Bubble90(バブル90)
世界の水不足を解決できるノズルが日本で誕生しています。
その名は「Bubble90」。
バブル90と呼びます。
なんと節水率90%という驚異の効果を発揮します。
バブル90はこの「90%」から由来しているんですね。
ん?このバブルってなんだろう?
それはこれからたっぷりとお伝えしていきます。
その効果は節水だけにとどまりませんよ。
Bubble90の最大の効果は3つ!
最大の効果は3つあります。
よく言われる効果は2つ【節水力】【洗浄力】ですが、僕はもう一つ、大きな効果に注目しています。
では、それぞれについて説明していきますね。
節水力
90%~95%の節水能力があります。
環境に優しいだけではなく、水道代の大幅な節約に繋がります。
洗浄力
水が出る時に空気を取り込む性質を利用して、空気を含んだ球状にして水を射出する仕組みのため、水は「叩きつける」ように対象に当たります。
そのため、わずかな水でも「こそぎ落とす」ことで強い洗浄力が得られます。
節電力
従来にも洗浄便座などに使われるノズルは、同じように球状にして射出する機能を持っていましたが、電気を使っていました。
電気に頼らず射出時の吸気だけで球状にするという画期的なアイデアで節電にも寄与します。
この効果はなかなか気づきにくいかと思いますが、必要エネルギーゼロで大きな効果を出すということは本当に難しく、世界の環境問題に取り組むエンジニアにとっての課題となっています。
この「電力ゼロ」がいかに凄いことかも、ご理解いただけましたでしょうか。
Bubble90の秘密
Bubble90がどのようにしてこのとてつもない効果を生み出しているのかを分かりやすく説明しますね。
※画像提供はテレビ朝日モーニングショー
Bubble90は簡単に水道の蛇口に取り付けられます。
水道というのは射出時に空気を取り込む性質があります。
中央の管から空気を取り込み、それを4つに分けた細い管から水と融合させ、球状にして射出するというのがコアになる技術です。
以下は通常の蛇口から出る水の場合です。
水はただ重力に従って落ちるだけなので、汚れに対して上を滑り落ちるだけです。
そのため、多くの水が無駄になっています。
以下はBubble90を付けた蛇口です。
球状にして勢いよく射出することで、汚れに対してこそぎ落とす効果を生み、球状の水一つ一つが汚れを含んで流れ落ちていきます。
この球状にしてこそぎ落とす効果は以下の画像でご理解いただけると思います。
同じ量の水を同時に流したとき、Bubble90が無い方よりもBubble90がある方が汚れがどんどんと落ちていきます。
時間を掛ければ最終的な汚れが落ちる結果はだいたい同じですが、Bubble90が無い方はその結果を得るために大量の水を無駄に流しているということになります。
Bubble90の誕生秘話
実家を継がずサラリーマンへ
Bubble90を発明、製造している会社は株式会社DG TAKANO。
大阪府東大阪市の企業です。
社長は高野 雅彰さん。
会社は高野さんの実家である、町工場の2階です。
実家の町工場は57年も続いているガスコックを製造しています。
長男の高野さんは当然、お父様から後継ぎを期待されますが、「魅力を感じない」ということで断ってしまいました。
僕の友人でも、地方で伝統工芸の家に生まれ、東京でエンジニアをしているひとがいますが、やはり同じような理由を述べていました。
「子供のころから同じ作業をこつこつと続ける地味な仕事」というふうに、思っていたと、友人は言っていました。
実家がサラリーマンで継げるものがない身分としては「なんてもったいない!」と思いますが、当事者は違う気持ちを抱くようですね。
節水市場との出会いと実家での開発
※画像はイメージです。
そんな高野さんは大学を卒業しIT関連の仕事をしていましたが、ある日偶然に、他社製の節水ノズルをみる機会があり、「節水市場」というものがあることを知ったそうです。
確かに、「環境問題」「節電」という言葉は頻繁にメスメディアでも登場しますが、「節水」に着目するひとはそれほど多くは無かったのかもしれませんね。
「世の中にない新しいものを生み出したい」
そう決心した高野さんは、脱サラをして、なんと実家のお父様にノズルを製造するための技術を学ぶことになりました。
家業を継ぐことを断った息子です。
しかも家業のガスコックではなく、水道用のノズルです。
町工場の頑固オヤジなら、「ふざけんな!」と怒鳴り散らしそうなものですが、なんと黙って受け入れ、機械の操作を教えてくれたそうです。
好きにやらせようと思った、そのお父様の寛大さに、拍手を送りたい気持ちです。
機械工学や物理を専門に学んだわけでもない高野さんにとって、開発はそう簡単なものではありませんでした。
どれだけの水に対して、どれだけの水を含ませるのかの配分が難しく、穴の大きさ、位置を変えながら、何千パターンも試作をしていきました。
そして2009年、とうとう初代「Bubble90」が完成しました。
売れなかったBubble90をどう売ったのか?
