「瞑想」と「黙想」の違いと共通点
以前、剣道を10年ほどやっていました。
剣道では稽古の前後に「黙想」を行っていました。
剣道の他にも黙想をする武道はあると思いますが、ここでは剣道での黙想について説明します。
胴着と面以外の防具を装着し、板の間に正座をします。
そして、大抵は部長が「もくそう!」と言ってから黙想を始めます。
時間にしてだいたい3分くらいですが、部長のさじ加減だったりします。
黙想が終わったら、面を装着して稽古が始まります。
稽古が終わったら、また全員で正座をし、面を外してから黙想をします。
黙想が終わったら、稽古の終了です。
このように、稽古の始まりと終わりに必ず黙想を行っていました。
学校や師の考え方で、「黙想」ではなく「瞑想」をしている場合もあるようです。
実際に、他の学校に練習試合に行った際に、そこでは「めいそう!」と言っていました。
「黙想」と「瞑想」の共通している点は、座って目を閉じてしばらくじっと心穏やかにしている点です。
それでは、黙想と瞑想はそれぞれどういう違いがあるのでしょうか?
黙想
黙想は頭の中のごちゃごちゃを整えることが目的です。
学生ならそれまで勉強してきたことや、宿題のことや、週末の遊ぶ予定を考えてしまったりして集中できていません。
社会人なら仕事のこと、人間関係のことで頭がいっぱいの状態かもしれません。
そこで、まず黙想をすることで、これから行う剣道の稽古に意識を集中させます。
そしてどのように稽古に取り組むかの計画をたてます。
(昨日の試合では得意の面が冴えなかった。今日は初心にかえって面の練習をしよう)
(普段から声が出ていないから、もっと気合を入れて取り組もう)
(今日の地稽古は試合前だから先生に積極的に挑んでいこう)
※地稽古は一定時間ごとに相手を選んで試合形式で打ち合いをする練習です。
そんなことを頭の中で想定しておきます。
もし黙想をせずに稽古に入れば、漫然と練習をすることになります。
つまり、稽古の過程とゴールを定めることが、剣道における黙想の目的ということになります。
勉強も仕事も過程とゴールを定めてから取り組むかどうかで成果が変わってきますが、黙想はそういう日々の生活にも取り入れることは十分に可能です。
瞑想
瞑想は何も考えないことが最大の特徴です。
これから取り掛かる仕事のこと、重たい会議のこと、人間関係のこと、そういった雑念を払い、意識を解放させていくことが目的です。
意識を解放させてやることで、頭がすっきりします。
瞑想をし頭をすっきりさせてやることで、より前向きに取り組めるようになります。
剣道でも黙想ではなく瞑想をする学校があったと書きましたが、心を無にして邪念を払い、剣道という「道」だけをみるという、より高度な行為をしていたのかもしれません。
どのように稽古に取り組むかどうかは瞑想の後で各々でやるべしということになるでしょう。
でも、それを中学生や高校生に求めるのはなかなかに酷なので、もしかしたら先生があまり違いを意識されておらず使っていただけなのかもしれませんね。
このように「黙想」と「瞑想」の違いをみてわかることは、黙想は「考えること」が目的だったことに比べ、瞑想は「考えないこと」が目的と一見、逆の目的があることが大きな違いです。
しかし、最終的なゴールは実は同じだと思っています。
より前向きにアクティブに行動のきっかけにし、より良い結果を導くこと
この点で共通しているのではないのでしょうか。
マインドフルネスとは?
