賞候補かも!?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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