いきなりのステーキ画像でびっくりされたかもしれませんね(笑)
Bubble90ははじめは全く売れなかったそうです。
どんなに飛び込みで営業を掛けてもそっぽを向かれる毎日。
その理由は、2011年の東日本大震災の影響が大きかったそうです。
2009年に完成したモデルを、こつこつ飛び込み営業しながら、改善していって、これから花開こうとしていたところで日本を震撼させた大地震。
原発の事故で電気が不足し、日本中で「節電をしなければ!」という空気が席巻していきました。
そんな世情で、節水の大切さを叫んでもなかなか企業はそこに投資をしてはくれません。
そこで高野さんが行ったのは、「いきなりステーキ」に無償で使ってもらい、効果を知ってもらうという営業手法でした。
企業が新製品をアピールしたいときにはよく使われる手法ではありますが、小さなベンチャー企業だった高野さんが行うには大きな決断だったと思います。
そこで明らかな節水効果が実証され、なんと全国254店舗のいきないステーキに導入されるまでになりました。
このBubble90を「いきなりステーキ」で使ってもらったことが、より効果測定に貢献をしたと思います。
なにしろ脂っこいステーキを置いていた皿、ギトギトなのはお分かりですよね。
それを洗い落とすのに、これまで普通の水道で洗っていたものを、Bubble90に変えただけで、かなり洗浄力があがり、仕事が楽になったといいます。
「いきなりステーキ」の全店で導入した結果、
なんと年間3000万円の節水効果
が確認されたということですから驚きです。
これなら飲食店で付けない理由はありませんよね。
その実績から、他の企業からも次々と声が掛かるようになり、売上が伸びていきました。
Bubble90で実現したい未来
こんな高野社長、世界の水の使用量を10%まで減らしたいという野望を持っているそうです。
節水効果が90%あるわけですから、Bubble90が世界中の蛇口に採用されたころには、本当にそうなっているかもしれません。
今は水不足に悩む中東やオーストラリアで営業し、広めようと活動をされているそうです。
公式サイトでも、水不足、環境破壊、景気後退に貢献できると宣言しています。
水不足、環境破壊は分かりますが、景気後退にも?
もちろんですよね。
水を使う飲食店の水道代が半分以下になれば、それだけ売り上げが残ることになりますから。
また、海外からも積極的に学びたいというエンジニアを受け入れています。
その技術者が技術を母国に広める役割を担っているというわけです。
株式会社DG TAKANOとしては儲からないのでは?
とも思いますが、もちろん特許は取っているため、海外で販売をする際には株式会社DG TAKANOにお金が戻ってきます。
一気に世界に広めるために、賢い選択だなと感心してしまいました。
世界企業こそ、綺麗ごとだけでは無いのです。
Bubble90の課題とこれから
少ない水量で強い射出力を実現できるBubble90ですが、課題点がありました。
同じ時間で出せる水量が、普通の蛇口に比べて圧倒的に少ないんです。
え?それが良かったんじゃないの?
そう思いますよね。
でも考えてみてください。
飲食店は皿を洗うことがメインの仕事ではありません。
例えば麺をゆでる時には鍋に沢山のお湯を沸かします。
その鍋の水を注ぐのに5倍も時間が掛かったら、たまったものではありません。
「いきなりステーキ」では、洗浄用の蛇口と、調理用の蛇口があったためにこの問題をクリアできましたが、小さな飲食店ではそうはいきません。
また家庭用にも、この課題のために発売できませんでした。
しかし!なんと2018年の秋ごろには家庭用にも発売の予定です。
通常の水だけを出すモードとワンタッチで切り替えられる機能を付けた新型が完成するためです。
これが発売されたら、もう鬼に金棒です。
一気に世界に広まっていくかも…!
と、凄い期待をしてしまいましたが、よくよく調べてみると、
価格は一番グレードの低いモデルでもなんと「25000円」!!!
むむむ…
一般に発売しても、この価格だとすぐには手がでませんよね。
家庭の水道代との費用対効果が分かりづらい。
長く使えればいいかもと思いますが、耐久性がどの程度あるのかも未知。
まずは飲食店に普及させていき、価格が下がってきたら、一般家庭へ普及していくのではないでしょうか。
まとめ
高野さん、2009年の「超モノづくり部品大賞」を受賞されていました。
ベンチャー企業の社長でもある高野さんの経営者としての凄いところは、まずこのノズルを作り上げた根性もそうですが、リスクも伴う無償提供に踏み切った、製品への自信と判断力ですね。
町工場で製造しているわけですから、大量生産のラインなんてないんです。
金型から作り、ひとつひとつ手作りになります。
それだけの手間とコストが掛かっていたはず。
この「気合と本気度」に感服です。
あとは、実家が町工場で機材と技術があったという、「運」もあったかもしれませんね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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