ゴーン容疑者は何をして捕まった?
image:グッド!モーニングより
かつて日産のピンチを救ったルノーとゴーン会長。
日産の労働者を沢山リストラして恨まれもしたゴーン会長。
そしてカリスマになったゴーン会長は、報酬の虚偽記載の容疑でゴーン容疑者になりました。
いったいゴーン容疑者は何をして捕まったのでしょうか?
「SAR」(株価連動報酬)や役員報酬の虚偽記載の他にもどういった嫌疑がかけられているのでしょうか?
不正な資金供与をしていたとされる姉、クロディーヌ(Claudine)氏とは?
報酬の虚偽記載について
日産では株価に連動して報酬を受け取る「SAR」(株価連動報酬)という仕組みを導入しています。
株価に連動して現金が支給されるという報酬制度です。
ゴーン容疑者はSARで約40億円分を受け取る権利を得ていましたが、有価証券報告書にはこの分が「0」と記載されていました。
image:グッド!モーニングより
日産の関係者が記載が無いことを指摘したところ、ゴーン容疑者は「個人情報」という理由で記載を拒み続けていたそうです。
また未記載の役員報酬が計80億円にのぼることも分かっています。
2015年3月までの5年間に得た100億円のうち50億円を過少申告、直近3年間も30億円の過少申告が確認されており、計80億円ということになります。
この80億円については、退任後の慰労金として受け取る約束をしていたことが分かっています。
その背景は、2010年以降に1億円以上の報酬をもらっている経営者の情報について有価証券報告書の開示を義務付けられたことがあります。
それまで年間20億円前後の報酬を受け取っていたことを有価証券報告書に記載していました。
つまりもらっている金額をそのまま報告していたわけです。
ところが、2010年以降は毎年10億円前後で公表し、残りの額を退職後の受け取る約束で「積み立て」ていたようです。
「契約終了後に日産から受けとる」という覚書も毎年作成していたようです。
株価連動報酬と役員報酬の虚偽記載を合わせると、120億円もの金額に膨れ上がっています。
将来受領することが確定した報酬についても、有価証券報告書への記載は必要です。
しかしケリー容疑者は記載の必要が無いと主張をしています。
その根拠は、
・支払名目が決まっていない
・実際に支払いがおこなわれていない
というものです。
確かにこの積み立てに変更したこと自体は、以前はきちんと記載をしていたことを鑑みると意図的に所得隠しをしようとしていたというよりは、高額報酬に対する株主からの批判を避ける目的だったと考えることは出来そうです。
なお、本人が直に側近のグレッグ・ケリー容疑者へ虚偽記載を指示していたことは分かっています。
ケリー代表取締役が、実行役とされるゴーン容疑者の側近2人に指示を出す際には
会長からの指示だ
とメールを送信していました。
ケリー容疑者はその対価をもらっていないといい、虚偽記載という認識だったのか、株主の目を誤魔化すためだけの意図だったのかは測りかねるところがありそうです。
ケリー容疑者が何らかの対価をもらっている証拠でも出てくれば悪事の認識があったと言えそうなので、明確に隠し報酬と言っていいのかどうかは、今後の検東京地検側の証拠の積み上げにもよるのでしょう。
特捜部はこの側近の執行役員らと司法取引を行ったため、こうしたメールなどの提供を受けたと見られています。
現物として証拠が出てきていることから、東京地検は思い切った逮捕に踏み切れたのでしょう。
ゴーン容疑者、ケリー容疑者ともに11月時点で容疑を否認していますが、逮捕を決断させた決定的な証拠を突き付けられたときにどのように証言をしていくのでしょうか。
報酬の虚偽記載以外の嫌疑について
image:GQ
ブラジル在住の姉に不正に資金供与されていたことが分かっています。
姉の名前はクロディーヌ(Claudine Bichara)(上写真)というそうです。
2001年にCEOに就任翌年、姉クロディーヌをアドバイザーとする業務契約を結びました。
この業務に対して年間10万ドル、約1120万円前後の日産の経費が支出されていました。