「黙想」と「瞑想」でいえば、「瞑想」に近いものがマインドフルネスです。
GoogleやYahoo、フェイスブックなど世界的に活躍する大企業でもマインドフルネスが取り入れられています。
- 仕事のことで頭がいっぱいでごちゃごちゃする
- 疲れが取れにくい
- 集中して取り組めない
- 記憶力が急に落ちてきたように感じる
- 以前より前向きに取り組めなくなってきている
こんな状態は、脳が疲れていることを表しています。
マインドフルネスはそんな脳の疲れを取り払う効果があるとされています。
脳が疲れているという時、よくうつ病の患者にも当てはめられます。
マインドフルネスは、うつ病の改善や予防としても有効とされています。
うつ病患者は世界で3億人を越えており、大きな問題となっています。
世界のうつ病患者の数が2005年からの10年間に18.4%急増し、2015年までに3億2200万人に到達したと発表した。
出典:AFP
企業で有能な社員がうつ病で倒れ、退社することが相次いでしまえば、その企業の首を絞めることになります。
社員の脳の疲労を取り除き、うつ病を予防したい。
世界中の企業でマインドフルネスが取り入れられているのは、こうした背景があると言えるでしょう。
マインドフルネスはまだ研究段階でもあるので、もちろん「プラセーボ効果」という意見もあります。
2017年10月10日にPerspectives on Psychological Scienceで発表された研究では、15人の著名な心理学者や認知科学者が、マインドフルネスはその人気に反して、科学的な証拠が欠けていることを指摘しています。特に、これまでの研究の多くに「マインドフルネスとはなにか」という一貫した定義がなく、プラシーボ効果を調べる比較実験が行われていない点がデータとして不十分だとのこと。
出典:GIGAZINE
それでも多くの企業で取り入れられているということは、実績・実感がなければありえないことでしょう。
僕はこの「多くの実感」というところを大切にすべきかなと思っています。
マインドフルネスの目的と効果
マインドフルネスの目的は雑念を払い、心を解放させることにあります。
効果は様々に提唱されているので全てではありませんが、僕が知っている効果は以下のものがあります。
マインドフルネスの目的
- 自分が雑念に囚われていることに気づくこと
- 雑念の外から自分を眺めてみられるようになること
- 自分の置かれている物事が思っていたよりも大したことが無いと思えること
マインドフルネスの効果
- ストレスの低減
リラックス状態に入る練習でもあるので、ストレスが低減されます。
リラックスにより副交感神経を優位に保ち、免疫力を高めます。 - 集中力の向上
1点に集中する練習をするため、結果的に集中力の向上に繋がります。 - 共感性の向上
心を解放することで相手の気持ちになって物事が考えられるようになります。
マインドフルネスの方法
方法はいくつも提唱されていますが、このステップで実際に効果があると感じています。
ルーティーンなので、この方法を継続して習得していくことになります。
1.座って背筋を伸ばします。
座位は胡坐でも、正座でも、椅子でも構いません。
手も自然にももに置いてもいいですが、肩の力が抜ける態勢のほうがいいでしょう。
2.呼吸を整えます。
目を閉じます。
息が入ってくることに意識を集中します。
息が出ていくことに意識を集中します。
心の中で入ってくること、出ていくことを思います。
呼吸は浅い呼吸でも、深い呼吸でも構いません。
3.雑念に気づき払っていきます。
雑念が浮かんできたら、雑念が浮かんだことに客観的に気づくようにします。
そして、また息が入り、出ていくことに意識を戻していきます。
この時に「呼吸に戻ります」と心の中で唱えると戻りやすいです。
4.五感で感じるようにします。
座っている感覚、息をしている感覚、空気の流れている感覚といった五感を同時に感じるようにします。
雑念が浮かんだら、3の方法で雑念を払って、また呼吸を感じることに戻っていきます。
5.徐々にまぶたを開いて終了です。
慣れないうちは5分くらいから始めていき、慣れてきたら15分、20分と時間を伸ばしていってもいいと思います。
タイマーをかけておくとより集中しやすいです。
実践していく日はまちまちだと思いますが継続が大事です。
朝にマインドフルネスを取り入れているような会社でもない限り、仕事に行く前は時間に追われているので、帰宅後や休日が良いと思います。
まさに雑念だらけの状態ですからね。
瞑想とマインドフルネス
黙想は「考えること」が目的で、その成果は明確です。
