ウミガメに刺さったストローを抜く動画から始まった
2018年はまさにアンチプラスチック元年と言える年でした。
ウミガメに刺さったストローを抜く動画から、全ては始まりました。
スターバックスとマクドナルドがプラスチックストロー廃止を宣言し、他の大手企業も次々と追随しました。
ストロー廃止に意味があるの?という疑義を言う方も多くおられましたが、もちろんストローだけでは意味は無いでしょう。
業界のリーディングカンパニーが率先してプラスチックをやめるアクションをすることは、全世界に大きな影響力を持ちます。
肝心なことは意識改革なんです。
漫然と行い、垂れ流し続けていたことを切り替えるのには多くのエネルギーが要ります。
その試金石がストローの廃止であれば良いのです。
それでは次項から、ストローとは何か?
海洋を汚すマイクロプラスチックとは何か?
生分解性プラスチックに切り替えればいいのか?
そういったことを詳しく、分かりやすくお話していきます。
ストローとは?
飲み物などを吸い上げて飲むために使う器具です。
あえて説明するようなことでもありませんね。
プラスチックで作られる場合がほとんどです。
EUが海洋ごみ削減のためストロー禁止へ
2018年6月28日、欧州連合(EU)の欧州委員会で、ストローや皿など、一部の使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する方針を発表しました。
対象はスプーン、フォーク、ナイフ、皿、ストローのほかに、軸の素材がプラスチックの綿棒や風船を結び付ける棒など、細かな、屋外に持ちだすことの多い製品に限定しているようです。
2019年5月末までにEU加盟国と欧州議会の承認を得て、2021年からの実施を目指すようです。
EU加盟国に対して2025年までに、ペットボトルの回収率を90%以上に高めることも要請しています。
EUを初めとして、徐々に世界ではプラスチックゴミを出さないような動きが活発化しています。
その背景には、プラスチックごみによる深刻な海洋汚染があります。
海洋ゴミの85%がプラスチック
image:EU MAG
海洋ゴミの85%がプラスチックという研究結果が出ています。
実際のところプラスチックのストローがどの程度、海洋汚染の原因になっているのかは明確になっていないそうですが、プラスチックの性質と起こっている事実は僕たちも知ることができます。
プラスチックは、熱が加えられたり太陽の光があたったりするともろくなる性質があります。
しかし微生物などで分解されて水などに戻っていく性質がありません。
海洋に浮かぶプラスチックは小さく砕けても、無くなることがないため、「マイクロプラスチック」という微細なプラスチック片に変わっていきます。
そうしたプラスチックを海洋生物が食べてしまうことで生態系異常が危ぶまれています。
また「マイクロプラスチック」になる前の比較的大きなプラスチックゴミを食べてしまったり、ストローを飲み込んで突き刺さってしまったりと海洋生物への被害も確認されています。
2015年に絶滅が危惧されているウミガメの鼻に刺さったプラスチック製ストローを取り除く動画が拡散され、プラスチックストローの問題意識が高まったとされています。
以下は「National Geographic」の映像です。
少しショッキングかもしれませんので、弱い方はスルーをお願いいたします。
httpss://www.youtube.com/watch?v=4wH878t78bw&feature=youtu.be
もちろん、こうしたプラスチックを食べた魚を人間が食べている可能性だってあるわけですし、実際に香港で見つかっているそうです。
香港で取れた多くの魚がプラスチックを食べており、人間の食卓にも影響している可能性がある。大学や環境保護団体グリーンピースの調査で明らかになった。
研究者らによると、魚から80個のプラスチックが発見されたこともあるという。
これが人間の身体にどう影響を及ぼしているんでしょうね?
考えると気分が悪くなってきました。
生分解性プラスチックストローの問題点
image:ストローランド
通常のプラスチックのストローに対して、エコで優しいと言われている生分解性プラスチックストロー。
とうもろこしなどのでんぷん由来の新しい樹脂(ラクリエ)を原材料としており、生分解の性質を持っています。
使用後に生ごみと一緒に処理でき、焼却しても有害物質を出しません。
この生分解性プラスチックストローは自然循環するのでエコであると、注目されています。
スターバックスで有名なシアトルでも、この生分解性プラスチックストローに代替されるようになっていました。
しかし、この生分解性プラスチックストローにはとんでもない欠点があったようです。
「プラスチックの海」という、プラスチックの海洋汚染について詳しく記事にされているブログから抜粋させていただきます。
生分解性プラスチックのストローは,そのまま裏庭に捨てても分解されないのです.ある一定の温度や微生物を必要とするため,特別な産業設備で処理する必要があるのです.ましてや海に入ってしまったら半永久的に残り続けます.