しかしクロディーヌはゴーン容疑者が子会社を通じて購入したブラジル・リオデジャネイロの高級マンションに住み管理を任されており、アドバイザー業務の実績は無いとみられています。
クロディーヌは、コンサルティング会社の経営に参加するなど優秀な方のようです。
日産リオのオフィスで昼食会に参加をするなどの活動実績はあるようですが、経営のコアな部分へのアドバイスまで行っていたかどうかは、周囲の人間に聴取すればすぐに分かりそうですね。
また、家族旅行の費用や、娘の大学への寄付金にも日産の金を流用していたことも分かっています。
日産関係者は、ゴーン容疑者は何から何まで会社の金を使っていたと証言しています。
この辺りの嫌疑については、実際日産がゴーン容疑者とどういう契約を結んでいるかどうかにもよります。
生活面のあらゆる支払いを日産がまかなうというような契約をしていたのなら、概ね問題は無いはずです。
しかし、そこはさすがに入念に容疑を固めて逮捕をしているはずなので、そうした契約が存在しないことぐらいは確認済みでしょう。
その程度の捜査をせずに逮捕など杜撰なことをすれば、日仏の国際問題化するのは目に見えていますから。
そうなれば単に公私混同が極まっていただけということになります。
今後、虚偽記載だけではなく特別背任容疑に問われるものと思われます。
ゴーン容疑者の報酬は法外なのか?
image:Forbs
ゴーン容疑者は株主の批判を避けるために、虚偽記載をしていたのではということは分かってきています。
確かに年間20億円をもらっている日本人の経営者はいません。
海外に目を向けると、年間20億円以上をもらっている経営者は多数います。
例えば欧州自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズのセルジオ・マルキオンネCEO(上写真)は約31億円の報酬を得ていました。
フォードやフォルクスワーゲンのトップも20億円以上を得ています。
この問題の本質はゴーン容疑者が報酬を隠したいと考えた「マインド」にあるのではないでしょうか。
ケリー容疑者などの側近からのアドバイスで指示を出したのかもしれませんが、最終的に判断を下したのは本人のはずです。
2010年以降の報酬額が突然落ちるわけなので、本人不在で決められるわけがありませんよね。
ゴーン容疑者が日産・三菱の会長として働くと同時に、フランスのルノーCEOでもありました。
つまり世界をまたに掛けたグローバル企業のトップという自負があったはずです。
その心には、以下のどちらのマインドが根付いていたと思いますか?
・俺はグローバル企業の会長だから当然、世界水準の給料をもらっていいはずだ
・俺は日本企業の会長だから日産では日本水準の給料をもらうべきだ
結果をみれば一目瞭然ですが、もらう報酬額自体を日本の他の経営者水準にあわせて下げるのではなく、世界のレベルまで上げたうえで、隠すことを選びました。
ゴーン容疑者の報酬額は自らで決定できるようになっていたそうなので、日本水準に抑えることもできたはずです。
しかしそうしなかったのは、日本人として働くのではなく、「フランスのルノーから日産を建て直してやってきたプロ経営者」としての自負があったに相違ないでしょう。
そうした意識が高く発言力もあるゴーン容疑者に対して、何も言えなかった日本人の役員の皆さんの気持ちも分からなくは無いような…。
いや、正しく記載をして非難されたら株主にきちんと説明をすべきだったのかもしれませんが、難しいところです。
まさにグローバル化の矛盾、難しい部分が露呈しているのかもしれませんね。
まとめ
逮捕容疑の有価証券報告書の虚偽記載の本質は、グローバル企業ゆえの矛盾をはらんでいます。
そこにルノーとフランス政府の思惑、ゴーン容疑者を「追放」した日産の思惑が絡み合って、複雑になってきています。
この「なぜ逮捕されたのか」については以下の記事で詳しく解説していますので、併せてお読みください。
ここまでお読みいただきありがとうございました
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