事前に黙想でやることを考えておいたおかげで、充実した稽古ができたと思えたのなら、それが成果です。
ところが瞑想もマインドフルネスも「考えないこと」「意識を解放すること」が主な目的のため、その成果を判定することが非常に難しいんですね。
強いてイメージを例えれば黙想は「足し算」、瞑想やマインドフルネスは「引き算」とでも言ったら分かりやすいでしょうか。
マインドフルネスと瞑想は厳密には違うもののようですが、同じものとして扱っている場合もあります。
「マインドフルネス瞑想」というように説明をする方も多くおられますね。
つまり、マインドフルネスという行為はまだまだ開発されて時間が浅く、方法にも複数あり、確立されたものでもないということです。
マインドフルネスの説明としてこうした記述があります。
マインドフルネスの語義として、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」といった説明がなされることもある
出典:Wikipedia
マインドフルネスは単に「考えない」のではなく、「今その瞬間だけに意識を向け続ける」というところが少し概念的に難しいところがあります。
「考えない」という点では同じですが、「意識を一点(呼吸)に集中させる」という行為が考えている行為との違いを見出しづらいのかもしれません。
また、座っている感覚、息をしている感覚、空気の流れている感覚といった五感を同時に感じるという行為も、「考える」のではなく「感じる」という行為なので、すぐにわかる人と、なかなか理解できない人に分かれるように思います。
マインドフルネスのメリットとしてひとつ言えるは、こうした「方法論」があるということだろうと思います。
瞑想のように「何も考えない」と言う行為の方がかえって難しく、どうしても頭に色々浮かんでしまうという人にとっては、マインドフルネスのように「方法論」があって、練習次第で習得できる方がとっつきやすいかもしれないので、どちらに取り組むかは人それぞれなのかもしれません。
座禅とは?
仏教には座禅という修行があります。
日本でも寺院では今でも修行の一環として行われています。
黙想・瞑想・マインドフルネスとの違いはなんでしょうか?
答えは、同じであり、異なるものでもあるということになります。
坐禅の持つ意味や目的の解釈は、禅宗でも思想により流儀が別れる。公案により見性しようとする臨済宗は、疑問を抱きつつ坐禅することにより悟りに至る看話禅の立場を採る。これに対し、曹洞宗は何かの目的のための手段として坐るのではなく、坐禅そのものが目的であり、坐ること自体に集中する黙照禅の立場に拠る。北宋時代に臨済宗と曹洞宗は理論的に激しく対立し、この対照は現代の日本にまで継続している。
出典:Wikipedia
このように、座禅は黙想のようでもあり、瞑想、マインドフルネスのようでもあります。
曹洞宗の坐禅そのものが目的であり、坐ること自体に集中するという行為は、いかにもマインドフルネスに近いように思いますね。
まとめ
僕はここ半年ほど、マインドフルネスに取り組んでいます。
純粋に仕事の前に行うことで気持ちをリフレッシュできると思ったのがきっかけです。
マインドフルネスは仏教では「悟り」とも言われているもので、苦しみからの解放が目的です。
過敏なこころが人間関係の中で苦しみを生み出し、崩壊するとうつ病や自律神経失調症などを患ってしまうことが非常に多いです。
僕はちょっと人より心配性、不安症なところがあり、以前は人間関係が嫌になりかけていました。
マインドフルネスをするようになってから、徐々に気持ちが楽になったと感じられるようになりました。
以前よりも五感が鍛えられ、世界が近く感じられる感覚があります。
集中力が高まると同時に、くよくよしないようになり、怒りの感情をコントロールできるようになりました。
これは「アンガーマネジメント」にもなっているのだと思います。
僕がひとつ工夫をしているのは、仕事をする前の5分は「黙想」をしてその日のビジョンを描きます。
仕事が終わったら「マインドフルネス」をして心を解き放ちます。
こうすればハイブリッドで効果を高めていくことができると考えています。
剣道家なりの工夫ってやつです(笑)
心配性、不安症、あがり症、潔癖症といったひとは、特にうつ病になりやすいと言われています。
うつ病の予防、うつ病の改善のために、マインドフルネスを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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