出典:プラスチックの海
生分解性プラスチックのひとつに「酸化型生分解性プラスチック」があります.
酸化型の生分解性プラスチックの問題点は,酸化分解の過程で急速に微細化して,膨大な数のマイクロプラスチックを生み出してしまうことです
酸化型生分解性プラスチックの酸化分解スピードは速いので,あたかも大きなプラスチック製品が急速になくなってしまうような印象を与えますが,発生したマイクロプラスチックは,従来のマイクロプラスチックと何ら変わりはありません
酸化型生分解性プラスチックから発生したマイクロプラスチックは,海などの自然環境条件下では,完全に生物分解されるのにしばし数十年間〜という非常に長い時間がかかります
そのため生分解性プラスチックから発生した小さな破片は,環境中に長く留まり,生態系に脅威を与え続けることになります
出典:プラスチックの海
つまり、酸化型生分解性プラスチックについてはその真価は地上で最大限に発揮されるものであり、海洋にでてしまうときちんと生分解されないということですね。
むしろ「マイクロプラスチック」を増やしてしまう結果になりそうです。
米スターバックスがプラスチック製ストローの廃止を決定
米コーヒーチェーン大手スターバックスは9日、使い捨てのプラスチック製ストローを、2020年までに全世界の店舗で廃止すると発表した。プラスチック製ストローは海洋汚染を招くと指摘され、利用禁止を求める声が広がっていた。
ストローを使わなくても飲めるふたや、紙製のストロー、肥料として再利用できるプラスチックへの切り替えなどを進める。
スタバの1号店がある米西部ワシントン州シアトルと、カナダのバンクーバーで今秋に導入した後、19年中に米国とカナダ全体に広げる。それ以外の地域でも20年までに実施する方針だ。
出典:Yahoo!ヘッドライン
2018年7月9日にスターバックスから発表された廃止宣言です。
廃止してどのようにコーヒーを飲むのか?
それは、ストローをささずに飲み口が付いているふたに変更していくということです。
また、紙製のストローなども併用が検討されていようですね。
日本のスターバックスも同様に2020年を目標にプラスチック製のストローを廃止していくようです。
飲み口が付いたふたとは、こういうタイプになる模様です。
image:ITmedia
image:ITmedia
世界に280000もあるスターバックスは、毎年10億本ものストローが使用されているそうです。
スターバックスコーヒーを片手に海辺でのんびりして、そのまま放置して波にさらわれる、なんてシチュエーション、いくらでも思いつきます。
そんなシチュエーションでは無くても、普通に不法投棄ゴミの中に含まれていることもあるでしょう。
スターバックスの試みへの反応
image:CNET Japan
このスターバックスの試みに対して、賞賛する意見が大半ではありますが、批判もでてきています。
まず飲み口のついたふたです。
あるツイッターのユーザーは、「1.プラスチック製ストローをやめる 2.代わりに大きなプラスチックの飲み口付きふたにする」と皮肉るコメントを投稿した。
プラスチックのストローを無くして、飲み口の分のプラスチックを増やしたふたに変えたという、皮肉ですね。
確かに、ふたとストローは1:1で使うものなので、ふたも海洋汚染をしているという目線を忘れてはいけないのかもしれません。
また、障害を持った顧客からも厳しい意見があったようです。
障害のためにストローが必要な人もいると指摘する声もあった。
あるスターバックスの顧客は、「ストローが必要な障害者はどうするのか。ないと私は飲んだり食べたりできない」とツイートした。
先折れストローでないと飲み物が飲めない障害者の方は確かにおられると思います。
この指摘に対して、スターバックスは、紙製のストローなどの選択肢を用意するとしています。
またフラペチーノ類の飲料はストロー付きが基本とも答えているようです。
確かに冷たいフラペチーノを広い飲み口でゴクゴクいきたくないですよね(^^;;
しかし、紙製でも先折れって問題ないものなんでしょうか?
米マクドナルドもプラスチック製ストローの廃止を決定
マクドナルドもこの動きを経て、プラスチック製ストロー廃止を決めました。
日本のマクドナルドも取り組んでいくようです。
世界のマクドナルド全体で2025年を目標としているので、日本もそこを目指すのでしょう。
マクドナルドでは紙製ストローに切り替える方針のようです。
紙製ストロー普及の問題点
image:雑貨 mag
どうしてもストローを使いたい場合は絶対にあります。
例えばスターバックスのフラペチーノのような飲料や、障害者のための先折れストローです。
そうしたニーズに応えるため、今後は紙製のストローに変わっていくようです。
紙製?溶けちゃうのでは?
そう思いますが、今はかなり丈夫な紙製ストローが開発されているようです。
昔の紙製ストローはひどかったようで,すぐもろくなるし,飲み物が漏れていたようです.プラスチックの出現でストローは安く,便利になりました.しかしプラスチックストローによる環境問題の声が大きくなり,再び紙製のストローが注目されています.ここ数年で,紙製ストローの耐久性はすさまじく進化しています.
(中略)
他社でも紙製ストローが販売されていますが,漏れやすかったり,裏地がプラスチックでコーティングされている半分インチキな紙製ストローまであります.Aardvark社の紙ストローは,1日中ドリンクの中に入れても漏れない丈夫な紙ストローです.
出典:プラスチックの海
「1日中ドリンクに入れても漏れない」という強度なら、確かに問題は無さそうですね。
問題はコストです。
おおよそですが,一般のプラスチックストローは0.5セントのコスト,生分解プラスチックのストローは1セント,紙製ストローは1.5セントのコストがかかります(Oceans Deeply).
出典:プラスチックの海
紙製のストローはプラスチック製ストローの2.5倍のコストがかかるということです。
1セント=1.1円として日本円に換算すると、プラスチックストロー1本は0.55円。
毎年世界で10億本のストローを使うスターバックスでは、ストローだけで5億5千万円のコストが掛かっていました。
もし全てを紙製ストローにすると、2.5倍なので、13億7千5百万円のコストに変わってしまいます。
なんと8億2千5百万円もコストアップしてしまうわけです。
それを商品代金に積み上げるのか否かというところはまた議論が起こりそうです。
この結果からは、全てを紙製ストローに変更するという選択肢が無かったんだろうなぁと思いました。
まとめ
image:無印良品
今のストローはプラスチックでできているものが主流ですが、かつては「麦わら」を材料にして製造されていました。
元々、ストローの原材料は麦の穂を切り取った残りの麦稈(ばっかん)すなわち麦わら(straw)そのものが利用されていたためこの名前で呼ばれる。普通の麦わらと区別するには drinking straw と呼ぶ。
出典:Wikipedia
麦わらのことを「ストロー」といい、それがそのままストローという言葉として利用されるようになったようです。
日本でも1950年代後半ごろまで、喫茶店ではストローとして麦わらが使われていました。
麦わらを冷えた飲み物のコップに付着した水滴を利用して縦に貼り付けて、ウエートレスが席へ運び提供していたようです。
その後麦の栽培が減り、原材料費を抑えるためプラスチック製のストローが普及しました。
もう70年も経つので麦わら製のストローは化石と呼んでもいいのかもしれません。
しかし確実に「昭和の時代」に存在していたこともまた事実です。
この麦わらストローは自然のものなので、紙製ストローとあわせて復活させられないのかな?とか考えてしまいます。
麦ストローを復刻させて販売している会社は実はあるようです。
調べてみたところ、Amazonに素材舎という麦ストローを販売しているショップがありました。
気になれば以下のリンクから確認してみてください。
7本200円(送料別)で販売していました。
プラスチック製ストローとは比較にならない価格ですね。
これは昔を懐かしんで使いたい個人の方や、レトロ喫茶などでの利用シーンを想定されているのかなと思います。
また無印良品でも「麦わらストロー」という商品がみつかりましたが、これは販売しているか未確認です。
image:無印良品
日本では麦の生産はあまりやらなくなりましたが、世界の麦生産が多い国では単価を安く生産できるのではないでしょうか。
(2016年の外務省の統計だと世界第1位は中華人民共和国ということではありますが…それはそれで変に強気に出られそうで微妙ですね)
あとは、金属製のマイストローを持ち歩く。
先折れの部分をどうするか?むむ。
こんなチタン製参ストローなんていうものもあるようでした。
image:Gigazine
海洋ゴミとしての問題はプラスチックのストローだけではありません。
プラスチックのストローを狙い撃ちしているのは、ウミガメに突き刺さった映像から始まった世界的な流れに従っているだけのような気もします。
プラスチックという素材を捨てることができないのなら、海になんでも捨ててしまう意識の低さを変えていかないとと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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